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26.探しモノ⑥


「小童とは、随分なモノ言いですね。これでも僕はアポロ様より、この美しさを評価され不老の力を授けて頂いています。半世紀以上は生きておりますよ?」


『それでも、此処に居る誰よりも小童なのは違いあるまい』


 サラッと、とんでもない情報が流れた気がするが【龍王】も【琥王】と同じ幼精なら納得できるが、ユーイまでとなると自分の中の固定観念が崩れそうだ。


「えっと……【龍王】で良いんだよな?」


 幼女に向けて問いかける。


『そうじゃ!主様!久しぶりじゃのう!妾こそが、皆大好きりゅうちゃんじゃ!元気じゃったか!?』


 先程までのユーイと会話していた威圧感は消え、見た目通りの幼女に戻る。


『怪我しておるのに元気もなにも無いか!』


 ニシシッと小さく笑う姿からは、想像もつかない内包された力を感じる。


「助けに来てくれた……って事で良いんだよな?」


 あっけらかんとし過ぎていて、今の状況を忘れそうになる。


『う~ん……結果的には助けたことになるのじゃから……そういうことにしておくのじゃ!』


 引っ掛かる物言いだったが、今は結果が全てだ。


「状況は何となく察してると思うが、かなりピンチなんだ。お前の力を貸してくれ」


 【龍王】に懇願する。

 今の状況では、他に突破口もない。詩道達や【琥王】も心配だ。


『????異なことを言うのー?妾は主様と契約しておる!好きなときに妾の力を使うと良いのじゃ!』



 妾の名を呼べ。


 そう【龍王】が言った。

 俺は言い慣れない筈の名前を呼びながら、どこか懐かしさを感じていた。


「【龍王】!」


 目の前に居た少女は、光となって俺の左腰の辺りに集まる。


 そこには、鞘に収まった一本の刀が現れていた。


『うむ!主様と共に戦うのは随分と久しぶりなのじゃ!思う存分暴れてやろうかの!』


 戦闘前だと言うのに、場違いな楽しそうな声ではしゃぐ【龍王】。


 鞘に収まったモノをゆっくりと引き抜く。

 それは、刃渡りが一メートル無い位の日本刀そのものだった。


 もちろん剣道経験もない俺は、初めて握る筈の刀を構える。だが【琥王】の時と同様、体が自然と動く。


 切っ先をユーイに突きつける。


「おやおや。武器を持った瞬間随分と強気ですね」


 【龍王】が味方になり、悪くても五分こちらが優勢と見ても言い筈だが余裕の態度は変わらない。


『ふむ。とりあえず、アイツを黙らせる事からはじめるのじゃ』


 全身に今まで以上の力を感じる。体の負担も少しマシになった気もする。【龍王】の力が関係しているのだろう。


『距離を詰めるのじゃ!』


 【龍王】の言葉を聞き、意識を前方に集中し一歩踏み出す。

 頭の中で、パリッと乾いた音がなった。

 次の瞬間、目の前にユーイが()()()


「うわっ!」


 急な出来事に驚いてしまう。

 そのままユーイの横を通り抜け、先程より距離が開いてしまう。


『何をしておるのじゃ!そのまま、スレ違い様に切り捨ててやれば良かったモノを!』


 【龍王】が不満をあらわにする。


「いや、何がなんだか、、、」


 最初に【龍王】が現れた時のことを思い出す。瞬間移動の類いかとも考えたが、違う。動きが速すぎるのだ。


「まだ不馴れのようですね。隙は突かせて貰いますよ」


 逆にユーイが距離を詰めてくる。


 ユーイの剣を刀で受ける。

 鍔迫り合いの格好になる。


「どうします?"蒼炎の爪"のスピードが有れば、この場から逃げることが出来るかもしれませんよ?」


 たしかに。このまま【琥王】達と合流した方が良さそうだが……


『雑魚一匹に背を向けるなど、主様がするわけないじゃろう!なっ!主様!』


 やるしかないかもしれない。


 ユーイを弾き飛ばす。

 そのまま追撃する。剣と刀が交わる度に火花が飛ぶ。

 もともと力を纏った状態では、力負けはしていなかった。少しずつだが、一撃交わすごとにユーイの顔から余裕が消えていく。


 ユーイがバランスを崩した瞬間に蹴りを入れる。

 転ばないまでも、大きくバランスを崩したユーイに向かって刀を振り下ろす。

 避けきれないと悟ったのか、致命傷を避けるために左腕で防ぐ体制を取る。


 構わず刀を振り下ろす。


 左腕を切り落とした。その瞬間に自分の顔に生暖かい物がかかる。


 腕を押さえ、距離を取るユーイ。

 俺は起こった事を理解するのに時間がかかった。

 顔に手を当て、付着したものの正体を確認する。分かっていたが分かりたくなかった。


 手に付着した赤い液体が血であることを認識する。


「……なんで?」


 以前"軍師"の片腕が無くなっていたのは見た。

 その時は光のようなモノが溢れていたし、ユーイも神の仲間なのだから同じになると思っていた。


「随分狼狽えるじゃないですか。人の腕を切り落としておいて、理解に苦しみますね」


 ユーイが何か喋っているが、頭に入ってこない。

 俺が呆然としている間に、腕を服の布で縛り止血している。


『何を呆けておるのじゃ!』


 【龍王】の声でやっと我に帰る。


「いや……血が…光じゃなくて…」


 自分でも、何を言っているか分からない程に混乱している。


「僕は人間ですよ。腕を切り落とされれば血も出ます。アナタ達のような人外と同じにしないで頂きたい」


 にんげん?

 俺は今、人を殺そうとしていたのか?


「戦意喪失ですか?情けない。アナタが動かないなら、僕は好きにさせて貰いますよ」


 残った片手に剣を持ってユーイが迫る。


 俺は……どこかファンタジーの中に居ると思っていた。敵は神様で、仲間は幼精。ゲームや物語の中の出来事みたいに感じていたのかもしれない。


 片腕のまま迫るユーイは、撤退する気は無いようだ。このまま戦うなら、本当の殺し合いだ。


 俺に人が殺せるのか?

 そんな覚悟は……ない……


『そうか……それが主様の決断か』


 そう【龍王】が言うと、手に持った刀が光となって消え元の幼女の姿に戻る。


『妾たちは主様の意向に従うのじゃ。()()()より、その意思は揺るがないのじゃ』



 何も疑うこと無く、まっすぐな瞳で語る【龍王】をただ見ている事しか出来なかった。




読んで下さりありがとうございます!


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