18.変化した日常④
◆
自室の机に向かい、明日の小テストに備える。
人生に置いて、補習なんて受けないに越したことはないのだから!
「ってことで、どうでしょうか?」
横にいる詩道先生にお伺いを立てる。
「ちゃんと授業聞いてるの?」
この先生には、言葉の暴力について勉強していただきたい。
あらかじめ、テスト範囲は陽介にメールで聞いておいたが詩道にその事を伝えると、良い顔はしそうに無かったので伏せておく事にした。
「とりあえず、このマークつけた所を死ぬ気で覚えなさい。それで大丈夫よ」
理解するよりも、一夜漬けに特化した俺の脳みそには有り難い。
「ありがとな!後は頑張って覚えるよ」
どんな形で有ろうとも、俺のために時間を割いてくれたのだから感謝の気持ちで一杯だった。
もう休むわ。と自室に戻ろうとしている詩道を呼び止める。
「あの部屋何も無かっただろ?気付くの遅くなってすまん。コレ使ってくれ」
詩道に簡易的なマットレスと掛け布団を渡す。気付かなかったとはいえ、女の子を一日床で寝させていたのは流石に気分が悪かった。
「……野宿に比べたら快適だったわ。折角だし使わせてもらうけど」
俺から一式を受けとり、自室に戻っていく。
俺は詩道に教えてもらった箇所を頭に叩き込む作業に戻る。
不意に【琥王】が窓の方を見る。
『俺様はちょっと散歩してくるぞ。お前は、まぁ頑張ってろ』
開けろと言わんばかりに窓を引っ掻く。本当に猫みたいだなと思いながら窓を開けると、ヒョイっと飛び出した。
後ろ姿に、窓開けとくからなぁと声を掛ける。
俺の一夜漬けが終わり、布団に潜り込むまでに【琥王】は帰ってこなかった。
話し声で目が覚める。
部屋の外からの様だった。
扉を開けると【琥王】と詩道、【斬魔】の三人?が顔を突き合わせていた。
「朝から何を話てんだ?それに【琥王】も朝帰りは感心しないぞ」
『あー。まぁ話の続きは夜にでもしよう。今日も学校行くんだろ?』
何か話をはぐらかされた気がする。朝帰りの冗談をスルーされて、居たたまれなくなる。
「ちゃんと勉強は頭に入ってるの?」
詩道の言葉で現実に帰ってくる。
グッと親指を立てて意思表示する。何度も一夜漬けでピンチを凌いできた俺に隙はないのだ。
いつも通りの一日の終わりを告げるチャイムを、机に突っ伏して聞く。
「……疲れた」
誰に向けた訳でもない言葉が自然と口から漏れる。テストは……まぁ大丈夫だと思う。思いたい。
朝から詩道と陽介のいがみ合いに板挟みされたのが、疲れの大きな要因だろう。アイツら、いつからこんな犬猿の仲みたいになったんだ?
二人に聞いても、別に。と答えが帰ってくる。俺の関係ないことで、ストレスを与えるのは止めて貰いたい。
……俺、関係ないよな?
そんな疲れを引きずり帰宅する。
本来なら、また影人間との戦闘訓練が開催される筈だったのだが、話も有るらしく俺の部屋に全員集合しているという状況だ。
『とりあえず良くはなってるが、力の使い方がまだまだだ』
早速【琥王】からダメだしを貰う。
『暫くはどんな状態でも力を纏うイメージをしてろ。今までの戦闘では、俺様の力と【黄泉】の力を使ってたが自分自身の力をまるで使ってない。先ずは、その力を感じれるようになれ』
賭けでもあるがな。と【琥王】が少し複雑そうに呟く。
「朝の続きだけど、何とか【龍王】を探せないかしら?」
『力は多い方が良い』
詩道と【斬魔】が【琥王】に話を振る。
俺はその話を聞きながら、目を閉じ自分の中の力を感じることに集中する。
【琥王】と【黄泉】の力は明確に感じるが、自分自身の力と言われても良く分からない。
そんな俺を置き去りにして話は進んでいく。
『近くに居る感じはするが、無理矢理連れてくるのは分かってると思うが無理だ。まぁ、そのうち帰ってくるだろ!』
「…そうね」
『……流れに身を任せるしかない』
なんか不穏な空気が漂ってないか?
「その【龍王】ってのは、そんなに大変なヤツなのか?」
『自由奔放という言葉が意思を持ったら……きっとああなる』
普段、辛辣な【斬魔】がここまで言うのだからよっぽどなんだろう。
というか、適当な感じの【琥王】に未だにマトモに話もしてない【黄泉】、どうやら余程の問題児らしい【龍王】。
「あれ?俺の仲間ってヤバイ奴しかいない?」
急に不安になってきた。
「今、気付いたの?」
頭を抱えたくなる。
「……それを纏めてたのがすごいのよ」
詩道が何かをボソッと呟く。良く聞こえなかったが。
「聞いてる限りだと、こっちで何か出来ることはないんだろ?じゃあ、待ってるしか無いんじゃないのか?」
連れてくるのも無理、言って聞かせるのも無理なら待つしかないだろう。
『マヌケ過ぎて腹立たしい』
え!?俺何か変な事言いましたか!?
「だって、どうしようも無いんだろ?なら焦ってもしょうがない」
俺は何も間違ってない。
『あー、お前にはまだ伝えてなかったな』
【琥王】の口から出た言葉は、俺の考えを180度変化させるのに十分だった。
『【黄泉】から連絡があった。"軍神"が門から出たらしい』
俺が間違っていた。早く何とかしないと。
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