30.探しモノ⑩
◆
ーとある施設ー
大きな門が開き、二柱の神が現れる。
「しかし、愉快なモノが見れましたねぇ」
クククッと笑いながら【美神】が呟く。
「君は本当に性格が悪いね」
「私は美しいものを追い求めているだけですよ。コレが有れば、また一つ私の究極の美への追求が一歩進むのですからねぇ」
持ち帰ったユーイの手を、宝物でもしまうかの様に大事に箱の中に収める。
「そんなモノでいったい何をしようって言うんだい?」
「何を言い出すかと思えば!我等が参謀"知神"の"神器"を持ってすれば、私の考えなど簡単に見抜けるでしょう!」
「それ、分かっていってるよね?」
呆れた顔で"知神"が口を開く。
「僕の"神器"知識の泉は、この世の事象や格下の相手の思考や次に何をしようとしているか位の事は分かるけど、僕と同格かそれ以上の存在の事は分からないよ。つまり兄弟達の事は聞かなきゃ分からないってこと」
クククッと"美神"が笑う。
「そうでしたねぇ。アナタと同格となると、この世界では我々兄弟と四精霊位ではないですか!アナタは知識の神ですよ!私のように、もっと自分の行いに自信を持ってはどうですかねぇ?」
ニコニコと気味の悪い笑顔を作って語る"美神"。
「まぁ、私の実験に協力頂いているのです。アナタの知らない知識と、現象を起こして見せるとお約束しましょう!これは大いなる一歩なのですから!」
高らかに語る"美神"を横目に、ため息混じりに"知神"が言葉を発する。
「僕は、その為だけに協力してるんだから頼むよ。前回のように失敗されちゃ困るんだ。只でさえ君は"裁神"に目をつけられてるんだから、彼女の怒りに触れたら自分だけでなんとかしてよね」
そう言い残して、"知神"は自身の力で作り出した門に入りその場を去っていく。
「クククッ。私の大いなる目的の前には、全てが些事ですよ。誰にも邪魔はさせません。それが兄弟達であってもね」
一人残された"美神"は、希望に満ち溢れながら邪悪な笑みを浮かべる。
◆
やっとの思いで帰りついた。
帰りは【龍王】が増えて電車に乗った訳だが、予想通り初めて電車に乗った小学生ばりに興奮していた。
【斬魔】が横で落ち着かせて居なければと思うとゾッとした。傍目から見れば仲の良い姉妹に見えたかもしれない。
それ以外は、別段大きなトラブルは起きなかったのが救いだった。
これ以上、高頻度でトラブルが起きても困るのだが。
ひとまず雨に濡れて気分も悪かった為、シャワーでも浴びようと思いレディーファースト精神に乗っ取り詩道に先を進めた。
使い方が分からない言われたので、お湯の張り方や、シャワーの使い方を教えた。
【斬魔】から覗いたらわかってるわね?としっかり釘を刺されたが。
「湯浴みか!?妾も行くのじゃ!ざんちゃんも一緒に行くのじゃ!」
【龍王】に引っ張られ【斬魔】も一緒に向かっていった。【龍王】の体と服の汚れは、気付いたら無くなっていた。
【琥王】いわく、幼精の見た目や服は概念的な物で、すぐにキレイになるらしい。
便利なものだ。
今一緒に行ったのも、遊び感覚らしい。
つい先日までの普通の生活がここまで一変し、賑やかになることを誰が想像出来ただろうか。
【龍王】達を送り出し、【琥王】と二人になる。
『今日は色々有ったが、りゅうも戻ってきたし結果的には良い状態になったと思うぞ。すこし騒がしくなったがな』
「そうだな……でも、なんか不思議と嫌な気分じゃないんだ。懐かしいような気もするし」
今まで半信半疑だった、俺の記憶が無くなっているという話。俺の中で確証はないが、本当かもしれないと思い始めている。
しばらく無言になり、自分なりに色々考えていた。
その沈黙を破るように【琥王】が口を開く。
『なにか思い出したのか?』
【琥王】の言葉は、質問というより確認している様に聞こえた。
そして、その考えは正しいと思う。
俺が思い出したことは無い。と言えば、そのまま何も聞かずにいてくれるのだろう。
少しでも普通の生活を続けようと思えば、そう答えた方が良い気がした。今さら、何もかも元通りに成らない事はわかっているが。
「少しだけ……思い出したって言って良いのかは分からないけど……」
俺はそう答えた。
「たぶん、お前達とずっと前から笑って、戦って、一緒に居たんだなってそう思うんだ。実際、前みたいに夢見心地な感じで戦ったんじゃなくて、俺の意思で戦った。りゅうとの戦い方も元々知ってた様に体が動いた……というか、なにも考えずに自然と戦えたってのはそういう事だしな」
【琥王】に説明するというより、自分自身に言い聞かせる様に喋る。
「まだ、混乱はしてるけどな。俺が何でこんな事になってるのかとか、分からないことも多いし、この先どうしたら良いのかも分からない……」
『そうか。俺様はお前がしたいようにすれば良いと思うぞ。悩んだままこっちの世界に居るなら、俺様もりゅうも【黄泉】も一緒だ』
【琥王】の言葉を聞いて、少し気持ちが和らいだ気がする。
『なんだよ?何かおかしいか?』
【琥王】に言われて、自分が自然と笑っていたことに気付く。
「いや。りゅうにも、似たようなこと言われたなと思ってさ」
初めて会ったときから、面倒な事に巻き込まれた感覚しかなかったし、現実味もどこか欠けていた。
今度は、真剣な顔で【琥王】に語り掛ける。
「詩道の話をもう一度詳しく聞こうと思う。俺の意思で。どこまで理解できるか分からないけどな」
そこまで話して、詩道達が俺の部屋に帰ってくる。
「終わったわ」
濡れた髪を拭きながら現れた詩道に、一瞬目を奪われる。
少し記憶を取り戻したせいだろう。【琥王】達に感じる親近感と同じものだと思う。多分。
「ジロジロ見て気持ち悪いわね。何かあるの?」
遅れてバタバタと【龍王】と【斬魔】が現れる。
「お前の話が聞きたいんだ」
その俺の言葉を聞き一瞬驚いた顔をして、すぐに真面目な顔になる。
俺はこの後、大きな選択を迫られる。
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