24.探しモノ④
少し仕事が落ち着き、久しぶりの投稿です!
"名無し"ってどういう意味だ?
たしかに、この少年には名前なんて名乗ってないし、逆に俺の名前を知っていたら怖いんだが。
「あの……俺が言うのも何ですが人違いじゃ……」
「あぁ、そういえば記憶を無くしていたんでしたね。これは失礼しました」
深々とわざとらしく頭を下げる少年。
「神の寵愛"美神"アポロ様の使いで参りました。ユーイと申します。なに、覚える必要は有りませんよ」
"美神"という単語を聞き一気に身体が強ばる。
「貴方はここまで。ですから」
ユーイと名乗った少年の敵意が、一気に殺意に変わる。
反射的に構えを取る。
【琥王】を手に持とうとして、今居ない事を思い出す。
とりあえず、"残滓"と戦っていた時の事を思い出しながら素手で構えを取る。
「なかなか様になっていますよ。流石に"軍神"様を退けただけは有りますね」
大きく手を広げ声をかけてくる。
一々動作が大袈裟だと思う。
「随分おしゃべりだな。神様ってのは全員おしゃべりなのか?」
少しでも相手の情報を仕入れ、出来れば【琥王】達と合流するまでの時間も稼げたら良いけど……
「皆様がお話好きという訳ではないですよ。あと、助けを待っているなら無駄ですよ。あちらも僕がお相手していますから」
気持ち悪いくらいに落ち着いた声で喋るユーイ。
考えもバレている。
「他に仲間が居るのか?」
【琥王】達の足止めまでされているようだ。
「良く聞いてくださいね。記憶が無くなると、頭まで悪くなるのでしょうか?」
随分とトゲがある言い方をするヤツだな。敵同士だし当然かもしれないが、感情から憎しみのようなものも見え隠れする。
「僕が他の方々の相手をさせて頂いています」
頭の中が混乱してくる。今、目の前に居る筈のコイツがどうやって相手を……
「こういう事ですよ」
正面の少年は口を開いていない。
当然だ。声は後ろから聞こえた。
後ろを振り向こうとした瞬間に顔に痛みが走り、少しの浮遊感の後に地面に倒れる。目線の先に拳を突き出したユーイの姿を確認して、ようやく自分が殴られたのだということに気付く。
「理解できたでしょうか?」
双子……って感じじゃないよな。
「これは、アポロ様より授かった"神器"アイギスの力ですよ」
"神器"ってのは良く分からないが、一つ分かったのは攻撃はそこまで重くない。
"軍神"の時ような、絶望的な力の差は感じなかった。
幸いにも、【琥王】と【黄泉】の力も感じる。
力を訓練通り纏っていれば、ダメージも大きくない。
倒れた状態から立ち上がり警戒する。問題は、どちらの攻撃に注意するべきかだ。
【琥王】がいたら、見えていない方の動きを察知して教えてくれるのだろうが今は居ない。
二人から距離を取って、視界に収まる位置を取る。
「分かってはいましたけど、やはり大したダメージは追わせられませんか」
少しも焦った様子の見られないユーイ。
「なぜアナタ達のようなモノに固執なさるのか、僕には理解できません。村の実験を行った際も、理由は聞かせて頂けなかったですし」
良く分からない事をぼやいているが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
二人の内、一人の注意が俺から逸れたのを確認して距離を取りながらもう一人の後ろに回り込む。
漫画か何かで複数を相手にするときは、同時に相手にするのではなく一人づつ対応するってのを見た気がする。
走り込んだ先で、後から出てきたユーイに対峙する。その後ろにもう一人のユーイ。
丁度一直線に並ぶように立つ。
最奥の敵への注意は残したまま、目の前の敵に集中する。
自分の中の力を更に多く引き出す。
身体が軋むのを感じるが、構わず突っ込む。相手は大した構えも取っていない。
御返しとばかりに、力を込めて顔面に向けて殴りかかる。
不快な顔をしながら、避けようとするユーイ。その頬に拳がカスるが、決定打にはならない。
そのまま、踏み込んだ足を軸に回転し回し蹴りを胴体に叩き込む。
体制が崩れていたユーイは避けきれず、攻撃が当たる。
そのまま、力を込めて蹴り飛ばす。
"残滓"を吹き飛ばす程度には威力があった筈の攻撃だ、多少は効いていて欲しいのだが……
地面を転がりながら、
パリンッ
と、音を立ててユーイが砕ける。
「なッ……」
何が起こったか分からず、一瞬動きが止まってしまう。
その奥で、今まで余裕の表情を浮かべていたユーイが険しい表情でこちらを睨み付けていた。
「アポロ様でさえ、傷つけられた事の無い僕の顔を殴ろうとしたんですか!?その上、傷まで付けるとは……」
言葉に今までの飄々とした感じは無く、殺意を剥き出しにしていた。
「少し遊び過ぎましたね。アポロ様の寵愛を受けるなど、身に余る事だとじっくり教えようと思っていたんですが仕方ないですね」
急に、ユーイの力が強くなっていくのを感じる。
また同じように攻撃されるかもしれない事を考え、別方向からの攻撃を警戒する。
「アナタには僕自身の手で、自分の行いを後悔できるようにして差し上げましょう」
その言葉が、嘘や虚勢の類いでは無いことが沸き上がる力から感じ取れる。
全身に緊張が走る。
纏う力はそれと比例して、強く、身体はまた大きく悲鳴を上げる。
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