10.神との遭遇④
アレス戦終盤です(*^^*)
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不思議な感覚だった。
自分が喋ってる筈なのに、意識とは関係なく口と体が動いている。俺の知らない言葉も喋っているし、正直混乱してる。
詩道の倒れてる姿をみて、映像が一瞬見えた。
覚えはなかったが、助けなきゃ。そう、強く思った。
倒れた詩道と何処と無く似てる気もしたが……
詩道が助かるなら、なんだって良いと思っている自分にも驚いた。出会って数日しか経ってない上に、俺の事を殺そうとしてきた相手に対して、抱く感情ではないと我ながら思う。
何処までこの意識を保てるか自信はないが、一先ず自分自身を見守るという、奇妙な行為に勤しむことにする。
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ガハハハハハ!とアレスが高笑いを上げる。
「これは、これは!我の遊び相手とは大きく出たものだ!しかし、貴様に名乗った覚えはないがな!」
「無駄話に付き合うつもりはない。その足をどけろ」
「その言葉、そのまま返そう!我も貴様の言葉を聞く道理は無いわ!気に食わぬならば、退かせてみせよ!」
アレスが、足に力を込める。
「【琥王】、行けるか?」
『随分懐かしい感じだな!久しぶりに暴れてやるか!』
【琥王】の力が高まる。
そのまま、片手でアレスに向かって投げつける。
回転しながら、敵の首を刈り取るために、一直線に向かって飛んでいく。いかに"軍神"といえど、まともに受ければ致命傷は免れない程の力を纏っている。
「威勢が良い割りに、狙いが直接的すぎるな!」
アレスは身を屈め容易くかわす。
敵の頭上を掠め、外れたかに思えた攻撃だったが、アレスの背後で【琥王】が一瞬光に包まれる。
光の中から現れたのは、体格ではアレスに引けを取らない、体長2メートルはありそうな白虎だった。
背後から、爪で斬りかかる。
反射的に左腕で防ごうとするが……ある筈の腕がない。
攻撃をまともに受け、アレスの体ごと吹き飛ばされる。
『ハッ!ザマァ無いな"軍神"!』
大きな白虎が、【琥王】の声で喋る。
俺はアレスが飛ばされると同時に走り、少女と敵の間に立つ。自分より後ろには二度と行かせないと、強い意思を持って立ちふさがる。
飛ばされた先で、アレスが起き上がる。所詮は不意打ちだ。対したダメージは、期待していなかったが。
「ガハハハハハ!我としたことが!自らの戒めに、化物にくれてやった左腕の事を失念するとは、まったくもって阿呆は我自身だったやも知れぬな!」
嫌になるほどの頑強さだ。敵ながら恐れ入る。
「しかし、しかしだ!よもや"白滅の牙"が相手とは!多少遅れを取るのも致し方なし!」
『今ので、かすり傷も負わせられない程度じゃ、嫌みにしか聞こえないぞ』
【琥王】が牙を剥き出し、威圧しながら答える。
「本心だ!勘ぐるな!素直に称賛を受け入れぬか!」
それに、とアレスが続ける。
「"白滅の"を従える小僧!貴様、"名無し"であろう!なぜ、貴様が生きているかは分からぬが、これは、不穏因子どころの騒ぎでは無くなるな!我が兄弟を、問いただす必要もある!」
「随分と饒舌じゃないか、"軍神"。悪いが、タダで帰すつもりはないぞ」
「それはそうだろう!我も、このまま帰れば良い笑い者だ!」
アレスの全身に力が漲っていく。
「【琥王】!」
『応よ!』
白虎の状態から、手の中で薙刀の状態に戻る。
低く構え、集中する。
「行くーー」
アレスが喋り終える前に、切り込む。
距離を詰め、突きを放つがギリギリでかわされる。
カウンターで放たれた、アレスの拳を受け流し、切り返す。攻撃の応酬を幾度も繰り返すが、お互いに決定打は生まれない。
「この至近距離で、良く器用に長物を使うものだ!」
「喋ってる余裕があるのか?」
上から振り下ろした【琥王】を地面に突き立て、それを軸にしてアレスを蹴り飛ばす。
「ふむ。体術も中々ッ!」
蹴りの衝撃で、距離が空く。
地面から【琥王】を抜き、力を込め横に薙ぎ払う。
「《滅牙》!!」
斬撃の軌道をなぞるように、アレスの首を狙った一撃はギリギリで後ろに仰け反りかわされる。
「ガハハハハハ!先程、痛い目を見たからな!容易に受け止めたりはせぬぞ!」
「デカイ図体で器用に避けるッ」
次の攻撃に繋げようと、足を踏み出そうとした瞬間だった。
鈍痛が頭を襲い、足が止まる。
「隙だらけではないか!」
お返しとばかりにアレスが距離を詰め、蹴りを繰り出す。【琥王】で受け止めるが、踏ん張りきれずに吹き飛ばされる。
『おい!大丈夫か!?』
「あぁ…問題ない。時間はあまり無さそうだが」
【琥王】は何かを察知したのだろう。不要な言葉は切り捨てる。
『どうする?俺様も足止めくらいなら出来るが、"軍神"を撤退まで追い込めるかは微妙だぞ』
「分かってる。ちょうど"アイツ"も見てるみたいだし、強制的に退場して貰おう」
『正直、今の"アイツ"が何を考えてるか、俺様にも分からんが妥当な案だな』
【琥王】が俺の考えを理解し賛同する。
「【黄泉】!」
俺が声を張り上げると同時に、最初からソコにいたように隣に人影が現れる。
フードを深々と被っており、表情は見えない。その人影から澄んだ声が聞こえる。
「主がお呼びなら」
声から男性だと分かる。【琥王】と違い、スマートな印象の声だった。
「相手は"軍神"だ。時間稼ぎにしか成らないだろうが、力を貸してくれ」
フードの男に声を掛ける。
「それが望みなら。私はその意思に従うのみです」
言い終わると同時に人影は光になり、【琥王】に集まっていく。
「【琥王《黄泉路》】」
頭痛は酷くなっていく。チャンスは一度きりだ。
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