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16.変化した日常②


 本当に何事もなく、一日の終わりを告げるチャイムが鳴る。

 ようやく解放されたクラスメイト達が賑わい出した時、担任が教室にやってきた。


「知ってると思うが、明日の小テスト赤点だと補習だからちゃんと勉強しとけよー」


 クラスメイト達は口々に不満を漏らす。


 ショウ……てすと……


「絶望とは正にこの事です!みたいな顔してるぞ」


 俺の顔を覗き込んできた陽介が心配そうに声を掛ける。


 すっかり忘れていた。

 というか、最近の出来事でマトモに学校に行っていなかったのだから思い出す機会も無かった。


「テスト勉強手伝ってやろうか?」


 ガシッと陽介の手を持ち固い握手を交わす。やはり持つべきは出来る友達だな。俺が陽介への感謝の気持ちを全身で表していると、後ろから肩を捕まれる。

 振り返ると、そこに居たのは少し不機嫌そうな顔をした詩道だった。


「アナタは他にすることがあるわ。違う?」


 いや。言いたいことは分かるが普通の学生にとっては、今の状態も一大事なんだが……

 まぁまぁ。と陽介が詩道と俺の間に割って入る。


「詩道さんは、テスト大丈夫なの?転校してきたばかりでしょ?」


「問題ないわ」


 少しピリついた空気を感じる。


「そっか!何をするのか分からないけど、コイツも困ってるんだし無理矢理って良くないと思うよ」


 陽介の言葉から少しトゲを感じる。普段人当たりが良いのに珍しい。


「無理矢理じゃないわ」


「そうかな?詩道さんより俺の方がコイツとは付き合いが長いけど、困ってるように見えるよ?」


 間に挟まれ変な汗をかきだす。


「じゃあ、私が勉強を教えるわ。それなら文句無いわよね」


 二人の視線が俺を向く。というかクラス全員の視線が俺に集まる。普段と様子が違う陽介と、まともに会話をしなかった詩道が言い合いに近い行為をしているのだから無理もない。


「二人とも落ち着けよ…」


 重苦しい空気の中、俺が口を開くしかなさそうだ。


「スマン陽介!テストの事を忘れて、詩道と先に約束してたんだ。勉強は詩道に教えて貰うよ。ありがとな」


 詩道の説得より、陽介に謝る方が手っ取り早いと考え口に出す。

 お前がそれで良いならかまわない。と陽介が引いてくれる。


「いくわよ」


 俺の心労など知らずに、詩道が教室から出ていく。

 スマン!と、再度顔の前で両手を合わせ陽介に詩道を追いかける。

 去り際の陽介の顔は、俺でも見たことが無いような複雑な表情を浮かべていた。



「なんであんな風に、突っかかるような言い方したんだよ」


 歩きながら詩道に物申す。


「優先事項を勘違いしてるからよ。それに、アナタが最初からハッキリ言ってれば面倒にならなかった」


 依然として機嫌が悪い。そこまで怒らなくてもと思うが、口に出しても良い結果にならないのは俺でも分かったので止めておく。


「忘れたわけじゃないけどさ……力を取り戻すんだろ?でも、明確に何をするかまでは聞いて無いし」


 後で説明する。短く詩道が答え無言で歩き続ける。


「その後ちゃんと勉強も教えてくれよ。陽介の誘い断ったのに、補習になったら洒落にならん」


 重い空気のままたどり着いたのは、"軍神"と戦った廃ビルが建っていた場所だった。立ち入り禁止の警告を無視して中に入っていく。少し躊躇したが、今さらかとも思う。


「ここなら人も来ないわ。【斬魔】お願い」


 詩道が声を掛けると同時に、フワッと風を感じる。


「結界を張った。簡単だけど、今はこれで十分ね」


 いつのまにか詩道の横には昨日見た幼女が立っていた。


『途中で切り刻んでやろうと何度思ったか』


 この辛辣な感じも慣れてきた。

 詩道が黒いガラス玉の様なモノを取り出す。多分"軍神"と戦う前に見たのと同じモノだと思う。


「これには《残滓(ざんし)》が入ってるわ。説明しても?」


 詩道が俺の横に目を向ける。

 いつの間にか現れていた、小虎状態の【琥王】が無言で腕組みしている。四足歩行の癖に器用なものだと思う。肯定と取ったのか、詩道が続ける。


「《残滓》っていうのは、神の軍勢が主に雑兵として使ってるモノ。コレはそれを訓練用に薄めて封じ込めた道具ね」


 詩道が持っている黒い玉を見る。

 どうやら、俺が廃ビルで最初に戦ったのがソレだったらしい。何でも動きや強さなど、ある程度調整が出来る様だ。こんなモノで訓練してるヤツってのは何者なんだという疑問については、今は重要じゃないと一蹴された。


「これは元々(ヤツラ)の力を利用したモノ。だから"軍神"にはこの気配を感知された」


 なるほどな。ここまで聞いて何となく分かっていたが、分かりたくない疑問について確認する。


「それで俺にどうしろと?」


「戦って貰う」


「ナニと?」


「《残滓》と」


「俺が?」


「アナタが」


『別に私が相手でも良い。そろそろ我慢の限界』


 【斬魔】のイライラが溢れだしていた。

 選択の余地は無い。ソレでお願いしますと黒い玉を指差した。

 露骨に嫌そうな顔をする【斬魔】とは、目を合わさない事にする。


『先ずは俺様を使わず、戦ってみな』


 【琥王】が信じられないことを言う。あの得体の知れないモノと素手で戦えと?

 まぁやってみろと促される。


「はじめるわ」


 詩道が黒い玉を地面になげ叩き割る。

 黒い靄が一瞬大きく広がり一点に集まる。次の瞬間には、見たことのある黒い人形の何かがソコに立っていた。


読んでいただき、ありがとうございます!


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