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竜族の姉妹・後編

 少し昔の話をしよう。

 これは俺が転生する500年以上も前のお話。

 

 あるところに竜族の巣があった。巣というよりも国といった方が正しいか。

 人族の住処から遠く離れた孤島にそれは存在していた。

 そこには全世界のほぼ全ての竜族が集まり、平和な日常を送っていた。

 竜族を統べる長の名は、竜神アムア。

 風流の女神タクトナーテと初代竜神ヤコブの間に生まれた竜族の男で、半竜半神の身であり非常に強かった。

 そもそも竜族自体があり得ないくらい強いので、そこに女神様の力もプラスされるとなるとステータスはカンスト状態。

 しかしそんな強大な力を持ちながらもアムアは増長せず、民の身を案じ、家族を大切にする明君だった。

 彼は妻を娶り、娘が二人生まれた。

 長女の名はカリタルネ、次女の名はロリタルネ。

 アムアは娘二人と妻に囲まれて幸せな日常を送っていた。

 だが、平和な日常も長くは続かずに、ある極悪女神が人間とかの種族を唆して竜族を滅ぼそうと戦争をおっぱじめ、人間どもはあっという間に256以上の種族を味方につけて、さらには極悪女神の差金で天界の騎士団も参戦と来た。

 当然竜族の味方になってくれた種族もいるにはいたものの、せいぜい五たらず。

 そして最終的に裏切られたらしい。

 いくら強大な竜族とはいえこの圧倒的たる戦力差はどうしようもなく、結果は惨敗。

 アムアとその妻は処刑。

 竜族の幹部もまとめて死亡し、竜族の数は大激減。

 絶滅寸前にまで追い込まれて、それでも一部は徹底抗戦を続けたらしいが、まとめて鎮圧されて今ではどこにいるかも何体生存しているかもわからないという状態だという。

 そして竜族に加担した種族も見せしめとして絶滅させられて、人間側についた種族も増長した人類に不満を持ち反抗したがこれも鎮圧されて、最終的にはほとんどの種族が絶滅寸前にまで数を減らしたとか。

 そして人類の時代がきて今に至る。

 

 ー


 要するにカリタルネは竜族のトップの娘だということだ。

 では何故俺にこの話題を持ちかけて来たのだろうか?

 考えられる理由は、恐らく俺を仲間の生き残りだと思ったのだろう。

 

 カリタルネは自らの正体を明かした後に、500年前の大戦争・『人竜大戦』について語り、そして自分が竜神アムアの娘であるといった。

 そうか。

 竜族の末裔だから、あの時あたかも人間が悪いみたいな感じで語っていたのか。

 なんか納得した。

 あの話をした後に、自分で人竜大戦の歴史小説を読んでみたところ、まるで人間側が正義みたいに描かれていたのを今でも覚えている。

 勝者は正義か。

 何処も変わらねえな。

 そりゃ許せねえよな。だって世間はまるで自分の父親が全て悪いみたいに言ってんだもん。

 そしてコウリンブルク教授はカリタルネが竜族であることを知らないらしい。

 

 俺はカリタルネに聞く。

 「俺を竜族の生き残りだと思ったんですか?」

 「・・・そうです」

 カリタルネは心底残念そうだった。

 「どうしてそう思ったんですか?」

 「貴方が最初恐龍族だといったので、もしかしたらという・・・・生き残りであるなら、嬉しかったのですが・・」

 「生き残りを探しているのですか?」

 「はい」

 余程カリタルネは自分の種族への愛着があるらしい。

 申し訳ない気分になって来た。

 彼女の希望の光を少し消してしまったのだから。

 カリタルネは数秒間俯いて、バッと顔を上げると、いつもの快活そうな表情に戻った。

 切り替えが早いのだろう。

 彼女のいいところだ。

 「私も、聞きたいことが聞けて満足です。このたびは申し訳ありません。貴重な勉強の時間を・・・・」

 とんでもない。

 貴重なお話が聞けた気分だし、カリタルネと少し仲良くなれた気がした。

 可愛い子には粉をかけておくのだ。

 ちょっとずつちょっとずつ味付けをしていくのが俺のやり方だ。

 料理の基本でありエロゲーの基本でもあるのだ。ぐっへっへ。

 「大丈夫です。お気になさらず」

 そう言うとカリタルネはにへらと笑い、

 「では、館の方に戻りましょうか。教授が待っています」

 

 カリタルネは道中ある事について謝罪してくれた。

 そう、買い物に出かけていた時、俺を乗り物にした時の。

 「あの時は、もしかしたらレックス様は竜族に間違われてしまうのではないかと言う事で、馬などと同等の扱いにしてしまいました。申し訳ございません」

 彼女は頭を下げた。

 「気遣ってくださっていたのならむしろありがたいくらいです」

 別にいいだわさ。サドル着心地良かったし。

 その後も何個か質問をした。

 もちろん他者には聞こえないようにだ。

 「竜族ってどんな姿をしているのですか?」

 「レックス様に羽とツノを生やしたような感じですね。大きさは貴方の3倍はあります。人族くらいの大きさの種類もいますが」

 今の俺は五メートルだから、そうだな、ざっと十五メートルくらいってことね。

 小さくなる前の俺とほぼ一緒の大きさだな。

 でもなんでカリタルネとロリタルネは人の姿でいるんだ?

 「なんでカリタルネさん達は人の姿で?」

 「人化術式です。人の姿になれる術式ですね。私の体に刻まれた術式はそれだったので、今こうして私と妹は人の姿でいるんですよ」

 へえ、便利な術式。

 しかも他者にも使えると来た。こう言う術式魔術も存在するんだな。

 あれ?使い方によっちゃあ属性魔術よりも有能じゃね?

 俺も人化してえなあ。


 「それ、俺にも使えますか?」

 そう少し冗談まじりに言うと、カリタルネは少し考え込むように顎に手を当てる。

 数秒くらいそうした後に、

 「確かに、学校の教師をやるにはその体では少々不便なこともあるでしょうし、万が一竜族と疑われたら大変ですものね。まあ、やれるとは思いますけど・・・」

 おいおい心配性だなお嬢さん。

 でもビクビクしながら街を歩くのも嫌だし、館に帰ったら試してみるか。

 「お願いします」

 

 そうこうしている間に館へと到着。

 そして俺の部屋へ移動。

 カリタルネは一旦外へ出て、十分くらいでまた戻って来た。

 彼女が脇に挟んでいたのは黒スーツとネクタイ、パンツにワイシャツ、そして魔術師が来ているような黒いローブ、もう片方の脇には紙を丸めたものが。

 ああ人化する時は裸なのか。オッケー理解したよ。

 カリタルネは俺の部屋のど真ん中にでかい紙を広げて、近くにあったペンで魔法陣みたいなものを描き始めた。これが人化術式の魔法陣なのだろうか。

 数分で書き上げられたその魔法陣の上に、俺はカリタルネの指示で乗っかった。

 紙の感触ちょっ気持ち悪いな。

 カリタルネはペンを置き、ベッドに衣類を置くと、俺の目の前に立ち両手を結び、神に祈るようなポーズを取った。

 おお?随分本格的じゃねえかよ。

 カリタルネはすうと深呼吸をした後に、一語一語噛みしめるように詠唱を始めた。

 彼女の発した詠唱の言語は、俺が全く知らない言葉だった。

 恐龍が使う言語でもなく、人間語でもない、どこか不気味な言語。

 その詠唱が3分ほど続いた。

 術式魔術の詠唱は基本5分くらいかかるらしく、これはまだ短い方だ。

 詠唱が終わった瞬間。

 

 魔法陣が紫色に点滅し出して、光が溢れ出す。

 閃光のような感じではない、優しく抱擁するかのような淡い光が、俺の身体を足下から飲み込んでいく。

 ゆっくりと、確実に。

 飲み込まれたところから感覚が消えていき、10秒経った頃には下半身の感覚がなくなっていた。

 まるで自分が作り替えられていくような感じがする。

 普通なら気持ち悪く思うところだが、今は不思議と嫌悪感が湧かない。

 首まできたところで、意識が薄れていった。

 眠気がグンと上がってきて、思わず身を委ねそうになるのを堪える。

 俺が眠気を堪えている事に気づいたカリタルネは注意して来た。

 「体を楽にしてください。眠気が襲って来たら成功の一歩手前です。寝てください」

 成功の一歩手前か。

 じゃあ寝るしかないよね。

 俺はプチンと意識を途切らせた。


 眠りの中。

 俺はうっすらとした意識の中で、自分の体に起きたことを把握しようとしていた。

 おかしい。

 感覚というか、体がおかしい。

 下半身に重みを感じないん尻尾がなくなっているのか?

 指が気持ち悪い。増えているのか?

 妙に肌寒い。羽毛はどうした?

 顎の周りの筋肉は?

 この顔にかかる無数に毛はなんだ?羽毛よりもざらざらとしている。

 腕をピクリと動かしてみる。

 ごそっとと何かに当たった。

 もっと触ってみると、筋肉がついている太いものがあった。鱗はなく、人の肌に近い感触。

 太もも?つまり今触れているのは足という事になるな。

 俺の腕の長さはせいぜい首元を触れるかくらいしかなかったというのに、人間の大人くらいはある。

 人の体になったという実感が、少しずつ湧いて来た。

 指を動かせば、5本指の感覚があった。おもむろにあたりを触ってみると、布の感触が伝わって来た。いつものシーツとベッド。

 どうやらちゃんと寝かせてくれたらしい。

 鼻はちゃんとしている。人化しても五感はいままでどうりらしくて安心した。

 次は顔面。舌で口元を舐め回すと、なんか柔らかい肉の感じがした。唇か。

 俺は上体を起こす。シーツをどかす。

 おかしい。

 背骨が真っ直ぐ垂直になっていて、直立姿勢が一番楽になっている。

 目を開けてみる。目は真っ直ぐついておるようで安心した。

 まず目に飛び込んできたのは、いつもの部屋の風景。

 それから視線を落とせば、白い肌に覆われた5本指の手がそこにはあった。

 もっと視線を落とせば、割れた腹筋とその下にあるオスがオスたり得るシンボルがあった。

 身長は179センチくらいか。

 頭に触れる。

 ガサっという音がした。

 わしわしとかきむしってみると、何やら毛のようねものがあったので一本引っこ抜いてみると、真っ白い髪の毛が視界に入った。

 羽毛は髪の毛になったのか。

 俺の身体はアルビノだから、肌は白いのか。

 やっと実感が持てた。




 俺は、人間になった。

 

 

 

 

 




















 

 

 

 

 

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