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プロローグ

「はぁ~あ、テンプレっていうのはさ一種の様式美だと思うんだけどなぁ。」


朝早くから小説投稿サイトの感想欄を死んだ目で見つめていると、ため息まじりのそんな言葉が口をつく。


私は高遠真里。しがない無職の2○歳、独身。大学在学中にいろいろとありまして、現実逃避するように遅めの中二病を発症しました。さらにさらになんやかんやありまして中二病以外も発症し大学中退後、現在にいたるまで数年間の絶賛引きこもり中。幸いにして、家族仲は良好で、両親は辛抱強く私を見守ってくれている。とはいえ、あともう数年経てば父も定年を向かえてしまう。


「まあ、真里一人が一生暮らしていけるくらいの財産は残してやれると思うから、あせらずのんびりやればいいさ。」

「ふふふ。そうね、田舎のおじいちゃんの畑もあと何年もしないうちにそれなりの値段で売れるだろうし、贅沢しなければ問題ないわよ。」


肩身の狭い思いをしている私を気遣って両親はそう言ってくれてはいる。それでもやはり、申し訳ないことだなぁと思うわけで・・・なにかやらねば!


というわけで結構元気になってきた一年くらい前から、小説を書いてみたりしている。別に小説でどうにか「なろう」なんて本気で思ってるわけじゃないけど、これならやりたいことだし、無理なく頑張れる。それに私が何かやっているってだけで両親も少しは安心できてるみたいだし。

まあ筆が乗ってるときなんかは「出版されちゃったりして・・・」とか妄想はするけど、それは「宝くじ当たらないかなあ~」っていうのと同じレベルだから・・・ね?


でも現実は厳しいですね、というか感想欄のご意見が厳しいです。


・またありがちな異世界転生物かよ

・オリジナリティーが感じられない駄作

・テンプレ、乙


まあ処女作に感想いただけただけでもありがたいことなんですけど、けっこうキますね。

アッパーな時なら「なにを~!絶対面白いって言わせてやるぞ!」っていうテンションにもなるけど、

ダウナーな時だと「ぅぅ、○にたい・・・」ってなります。

お薬を服用。

今は、割と落ち着いて自分の作品を読み返している。


・主人公の唐突な死

・気付けば異世界

・剣と魔法のファンタジー

・貧乏貴族の子供に転生

・スキルチートや現代日本知識チートで領地改革

・功績が認められ成り上がる

・世界を救ってヒロインと結ばれハッピーエンド


うん、究極的に話を削っていくと私が書いた物語の筋はこうなってる。

・・・はい。ぐうの音も出ないほどにテンプレですね。


まあ初めて書いた作品だし、自分が好きな展開を盛っていけばおのずとこうなりますわいな。設定とかキャラ造詣とか取り入れる蘊蓄にはけっこうこだわったつもりだったんだけどね。本筋は紛れもない「鉄板」並みのガチガチ、バッキバキのテンプレ。


だがしかし!

話の筋がわかってるからって全くダメなわけじゃない!


というのが私の持論。

突飛な設定を付けたしてもびくともしない強固な構造、鉄筋コンクリート造りの安心快適なマイホーム!それがラノベのテンプレなのです!(高遠真里個人の意見です。)


ラノベのテンプレと言うのはおじいちゃん、おばあちゃんにとっての水戸○門。

奥様方にとっての2時間サスペンスドラマ。

物語の最後が、印籠を出して悪人土下座や崖の上で犯人独白になるとわかっていても、たまたま付けたテレビでやってたら何となく最後まで見ていられる。

いやむしろわかりきったラストを見ないままチャンネル変えるとモヤモヤするでしょ?

アレアレ、ああいう妙な中毒性があるのがラノベのテンプレだと思うのよ。(やや暴走しているうえにくどいですが、高遠真里個人の意見です。当方とは一切関係ありません。)


閑話休題


先生からも

「散歩したり、図書館に行ったりするのもいいですよ。」

と言われているので、パソコンを閉じて今日は久しぶりに外出する。


季節は秋。

夏っていつまでだっけ?っていうくらい暑かった9月も終わり、10月の2週目である今日は、昔は休日だった日。さわやかな秋晴れと薄手の長袖1枚で過ごすのがちょうどいい気温。絶好の散歩日和だ。


夏の間は平日でも図書館は学生さんたちで結構人が多くて、私にはまだつらかった。新作を書くためにいろいろと調べものをしたかったので今日は閉館まで粘るつもり。内政系なら政治や経済の社会科学系ならともかく、農業や工業なんかで使う自然科学系の知識チートを安易に盛り込むと割と容赦なくボコボコにされるので理論武装。


というより、本音は「一応ちゃんと調べて書きました」という心の保険だけど。けっこう元気になったとはいえ豆腐メンタルは絹が木綿になったところでちょいと殴ればすぐ崩れます。大差ないので仕方がなのです。さてさて使えそうな個所はメモメモっと・・・


「あのー、もう閉館の時間ですよ。」

いつの間にか読書スペースで寝ていた私は司書?のお姉さんに起こされれて慌てて外に出る。時刻は6時を少し過ぎたくらい夕日は完全に沈んでいたけど辺りはほんのり薄明るい。自宅までは歩いて30分位かかるから、着くころには真っ暗だろうなぁなんてぼんやり考えながら交差点を渡ろうとする。


ブオォーンという大きなクラクションが聞こえて私の視界がヘッドライトの光で白く染まる。信号無視をしたトラックだ。「ちょっと、いくら何でも今日日トラックに轢かれてなんてテンプレじゃ感想欄でたたかれちゃう!」そんなことを思った刹那、衝撃。すごく痛い。「テンプレ通りに転生できないかなぁ」そんな想いを最後に私の意識は暗転した。


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