9.神との遭遇③
軍神との戦いも終盤です!
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刃の形状が大きく変化した【斬魔】を振り上げ、アレスに向かい駆け出す。
「ふむ。武器が少し大きくなっただけでは、埋まらぬ力の差は分かっていよう!」
「ホントにそれだけだと思ってるなら、見た目どおり頭の中は空っぽなのね」
「ガハハハハハ!言ってくれるではないか!出来損ないの化物ごときが!」
さらにスピードを上げて、駆ける。駆ける。駆ける。
体の負担なんて、気にしない。今は、どうなったって良い。
「おぉ!我の目で追えぬ速さで駆けるか!」
死角から、切りつける。
防がれるが、腕に刃が食い込む。
「我の肉体に傷を付けるか!良いぞ!実に良い!」
そのまま、死角から死角へ移動しながら切り続ける。
少しずつ、確実に切り刻む。
「良い攻撃だが、そのように殺意を垂れ流しながら攻撃しては、目で追えずとも防ぐことは容易いぞ!致命傷には程遠いわ!」
死角に動いた筈だった。一方的に攻撃できる筈が、動いた先に大きな拳が見える。
無理矢理、体を止める。全身の至るところが悲鳴を上げ、鈍い痛みが走る。
拳が当たる瞬間に【斬魔】で受け止め、後ろに飛んで衝撃を吸収するが
速いッ
愚鈍な印象を持つ見た目からは、想像できないスピードの攻撃に、衝撃を吸収しきれずビルの残骸に叩きつけられ、大きな粉塵を巻き上げる。
「ガハハハハハ!動きは素早いが、少々冷静さが足りんな!」
背後に気配を感じる。察知が遅れたか。
「《斬光》」
左腕で受け止めた筈だった。
「ふむ。我が貴様のことを甘くみていた事を差し引いても、見事と称賛を贈ろうか!」
アレスの左腕の肘から先が、消えていた。
光のような物が、血の代わりに溢れてくる。
「これは、敵を侮った我自身への戒めとしよう!もちろん、タダでこの"軍神"の左腕をやるわけにはいかんな!代価は置いていけ!」
詩道の攻撃と同時に、放った右腕の攻撃。
腹部にめり込んだ右腕に力を込め、詩道の体は糸が切れた人形のように空中に投げ出され、そのまま力無く地面に叩きつけられた。
◆
マジかよ・・・
あっさりと崩れ落ちたコンクリートの塊をみて、俺は驚きを隠せない。
こんなの、あり得るのか?夢オチとか?
現実逃避を始めた俺を、【琥王】の声が現実に引き戻す。
『考えるのも話も後だ!とりあえず、この場から離れるぞ!』
「今さらだけど、詩道一人で何とかなる相手なのか!?こんな馬鹿げたことが出来る相手だぞ!?」
いまだに目の前の現実が受け止められず、狼狽える俺。
『時間稼ぎくらいなら、問題ないだろう。お前が足さえ引っ張らなきゃな』
そうか、俺の立ち位置はお荷物か。【琥王】が居ることで、少し舞い上がっていたのかもしれない。元来、普通の高校生だった俺に、何か出来る筈は無いのだから。
今は、言われるがままに走り出すしかない。それが俺に出来る最善だ。そう自分に言い聞かせ、走り出そうとした時だった。
肌で感じる程、大きな力を感じた。
この感覚は……多分、詩道だ。アイツは何でか知らないが、俺を逃がそうと頑張ってくれている。その気持ちに答えなければと、そう思った。
『こいつは……マズイかもな』
【琥王】から不穏な言葉が零れ落ちる。
「マズイって、何だよ?詩道に何かあったのか!?」
不安になる。俺に出来ることなんて、何もないのは分かってる。でも、詩道がマズイ状況なのに、自分だけ逃げるのが本当に正しいのか?
分からない。
自分の意思とは関係なく、体は詩道が戦っている筈の方を向く。
『オイ!何考えてる!?確かに、マズイ状況になってるかもしれんが、今お前が行っても出来ることなんて何も無いんだぞ!』
歩き出そうとした足が一瞬止まる。
でも、ここで逃げたら取り返しが付かない。そんな気がする。
勝手に体が動いた、なんて無責任な事は言わない。
自分の意思で、詩道の元へ歩き出す。
次の瞬間、反対側から大きな音と土煙が上がる。
それを確認し、走り出す。
『もう、どうなっても俺様は知らんぞ!』
【琥王】も、俺の事を心配して言ってくれているのは分かっている。申し訳ない気持ちを感じながら、自分自身が後悔しないように急ぐ。
視界の端で捉えたソレは、理解するのに少し時間が必要だった。
詩道・・・?
上空に、力なく舞い上がる大鎌を持った彼女を認識する。
さらに、全速力で走る。その光景を目の当たりにするのに、時間は掛からなかった。
ボディービルダーのような体格で立つ男。片腕からは詩道と戦った傷だろうか、光のようなモノが溢れ出ている。
その傍らには、力なく横たわる詩道の姿。
ガハハハハハ!と、大きな声が響く
「まったく、楽しませてくれたものだ!我自身への戒めも出来たことであるし、不穏因子に違いは有るまい!虫の息のまま、放っておくのも忍びない!どれ、一息に止めと行くか!」
男が詩道の頭に足を置く。
何をしようとしているかは、分かった。
「やめろぉぉぉぉ!」
俺の声で男の動きが止まる。
「おぉ!もう1つの気配の主か!逃げずにこの場に来た事は称賛に値するぞ!もしくは、力の差も分からぬ阿呆の可能性も有るがな!」
ガハハハハハ!と耳障りな声で笑う。
「せっかく来たのだ!この小娘の始末を付けてから、相手をしてやろう!」
光の無い目をした、詩道の顔が見える。
にげて
声は出ていない。口元の動きだけだが、確かに聞こえた。
脳裏に一瞬、映像が浮かぶ。
光の無い目で、血にまみれ、喋り掛けてくる少女。
俺の回りの空気が砂埃を舞い上げながら、弾け飛ぶ。
「なんと、なんと!この気配、先程までとは別人ではないか!面白くなりそうだ!」
アレスが新しいオモチャを貰った、子供のように楽しげな声を出す。
「その汚い足をどけろ、"軍神"。俺が代わりに遊んでやる」
【琥王】を構え。神と対峙する。一人の少女を守るために。
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