AMNH 3982
さっきよりもずっと力強い一振り。
鋭いとかではない。
大きくて重い。
おそらく渾身の技。
地球史上最強級の剣。
それを、地球史上最強の生命が、ただ。
迎え撃つ。
極限まで圧縮された一瞬の時間の中で、ボロボロの荒野もどきとなった森の土を、レックスはググッと足を後ろに、地面を抉り、身体を地面に縫い付ける。
右手をゆっくりとあげて、奇妙な言葉を詠唱する。
自分は完全に無傷だが周りに被害の及ぶ並行圧力ではなく、さっきの弓矢と同じく『象徴武器』を用いる。
ティラノサウルスにはさまざまな側面がある。
30センチものステーキナイフ、いやまるで名工の短剣のような牙ーー剣。
鷹や鷲、人間やライオンを遥かに上回る動体視力と視力ーー弓矢。
圧倒的たる知識量と知力ーー本。
などなど、他の恐竜とは違い側面が複数あるため、その分『象徴する武器』も増える。
次に使うのはーー
「それが象徴するは《グローズバイノード》」
大量の龍力を右腕に注ぐ。
皮膚、細胞、さらには自分を構成する原子にまで龍力を纏わせる。
原子の粒の間に龍力でできた障壁をいくつも作り、全体的な防御力を上げていく。
「万物を飲み込む大顎」
レックスの掌にどす黒い渦が発生し、その底のない黒の中より、恐竜の咆哮が鳴り響く。
「それは揉み消された名」
やがてその渦は直径三メートルほどまでに肥大し、中から巨大なティラノサウルスの頭骨が姿を現した。
レックスは目を見開いて、その技の名を口にする。
そうそれは、かつてティラノサウルスによって歴史から抹消された、もう一つの『皇龍』。
「マノスポンディルス・ギガス」
直後、ヒュンッという何かが収束するような音がして、世界から音が消えた。
ドッッッッッッッッッッッッッガッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
内臓をねじ切るかのような轟音とともに、サーベルタイガー・スミロドンのエクスカリバーの斬撃とティラノサウルス・T・レックスの『第3象徴武器・マノスポンディルス・ギガス』が正面切ってぶつかり合う。
氷河期に生きた誇り高き騎士・サーベルタイガー・スミロドン。
白亜紀に生きた恐竜の王・ティラノサウルス・T・レックス。
約65000000年の時を超えて、互いの魂が激突する。
全恐竜ファンよ。
湧けええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




