13.課題と違和感
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「スーーッはぁーーーー」
深いため息を吐く。
一通り詩道の話を聞いたので、自分なりにまとめてみた。
詩道は、誰かに頼まれて俺の記憶を思い出させる為に襲ってきた。その一環で、廃ビルに誘きだそうとしたが何故か"軍神"が現れた。軍神の現れた背景には、"六神"が関係してるのは間違いないようだ。
俺が直接聞いたことには、出来る限り答えてくれるらしく。
【黄泉】ってのも俺の力?らしいが、この場にはいないし、今のところ直接関わる気は無いらしい。それ以上は聞けなかった。"軍神"も暫くは動けないようで、神の軍勢とやらも当分は動きをみせないだろう。
「って感じの認識なんだが大丈夫か?」
「概ね問題ないわね」
俺の問いに詩道が答える。
「まぁ、まだ聞きたい事は多いんだけど。"軍神"が【琥王】のことを"白滅の"って言ってたけどアレはなんなんだ?」
『あれは、真名だな。お前は気にせず俺様を琥王と呼べば良い』
「ふーん。じゃあ、【斬魔】にも有るのか?」
『ない』
短く【斬魔】が答える。少し空気がピリつくのを感じた。俺に対しては大体こんなものかと思ったが、深く追求するのは止めておく事にした。
『俺様達は、簡単に言うと幼い精霊。《幼精》って所だな。"名前持ち(ネームド)"は結構珍しいんだぞ?』
少し得意気に【琥王】が喋る。
「じゃあ、お前も成長したら精霊になるのか?」
『いや、アレは別次元の存在だな。詳しく説明しても良いが、どうせ理解できないだろ?』
もっともだった。
「てか、お前が幼精っていわれてもなぁ…」
俺のイメージの精霊は、羽が生えてて飛んでる、カワイイ小人のイメージだったんだが。
『なにか、言いたいことが有るなら言えよ』
俺の考えが伝わったのか、不機嫌そうな【琥王】は一先ず置いておこう。
「あ。今さらだけど俺、今回どのくらい寝てた……?」
少し聞くのが怖かったが、
『大体2日位だな』
急いで近くの携帯に目を落とす。また、洋介から連絡が……きてなかった。不思議に思ったが、日付を確認して自己解決する。今は日曜日だった。
それと同時に、金曜は無断欠席したことを理解する。
ちゃんと連絡しといってやったぞ。っと【琥王】が、また自慢げな顔をして俺をみる。それにしても、コロコロ表情が変わって面白い奴だなと思う。
陽介宛に一件だけ連絡が送られていた。
"疲労が酷いから、やすませる"
「これ、おかしいだろ…」
これじゃ、俺が送ったんじゃなくて、別人が送ったのモロバレじゃないかと、頭を抱える。
そうか?と、自称"幼精"の【琥王】は、首を傾げる。
明日、どうやって言い訳するか考えておこうと、現実の問題に向き合うことにした。
「他に、聞きたいことが有ったら言いなさい。私達の目的はアナタが記憶を取り戻すことだから、【琥王】が許すなら何でも答えるわよ」
『俺様も、お前が望んで知るなら止めねぇよ』
「最後に1つ。これからどうなって、俺はどうしたら良いんだ?」
何事もなく、普通の生活に戻れるなら、それが俺は一番良い。しかし、どう考えてもこれで終わらないのは、俺にもわかる。
それに、記憶と関係があるかは分からないが、詩道が傷付くのも、悲しむのも見たくないと強く心の中に刻み込まれている。記憶との関係性の確証が無いので、今は俺の胸の中だけにしまっておく。
「私の意見なら、少なくとも戦うための力は取り戻すべき。あなたの力は全て」
『これについては、俺様も同意だな。今回は運も良かった。"軍神"もそうだが、お前がここで生きているってのが知られた以上、遅かれ早かれ"六神"は動き出す。その前に、こっちも出来る準備はしておくべきだろうな』
詩道と【琥王】の意見が珍しく一致する。
つまり、それほど重要な優先事項ってことだ。
「すまんが、具体的に頼む」
「先ずは、力の制御ね。制御が出来ていないから、体に負担がかかってる。後は、【龍王】を探しましょう」
「りゅうおう?」
初めて聞く単語だ。
『"軍神"が"蒼炎の爪"と言っていたのが、【龍王】』
【斬魔】が答える。
『ちなみに、俺様にもりゅうの居場所は分からないからな』
【琥王】のフランクな呼び方に引っ掛かったが、今は置いておこう。
「今ので最後なら、今日のところは休みましょう。私もまだ万全には程遠いし、あなたも休んだ方がいい」
詩道の提案には賛成だった。
まだ分からないことも多いが、今の状況で詳しく聞いても混乱するだけだし、とりあえずやれることをやっていこうと思う。
詩道が俺の部屋を出ていく。
また、明日な。と何の気なしに声を掛ける。
一瞬立ち止まる。
えぇ。と短く答える声には、普段より少し柔らかさを感じた。
バタン
扉が閉まり、横になる。目を閉じ、最近の一連の不思議体験に考えを巡らせる。
バタン
俺が無くしているかどうかも分からない記憶を取り戻すことで、詩道の助けになるならそれも良いかと思って……
…
……
………ばたん?
一回目は俺の部屋の扉を閉める音だ。じゃあ二回目は?玄関の音にしては近い。
嫌な予感がして、痛む体を起こし部屋を出る。
俺の部屋は、二階建て一軒家の階段を上ってすぐだ。
他に何部屋か有るが、どう考えても正面の部屋から物音と話し声がする。
念の為ノックする。
どうぞ。と聞こえる筈のない返事がかえってくる。
恐る恐る扉を開けると、想像通りソコには詩道が居た。
「なに?聞きたいことが有るのは分かるけど、続きは明日にしましょうって…」
「なんでいるんだ?」
詩道は、何言ってるんだ?とでも言いたげな表情で俺をみる。
「拠点にしてたビルは、"軍神"に壊された。他に当てもないし、この先の目的も合致した。同じ拠点に居た方が良いに決まってる。部屋はもちろん別にするけど」
『同じ部屋にしろなんて言ったらコロス』
詩道が言ってる事を理解するのに数秒固まり、【斬魔】の罵倒を聞いて我にかえる。
「いやいやいやいや!」
やっとの想いで声を絞り出す。
「私たちが一緒だと、何か問題でも?」
「いや……問題というか…」
『歯切れが悪い』
「この拠点にあなた以外、誰か住んでるの?」
ダメだ、こいつに常識を求めた俺が悪かった。
「俺の家だぞ?俺一人に決まってるだろ」
「そう。じゃあ、問題はないわね」
早く休みなさい。といって、扉を閉められる。
何か、釈然としないまま俺は自室に戻り、布団に潜り込む。
【琥王】にも、とりあえずゆっくり休め。と促され、静かに眠ることにした。
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