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12.記憶の欠片

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「えっと……」


 間抜けな声を絞り出すのが、精一杯だった。

 起きた瞬間に、こんなに注目を集めたのは初めてだから無理もない。自分に言い訳をしながら、状況を改めて確認する。


 俺を見ているのは、小さな虎。これは知ってる。

 詩道。なんで俺の部屋に居るのか、分からない。とりあえず、無事だったのは良かった。

 知らない幼女。誰この娘。


 幼女に目をやる。

 黒色のフリルが付いた、可愛らしいワンピースを着ている。見た目から、小学校中学年くらいか?正確には分からないが。


『ジロジロ見ないで。目付きが変質者のソレでしかない』


 声と辛辣さで、思い当たる節があった。


「あぁー。【斬魔】……だっけか?」


 フンッとそっぽを向く幼女。肯定と受け取っておこう。


「【斬魔】。今回は、私の失態だったわ。結果として助けられたのは事実だから、落ち着いて。」


 優しい声で、【斬魔】に語り掛ける詩道。こんな優しい声も出せるんだなっと、目を向ける。


「まぁ、目付きに付いては肯定するけど」


 起きたばかりで、間抜けな目付きをしてるかもしれないが、そこまで言わなくてもと少しへこむ。


『とりあえず、急で悪いが俺様達も確認したいことがある。お前も聞きたいことがあるだろうが、一先ず聞いてくれ』


 【琥王】の声は、落ち着いているが真剣さが伝わってくる。子猫サイズで、あまり迫力は無いが。


「私の名前が分かる?あなたの名前も」


 詩道が【斬魔】に語り掛けた声とはうってかわって、少しピリついた声で俺に問う、


「名前って……詩道だろ?下の名前は楓だったっけ。俺は天草克也だけど…」


 テレビとかでこんな展開、見たこと有るなと考える。倒れた人間には、聞くお約束でもあるのだろうか。


 俺以外の三人は目を合わせ、無言で理解したような雰囲気を出す。この仲間はずれな感覚、前にもあったな。


『じゃあ、質問を変えようか。どこまで()()()()、どこまで()()()()()?』


 【琥王】が俺に問う。

 あの時、倒れた詩道を見て俺は、自分自身を見ている様な不思議な感覚になっていた。まるで、自分が自分ではないような感覚だったが。


 "軍神"と闘い、普通では考えられないような動きをしていた。途中で出てきた【黄泉】って奴にも既視感があった気がする。大きな門の中に"軍神"が引き込まれて、最後に詩道に何か喋り掛けてた気がするが、それ以上は覚えていなかった。


 何かを思い出したかと言われても、思い当たる事は何もなかった。


「サリア」


 詩道が小さな声で、言葉を放つ。

 さりあって何の……


 ズキッ


 不意の頭痛に顔を歪める。

 倒れた詩道を見たときのように、頭の中に映像が浮かぶ。緑の髪色をした、女の子。此方に笑い掛けている表情は、とても優しく懐かしい。


『オイッ!』


 【琥王】の声で我にかえる。


『話が違うぞ!それ以上喋るなら、いくらお前でも……』


 小さな体には似つかわしくない、声色で詩道を威圧する。牙を剥き出し、今にも飛びかかりそうな様子だった。急な変貌に俺も一瞬動きが止まる。【斬魔】は詩道と【琥王】の間に立ち身構える。


「悪かったわ。これ以上、余計なことは喋らない。約束通り、質問以外の情報は出さないわ」


 詩道が両手を上げ、降参の意を示す。


「でも、これだけは確認させて貰うわ。何か思い出した?」


 詩道の問いに、今見た光景を伝える。

 そう。と短く答える詩道の顔は、少し、本当に少しだけ辛そうにみえた。


『ッチ。次は警告しないぞ』


 【琥王】の声は、刺々しく収まりがつかない様子だった。

 映像の最後に、少女が厳しい顔で俺と対峙していた事は、何となく喋らない方が良い気がして口を閉じる。

 重い沈黙が広がる。人の部屋の空気を悪くしないで欲しい。


「じゃあ、俺の質問って事で良いか?」


 重苦しい空気に耐えきれず俺が口を開く。


「質問に答えてくれるんだったよな。正直分からない事だらけで、何から聞いたか良いかも分からないけど、あのムキムキ男……"軍神"だっけか?アイツは何なんだ?そもそも、俺はお前になんで狙われた?あと、俺が記憶を無くしてる風な事を言うが、何の事だか全く分からないんだが。それから…」


 堰を切ったように疑問が溢れてくる。

 詩道に出会ってから、分からないことが増えるばかりで、俺としては1つも答えが出ていないまま、今の状況まで辿り着いている。


「とりあえず、順番に説明するから落ち着きなさい。それでいいかしら?不味そうなら、止めてもらったら良いわ」


 詩道が【琥王】の方を見ながら答える。


『フンッ。それで構わない。俺様も今の状況については、分からないことが多いからな』


 【琥王】が鼻を鳴らし、不機嫌そうに答える。


「最初に、私があなたを襲った理由については、記憶を取り戻しているのか確かめる。取り戻していないなら、取り戻すための切っ掛けを作るのが目的だった」


 詩道が喋り出す。

 また、記憶の話が始まる。俺には心当たりが無いと何度言えば良いのやら……


『そこがわからん。記憶を取り戻させるのが目的なのは察しがついたが、なんで今さらなんだ?』


 【琥王】が話に割り込む。


 どこまで話すのが許されるか分からないけど。と詩道が前置きする。


「ある組織から、依頼(オーダー)を受けたわ。向こうはアナタ達がいた頃と状況が変わってるの。【琥王】も知らない組織だし、名前は重要じゃないでしょ?」


『お前と組織の目的は分かったが、動機は……いや、今はいい』


 含みの有る言い方のまま、【琥王】は押し黙る。

 今、引っ掛かる言葉が聞こえた気がする。向こう?アナタ達がいた頃?


 そんな俺の疑問を知ってか知らずか、詩道は説明を続ける。


「今回、なぜこのタイミングで"軍神"が現れたのかは、私たちにも分からない。これは推測だけど、"六神(ヘキサグラム)"のどこかが絡んでると思うわ。私としては、こんな性格の悪そうなことをするのは、"美神"が最有力ね」


 また、俺の知らない単語が出てきたんだが。


『今回戦ったのは"軍神"だっただろ?奴らは、神の軍勢って組織の親玉みたいなもんだ。"軍神"、"知神"、"美神"、"反神"、"裁神"、"主神"の六柱からなるのが"六神"ってわけだ』


 【琥王】が説明を続けてくれる。が、


「えっ!?アレ本物の神様なの!?」


 もう、頭はパンク寸前だった。

 俺、神様と戦ってたの?それより、神様ってあんな感じなの?理解が追い付かない。


 詩道と【琥王】に断りを入れ、考える時間を貰う。

 まぁ、何を考えても理解なんて出来る筈も無いのだが。


「とりあえず、分からないなりに聞いてみるから続けてくれ……」


 詩道がまた説明を続けてくれるので、耳を傾ける。頭が痛くなってきたが、最近たまに起こる不意な頭痛ではなく、正常な頭痛だと思った。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 軍神との戦い、何とか切る抜けることができたようで一安心です。 詩道さんとの仲も、それなりに縮まってきたのかな。 まだ謎が多いですが、これからが楽しみです!
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