23.探しモノ③
「い…いきなり、何を言い出すんだよ?俺は俺だ!」
いつもの様に慌てだす。
【斬魔】を構えたまま警戒は緩めない。
『しかし、良く真似てるな。お前がりゅうの真名を言わなきゃ俺様も気づけなかったぞ』
喋り方は穏やかだが、【琥王】が敵意を抑えること無く言葉を放つ。相手を威圧するには十分過ぎる気配を放っている。
「まだ言い訳が必要かしら?」
一歩踏み込み、相手の首に鎌をかける。不意な動きにも対応できるように相手に全神経を向ける。
「意外と簡単にバレましたね。もう少し時間が稼げると思ったのですが」
アイツの声が、別人の口調で声をだす。
『只でさえ不快な声で、不快なこと言わないで』
【斬魔】も普段より不快指数が高いようだ。
「そうですね。では、自己紹介から……」
目の前から姿が消える。何か有れば直ぐに動けるように身構えていた、にも関わらず見失った。
「始めましょうか」
背後で声が聞こえ、振り向く。
少し離れた位置に、見知らぬ少年が立っていた。
『これは……神器か。アイツに姿を変えてた所を見ると、神鏡アイギスだな』
『"美神"の差し金』
「流石"白滅の牙"ですね。お察しの通り、神の寵愛"美神"アポロ様の命で参りました。ユーイと申します」
ユーイと名乗った少年は、腰を折り曲げ深々と頭を下げる。
「こっちにだけ仕掛けてきた……なんて事は無いわよね」
嫌な予感がする。
「勿論。"名無し"の方にも僕自身が向かっております」
なるほど。
「つまり、こっちの貴方は虚像ってことね」
素直にこちらの足止めを白状するということは、かなり不味いかもしれない。
「お察しの通り、簡単には逃がしませんよ。一つ朗報が有るとすれば、向こうの僕は殆どアイギスの力は使えません」
【斬魔】を握り直し、体制を整える。
「さっさと済ませて、向こうに行きましょ。【琥王】もいない状態じゃ流石に不味いわ」
"美神"の事だ、何か裏があるに違いない。それも、とびきり性格の悪い何かが。
「そうさせないために、僕が居ることをお忘れ無く」
口を開くと同時に、ユーイが五人に増える。
『厄介』
短く、簡潔に感想を述べる【斬魔】。
『俺様も今はアイツの方に力を回してる。牽制くらいは出来るが期待するなよ!』
【琥王】が五人の内、一体に飛びかかる。
「四対一か……まぁ妥当かしら」
全身に力を纏い、その力を【斬魔】に集中させる。
「《斬夢》」
敵の一体に向け攻撃を放つ。
斬撃はアッサリと敵を捉え、両断する。
切られた敵は、パリンと音をたて消える。
そのまま敵と距離を詰め、続けざまに二体切り裂く。
「手応えが無さすぎるわね」
【斬魔】を振り回し、肩に構える。
「思っていたより、御強いですね。少し見くびっていたかもしれません」
ユーイはわざとらしく手を叩き拍手する。
「私を嘗めすぎよ。"六神"相手ならまだしも、使いっぱにヤられる訳にはいかないもの」
『雑魚に構う時間はない』
【斬魔】が言い終わると同時に、残りの敵の首を跳ねる。
【琥王】の方も丁度、喉元に噛みつき止めを刺していた。足止めどころか、しっかり始末するあたり流石だ。
『…おかしいな』
敵を全滅させた筈なのに【琥王】の表情は浮かない。
『最初に感じた気配にしては、弱すぎる』
それに。と【琥王】が続ける。
『神器の気配に紛れて分かりにくいが、多分アイツ人間だぞ』
「ご名答です。私は、貴方たちのような人外でもなければ神でもない。か弱い一人の人間です」
背後からの声に振り向くと、先程までと変わらぬ様子でユーイが立っていた。
「言った筈ですよ。時間稼ぎですから、私が貴方たちに勝つ必要はないのです。もっとも、背を向けて"名無し"の方に向かうなら後ろから殺すこと位は出来ますが」
ユーイはまた五人に増えて、こちらと向かい合う。
『消耗戦だとこっちが不利だな。俺様達が負けることはないだろうが、アイツが殺されたらおしまいだ』
【琥王】が、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「残滓と戦えるよう訓練はしていたわ。簡単には死なない……筈」
『弱音を吐いてもしょうがない。目の前に集中』
【斬魔】の言う通り、今はアイツを信じるしかない。
こんな所で、死ぬヤツじゃない。ユーイと名乗る敵は人間だと自分で言ってるし、【琥王】の感覚もその言葉が嘘ではないと裏付けている。
でも……何か引っ掛かる気がする。
何かは分からないけど、ずっと嫌な予感がしてる。
それを考えるなかで、一つの疑問が浮かんできた。
「アイツ人間と戦ったことある?」
【琥王】の方を見る。
『……無いな。正確に言うなら、殺したことは無い』
当然と言えば当然かもしれない。私の知る限り、アイツは向こうでも殆ど人間と敵対したことは無かった。
これから起こるのは、殺し合いだ。
アイツが……あのマヌケだけど優しいアイツが人を殺せるだろうか?
いや、殺させたくない。
「是が非でも、突破する」
一秒でも早くアイツの元にたどり着くために、ユーイに向かって刃を向ける。
◆
「あの……ちょっと良いですか?」
正面から歩いてきた少年に声を掛ける。
少年は立ち止まり、こちらに目を向けた。目に光が無いというか、生きた人間に話しかけてる気がしない。直感でしかないが、コイツは【龍王】じゃないと感じる。
「なんでしょうか?」
少年が首をかしげながら反応する。
「いや、人違いだったみたいです!すいません!」
自分の力を引き出すため訓練していたお陰だが、人の気配や感情を少しだが感じ取れるようになっていた。
正面の少年から感じるのは、悲しみと僅かな敵意だ。
急に話し掛けたせいで敵意を向けられるのはしょうがないが、不思議な気配を持っている少年だと思った。
自分だけでは判断に困るので、一先ず【琥王】達に相談しようと思う。
「本当にすいませんでした!知り合いを待たせてるので、これで失礼します!」
見るからに年下ではあるが、相手が礼儀正しい雰囲気を持っているせいか自然とこちらも敬語になってしまう。
とにかく、一度戻ろう。
相手に背中を向けようとしたときに、呼び止められる。
「あなたは人違いかもしれませんが、僕にとっては貴方が目的の人物なんですよ。"名無し"」
少年が俺に向けて話し掛けたのは分かったが、内容は理解できなかった。
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