日常の1シーン
俺がこの世界に来てからはや4日目。
俺は魔術などの知識の他に、この世界にある国について勉強を始めた。
まずこの世界の世界地図だ。
中央にある南極大陸みたいな形をした大陸が『オルマン大陸』。
俺が今住んでいる大陸で、四季があり気候も安定している。
この大陸には15の国がある。
その中でも代表的な二つの国を紹介しよう。
俺が住んでいる世界一の国土を誇る国・ヘルバ王国。
前世で言うところのアメリカ合衆国みたいな国風の国で、国土はロシア帝国の2倍以上もある強国だ。
歴史も長く建国から526年も経っていて、建国の英雄にして初代国王・アレクサンダー・ヘルバは御伽噺になるくらい有名だ。
そしてヘルバ王国の同盟国にして世界一の人口を抱える国・ジャンガ帝国。
こちらは国土はヘルバ王国の7割ほどだが、人口はそれの3倍以上。
産業力で一気に上へと上り詰めたという、属国は九ヵ国もある超大国だ。
オルマン大陸の北西にある三日月型のでかい大陸が『エマーカー大陸』。
国は全部で16。めちゃくちゃ寒くて、降水量も多い。
オルマン大陸の南にあるのがヘンゲラリ大陸。
熱帯気候の地域で、マングローブ林は観光名所としても栄えている。
独自の文化や思想を持った人々がいる多文化な地域だ。
これらは『三大大陸』と呼ばれ、これらの大陸以外は有象無象の島々だ。
そして世界地図を見てみると、あの夢の図書館の天井にあった世界地図と一致していた。
どうやらあれはこの世界の世界地図だったらしいな。
次は宗教だ。
この世界には主な宗教が四つ存在している。
一つ目は『ヴァシヌ教』。
信徒数は最多で、エマーカー大陸で広く信仰されている。教えの内容はかなり仏教とかに近い。
二つ目は『ハンマー教』。
エマーカー大陸の南で信仰されている新興宗教で、教えの内容はキリスト教に近い。
でも四つの中では一番規模が小さいようだ。
三つ目は『ヒンダ教』。
信仰されている地域の広さは一番で、歴史も一番古くて千年以上前からあるらしい。
四つ目は『バグラー教』。
ワイバーンなどの『竜族』と呼ばれる種族を極度に毛嫌いしているらしく他の宗教に対する敵対心も強めである。なんか四つの中でこれが一番やばそうだな。
と、思ったら信仰されている地域オルマン大陸らしい。
でもみんな結構まともだよな。
さて、お次は種族についてだ。
この世界には様々な種族や部族が存在する。
前も話したようにワイバーン達竜族や、人族などの大まかな分け方から、千種類にも及ぶ各部族などがいる。今の時代は人族の天下で、かつて人族と覇権をかけて争っていた竜族は絶滅寸前。
竜族の敗北により竜族側についていた種族や部族もまとめて絶滅寸前もしくは迫害の対象になったという。
バグラー教なんか昔は竜族どころかそれ以外の部族や種族にすら矛先を向けていたらしい。
今は差別は和らいでいるが、それでも強いところは強く、迫害されている種族や部族の子は学校に通うことも許されず、石を投げられるらしい。
差別は良くないな。
そういえば前世でもダスプレトサウルス族は迫害の対象になっていたっけか。
俺は別にダスプレトサウルス族に対して差別的ではなかった。むしろ仲間意識が芽生えていたくらいだ。
互いに世の中からはじかれたもの同士、な。
でもそいつらは俺が生まれた時にはもうすでにいなかったらしい。
少々話が逸れたが、まあ今台頭している種族は人族とその仲間ってわけだな。
因みに人族がどうやって超強力な竜族から世界の主導権を勝ち取ったのかというと、その圧倒的集団戦闘能力と知恵だという。
竜族は一応は群れるが大体が家族単位の小さい集団だ。
弱い子供からじわじわと殺していって長い時間をかけて着々と竜族の数を削っていったらしい。
人族は相当陰湿だな。
ちなみに竜族が迫害されていることと、どうやって人族に負けたかはカリタルネから聞いた。
少し話すのを躊躇っていたが、彼女はどこか人族が悪いみたいな風に喋っていた。
喋り終えた後の彼女の顔は辛い過去を思い出した時のような、生命の感じられない顔だった。
俺はそれ以上聞かずに、静かに部屋から出てく彼女の背中を見送っていた。
何か悪いことを聞いてしまったのだろうか。
いやでもカリタルネは人族だよな?
ー
俺は今自室でロリタルネとボードゲームをしている。
彼女は昨日の買い物以来、俺に懐いてくれるようになった。好意を寄せているという風ではなく、兄や父親といった接し方に近いか。
前のような控えめな感じではなくなり、快活で元気な悪ガキっていう感じだ。
不器用なのは変わっていないのだが。
そして今やっているゲームはチェスだ。 前世と違って全部木製で簡素だが、ルールは変わらない。
今のところ一回も勝てていない。
いや本当この子強いよ。
どこぞの遊戯の神と天才プロゲーマー兄妹とぜひ戦って欲しいくらいには強い。
いや俺が弱いだけか?
ロリタルネは一手指すたびにニマニマ笑って、次の手に困る俺をじっと見ている。彼女自身は俺を少し挑発しているのだろうが、こちらとしてはただ可愛いだけである。
可愛い。でもこの子も後10年くらいしたらすっかり大人になっちまうんだよなあ。
悲しいな。この小さくて可愛い姿のままいてほしい。
そういえば人族の寿命は精々70年くらいが限界らしい。
短いな。
「こうだ!!」
俺はナイトを一歩前に突き出す。
「にっへへへ」
だが俺が精一杯考えた紙の一手を、目の前の天才は最も簡単にあしらってくれる。
「それえ」
「アッーーーーーー♂!!!!」
思わずクソミソな声を上げてしまったが、盤上の地獄は変わらない。
10戦0勝10敗。
俺の脳味噌!!特に左脳!!思考が浅いよ!何やってんの!!
まずいなブライト艦長に怒られてまう。何ということだ。もう最悪の状況になっているじゃないか。
よし、この技を使うことにしよう。
我が一族に伝わる、この状況を打開するための苦肉の計。
「あっ、もうお風呂の時間ダー入らないとなー」
がっつり棒読みだが、どうだあ!?効果はどうだ!?
このくらいの子だったら、「そうなのー?じゃあ中止ね」という反応を示すはず!!
さあどう出る!?!?!?!?
ロリタルネはニタリと悪どい笑みを浮かべ、ボソッと呟いた。
「これ以上負けるのが怖いんだー」
ん?おお?なんだって?
俺の頭がエクスプロージョンしてバニシングフィストで最終的にソーラレイしちゃうぞ?
おおいいぜ生意気メスガキがよお!!たっぷりわからせてやるからなあ!!
俺はにチャリと牙をのぞかせて、
「心ゆくまで死会おうぞ!!」
「ありがたい!!」
・・・さて、結果を報告しよう。
あの後寝るまで、いや、朝になるまでチェスに燃えた。
そしてロリタルネが時々見せるガキっぽい笑顔に萌えた。
そして彼女の実力に萎えた。
厳正なるこの試合の結果は、
22戦やって、ロリタルネが21勝、俺が一勝という形で終わった。
やったあ!!この天才幼女から一勝をもぎ取ったぞお‼︎
・・・・まあこの一勝はロリタルネがもう眠いという理由で頭が回らなくなったが故に勝利したのだが・・・・。
そして朝の5時くらいにロリタルネは寝た。
すやすやと、それこそ6歳の子供のように。
つーわけでおやすみのキッスをしてみようと思ったらそのタイミングでカリタルネが部屋に入ってきた。
そしてそれと同時にううんとロリタルネも目を開いた。
ドン引かれた。
「童貞の分際で調子こいてましたああああああああ!!!!」
とにかく謝りまくった。
極東の国・大和国に伝わるという伝説のJAPANESE・DOGEZAで難を逃れようとしたのだが、さらに引かれた。
おい、俺はこの先どうして生きていったらいい?




