11.神との遭遇⑤
アレス戦終了です!
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光が集まった先に現れたのは、刃が大きくなり、燃え上がる炎が揺らめくような、複雑な形状をしていた。
「ふむ。その特異な力は"黄昏の理"か!」
『主に仇なした、己の愚かさを悔いなさい。"軍神"』
【黄泉】が加わり、全身にさらに大きな力を纏う。
「ガハハハハハ!良いぞ!まさかこのような場所で、ここまで楽しめるとわ!」
アレスの力も、さらに高まっていく。
お互いに、ゆっくりと歩み寄る。
一歩近付く度に、ビリビリと威圧感を肌で感じる。
武器のリーチの差で、先に射程距離に入った俺から動く。初撃をかわされ、一気に距離を詰められる。
至近距離でお互いの攻撃が入り乱れる。
受け止め。受け流し。かわす。
数秒に満たないやり取りだが、互いにまともに当たれば致命傷は避けれない。
「この緊迫感、数百年は無かったぞ!実に愉快だな!」
アレスは、この状況を心の底から楽しんでいる。
互角の手数が徐々に押されていく。頭痛が少しずつ、確実に酷くなる。限界が近いと全身に警鐘を鳴らす。
『このままじゃ、押し込まれるぞ!』
【琥王】の声で、意識を繋ぐ。
「どうした!もっと我を楽しませよ!"名無し"!」
かわした筈の攻撃が、体を掠める回数が多くなる。防ぐ度に骨が軋む。
歯を食いしばり、徐々に鈍くなる身体に鞭を打つ。
今出せる全力で、アレスを弾き飛ばし距離を取る。
「【黄泉】!いくぞ!」
『主の望むがままに』
体制を直ぐに立て直し、アレスがこちらに向かって駆け出す。アレスに向けて、左手を突き出す。
「《縛鎖》!」
何もない空中から、アレスに向かって鎖が伸びる。
右腕、両足、腰、首に絡み付きアレスの前進を止める。
「ぬぅ、これは中々!」
アレスが全身に力を込め、鎖を引きちぎろうとするが、切れない。しかし、じわじわと歩みは止まらない。
「これでも完全には止められないか…ッ!」
「ガハハハハハ!我の動きをここまで封じておるのだ!恥じる事は無いぞ!」
一歩、また一歩と歩みを止めず確実に近付いてくる。
だが、構わない。
《縛鎖》を引きちぎられなかった時点で、こちらの勝ちだ。
「《黄泉の門》」
俺の声に合わせ、目の前に大きな鍵穴が、そしてアレスの背後には大きな扉が現れる。
目の前の鍵穴に、【琥王】を差し入れる。
「解錠」
鍵穴に差し込んだ【琥王】を捻る。
ガチャッ
錠の開く音が聞こえる。
アレスの背後の扉が、ゆっくりと開いていく。その先に広がるのは、漆黒。
行き止まりなのか、奥行きがどこ迄あるのか分からない程の、暗い世界がソコにはあった。
開いた門から、さらに数多の鎖が伸びアレスの体に絡み付く。徐々に門の中に引きずり込み始める。
「ぬぅ!これは流石に、今の我ではどうにも出来ぬか!」
『黄泉の法は、世界の理。隔絶された世界から脱する事は、如何に神と言えど簡単には出来ませんよ』
【黄泉】の澄んだ声が聞こえる。
ガハハハハハ!っと、門の中に引きずり込まれながらアレスが笑い声を上げる。
「今回は致し方なしとしよう!戯れのつもりで、"神器"も持たず来た我の落ち度もある!少々手間だが、此方から帰るとしよう!」
それに、とアレスが続ける
「"名無し"も万全では無いようだ!"蒼炎の爪"も見当たらぬしな!次に相見える時は、お互いに全力で戯れようではないか!」
アレスが完全に門の中に入り、ガハハハハハ!という笑い声と共に門が閉じる。
「俺もお前に借りが出来た」
倒れた少女に目を向ける。
「この借りは必ず返す!」
鍵穴に入った【琥王】をもう一度捻る。
ガチャッ
っと鍵が閉まる音がする。
同時に門が消え、鍵穴も消える。
頭痛と全身の疲労で、その場で片膝をつく。
『おいおい!大丈夫かよ!?』
『主はお疲れのようです。後は私共にお任せください』
【琥王】の心配する声と、【黄泉】の落ち着いた声が聞こえる。
そのまま、意識を失いそうになる。
ダメだ。アイツの様子を確かめないと。
ボロボロの体を引きずり、少女のもとまで近寄る。
気を失ったままの様子で、弱々しいが呼吸もしている。しかし、俺よりも状態は良くなさそうだった。
「【黄泉】。お前の力を、流してやってくれ。【斬魔】も相当弱ってる。頼んだ…ぞ…」
限界か…薄れゆく意識の中で少女に声を掛ける。
「ごめんな…ちゃんと守ってやれなかった。お前をこんな目に、合わせない為だったのに……ーーーー。」
目を閉じる瞬間。少女の唇が薄く開き、少し動いた気がした。
バカ
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夢を見ていた気がした。
不思議な夢。夢なのか、現実なのかボンヤリした頭では、ハッキリしない。
目を覚ました俺は、自分のベットの上にいた。
重い頭と全身の痛みで、夢じゃなく現実だったのかと理解する。
体を起こした俺の目に入ってきたのは、俺に目を向ける小虎と、なぜ俺の部屋に居るか分からない詩道、そして見知らぬ幼女だった。
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