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転生パートってこんなにシリアスだっけ?

暗闇から意識が戻るとやっぱり暗闇だった。

目が開かないのか、そもそも目がないのか。


我思う故に我有りということなら意識があるから私は存在しているのかな?

思い出せるのは突っ込んでくるトラック。もしあれで私が死んでいないのなら病院のベッドか何かで寝たまま起きれないとかなのだろうか?でも痛いという感覚どころか何も無い。ずっとこのままなんだろうか?自我が消えてしまうことも怖いけど、このままってのもすごくやだな。夢だといいな、でも夢オチって禁じ手だよね、また叩かれちゃう。それでもやっぱり夢でいい、早く目覚めて両親に心配かけてごめんって言いたい。


いやいや、それともあれかなラノベのテンプレでいうと転生前の高位存在との触れ合いの間的なところなのかな、スキルもらったり転生先での試練を告げられたりする例のあれ。

優秀な無性的な存在がいいな。駄女神ちゃんもかわいいけど、私も一応女だし、ヒロインとして採用したくてもリリィ要素が入るの極端に嫌う人もいるし・・・あ、でも転生先で私が女だとは限んないのかな、TSは益々狭き門ってイメージあるからなぁ。私個人としてはカップリングの性別もハーレムも逆ハーレムも割と何でもござれって思っているんだけど。

いやいやまてよ、転生先が人とは限らないのか。ヒューマノイド型の何か、いわゆる亜人って呼ばれるような種族だけじゃなくて、最近はモンスターとかも定番になりつつあるし、あるいは普通に動物とか虫とか。うーん、大穴で意思を持った無機物なんてのもあるからなあ。まあこの辺の差異は設定の差異であって物語の筋のテンプレは揺るがないんだけどね。


・・・意識が浮かび上がって来てからどれくらいたったのかわからないけど、いまだに何にも無い。これは本格的に怖くなってきた。


『あのー、誰かいないんですかね?』


呼びかけようにもどうすればいいのかわからない。こういうときって魂の会話みたいに思ってみるだけで伝わらないのかね。そろそろ誰かからレスポンスないと豆腐メンタルがヤバいです。冷凍庫の奥で忘れ去られた年代物の凍み豆腐みたいに干からびてしなしなになりそうです。優しい味のお出汁で戻そうとしたって手遅れなヤツです・・・

『誰でもいいから、ツッコんでください!お願いします!』

いや、あれですよ変な意味じゃなく!お笑いのお約束的な・・・


『ほんとにずっとこのままなのかな』


こういう何もしないで考えてばかりいるのはよくないんだけどなぁ、すごくよくない。先生もそう言ってた。無理にでもふざけてないとドンドン嫌なこと考えちゃう。


お父さんもお母さんも悲しんでるだろうな

心配かけてばかりで本当に私って親不孝だったなあ

「そばにいてくれるだけで幸せだよ」って言ってくれてたのにこんなことになっちゃって


ああ、私のことひいちゃったトラックの運転手さんは大丈夫かな?

これから大変だろうなあ

なんで!?っていう恨みもなくはないけどひいた方だってきっと地獄だ


・・・ほらね、すごくよくない。もしかしてこれが地獄なのかな。


ああ、なんだろう、すごく泣きたい。でも泣くこともできない。


すごく長い間こうしている気がする。

ん?

なんだか少し明るくなってきたかな?ああ、あれだ。遠くで何かが光ってる。少しずつだけど私の方に近づいてくる。やっと終われるのかな、それはそれで少し怖いな。でもなんだろう光が大きくなっていくにつれて息苦しくなるのに、なんだかすごく安心する。

・・・あれ?息苦しい?

ここで私の意識は再び暗転する。




~~~~~~~~~~~~




「おめでとうございます、少しお体が小さくていらっしゃいますが、元気な女の子でございます!」

赤ん坊の元気な鳴き声と共に部屋から出てきたメイド姿の女性が、廊下でそわそわしていたこの屋敷の主に告げる。

「そうか、そうかよかった!」

予定より一月ほど早い出産に緊張の糸が張り詰めていた屋敷の空気は天使のラッパと共に祝福された温かなものへと変わった。

「それで妻は?」

「少々お疲れのご様子で、お嬢様のお顔を確かめられた後すぐにお眠りになりました。ですがランドル先生は『心配ない』とおっしゃっています。」

開いたままの部屋の扉から、小柄な老爺がまくった袖を戻しながら出てくる。

「ランドル翁、この度は誠にありがとうございました!」

深々と頭を下げる屋敷の主に老爺はカカッと笑いかける。

「なに、ほんの少し赤ん坊の気が早かっただけじゃ。余程、お主らに会いたかったんじゃろう。はよう行って抱いてやるがよい。」

老爺が言い終わるが早いか、男は再び深く一礼すると駆け足にならない程度に急いで部屋へ入っていく。微笑みながら男を見送った老爺はメイドに案内されて隣室へ向かう、念のために数日はこの屋敷に逗留することになっているようだ。


「よく頑張ったな、ありがとう。」

男がベッドの上で寝息を立てている愛しい妻の頭を起こさないようにそっと撫でると、しっとりと汗で湿っていた。それを感じると男は妻への感謝と尊敬の想いを一段と深くする。

「そして、そなたもよく頑張った。」

男はもう一人のメイドの手から赤ん坊を大事に大事に抱き上げてそう言った。


こうして高遠真里は彼女のいた世界とは異なる世界へと転生した。

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