1.プロローグ
今回、初投稿となります。
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次回更新9月15日予定です。
夢を見た。
それは、楽しかったような、悲しかったような、嬉しかったような、朝起きると内容なんて覚えていない。
ただ、胸にぽっかり穴が開いたような喪失感が残る、そんな夢。
誰でも、一度は経験したことがあるような、そんな普通の夢。
そう、普通。
俺が世界で一番好きな言葉。特別の何がいいのか、全くもってわからない。普通の容姿、普通の成績、普通の家庭で育った。ビバ普通!
それが俺、天草克也16才。高校生である。
そんな俺は、何時もと変わらない通学路を歩いている。
「んで、さっきから何物思いに耽ってんの?」
この、俺の横で話しかけているのは、普通の人生を愛する俺の唯一の汚点。普通じゃない友人。三浦陽介。
物心付いたときから一緒にいる、所謂腐れ縁ってヤツだ。
容姿端麗、成績優秀、おまけに運動神経まで良いときてやがる。まさに、普通を愛する俺とは正反対の友人。
「はは~ん。当ててやろうか?来週の小テストの事だろ!」
ふん。お前に言われるまで、テストの事を忘れていた俺に隙はない!
「まぁ。言っておいてなんだが、どうせ忘れてただろ」
流石、腐れ縁といったところか。
陽介の言葉で、若干憂鬱になりながら歩いて行く。
何時もと変わらない通学路。何時もと変わらない1日。そんな変わらない普通の日常だからこそ、そんな日々を愛していた。
◆
特別何かがあるわけでもない、高校生活。1日の終わりを告げる聞きなれたチャイムの音で、クラスメイト達は散っていく。
それぞれ、部活、勉強、遊び。やることは多いだろう。帰宅部の俺は帰るのが使命なわけだが。陽介は色々な運動部に顔を出しているようで、1つの部に所属している訳ではない。本人は遊びのつもりだろうが、どの部でもそれなりに動けるようで、練習相手として重宝されているらしい。
やだね、特別何でも出来るってのは。
なので、帰宅時は必然的に1人になることが多い。
まぁ、いつものことだ。そんな代わり映えのない帰路についている。普段と違う事といえば、人とすれ違うことが珍しい住宅街の道に、目の前から見慣れない女の子が歩いてきた事くらいか。
中学生?
初めて見た筈なのに、何故か懐かしく感じている、回りの光を吸い込んでいるんじゃないかと思える程の、真っ黒な髪。美人というより、可愛いという表現が似合う様な幼さを感じる。
普段、人とすれ違うことがない道で、黒髪の女の子に会った。なんて聞いたら、オカルトの類いに聞こえるかもしれないが、こんな日も高いうちから、オカルト現象に遭遇したらたまったもんじゃない。
それに、そんなオカルト現象とは無縁の生活を送っている。なんせ普通の高校生だからな!
そんな、下らないことを1人で考えながらすれ違う。
『・い・・せ』
ッツ
急に、今まで味わったことのないような鈍痛が頭に響き、声が聞こえた気がした。
近くには、今すれ違ったばかりの少女しか居ない筈なのに、聞こえた声は男のような気がする。
頭痛がどんどん酷くなり、このまま意識を手放してしまった方が、楽になるんじゃないかと思い始めたとき。急に頭痛が消えた。
辺りを見渡すと、すれ違ったばかりの少女は居なくなっていた。まるで、夢だったのかと思えるくらい、普通の俺には現実味がない出来事だった。
俺はただ、何が起こったのか理解も出来ず、呆然と立ち尽くしていた。
あの日、あの少女に会うまでは、俺は【普通の世界】に居続けられた。忘れたままで居られた。それが、俺にとって幸か不幸かは別の話だが。
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