大顎の真価
異変が起きた。
バグンッッ!!
「・・・・・・・・は?」
スミロドンの口から、彼女のものとは思えないくらいの間抜けな声が漏れ出した。
あの斬撃は、今までにないくらい本気で放った。
確かにタナカたちに配慮して手は抜いているが、レックスの腕くらいは食いちぎれる自信はあった。
信じられない光景が、刹那の間に確かに存在し、スミロドンの網膜に焼きついたのだ。
レックスの『マノスポンディルス・ギガス』の大顎が、黄金の斬撃を『食った』のだ。
彼女の全ての思考を置き去りにして、大顎は渾身の一撃を飲み込み、そして渦の中に消えて、やがてその渦も霧のように霧散した。
フッと小さな衝撃波が巻き起こり、二つの大技の激突の痕跡がこの世から消えた。
マノスポンディルス・ギガスの元ネタは、ティラノサウルスの骨の名前に由来しています。
説明すると、マノスポンディルスとティラノサウルスの化石は同じなのです。
マノスポンディルスはティラノサウルスより前に命名された恐竜です。
そして古生物学の世界では、二つの生物の化石が同じ動物のものだった場合、最初につけられた名前が優先されます。
しかしなんでティラノサウルスの名前が残っているのかというと、それは圧倒的にティラノサウルスの方が有名であって、しかもティラノサウルスがマノスポンディルスに変わって正式名となったのは、ジュラシックパークシリーズやアニメ、ドラマやゲームでの活躍も大きいと考えます。
一時期論争になりましたが、お偉いさんが権力の力でティラノサウルスを正式名としました。
いやあ名声の力ってすげえ。
ちなみにマノスポンディルスが正式名となっていた場合、恐竜図鑑は全て差し替えになります。
作業が大変。
小学館も顔を真っ青にしたことでしょう。




