第61話 アークレコード
二十分後。
俺はアイリーンを連れ再びミネーナのもとへと戻った。
「誰よその女の子? 誘拐してきたの?」
「人聞きの悪いこと言うな。こいつはアイリーン、聞いて驚くなよこう見えてジョパン城の宮廷魔導士だ」
まあ俺もそのことはついさっき知ったのだが。
俺はサーチの魔法を使いアイリーンの居場所を探り当てジョパン城まで迎えに行き、ヘブンズドアでプロメアの地下牢まで連れて来たのだった。
「宮廷魔導士? ほんとに? だらしない顔してるけど……」
アイリーンはにへら~と笑いながらミネーナを見上げていた。
「だ、大丈夫だ。アイリーンは俺も使えないような特殊な魔法が使えるんだ。きっと力になってくれるさ、な? アイリーン」
「うん」
アイリーンは大きくうなずいた。
「ほんとかしら? それで具体的にはどうしてくれるわけ?」
「アイリーン、事情はさっき話した通りなんだがどうだ、何か使える魔法はあるか?」
訊くとアイリーンは猛禽類のようにぐぐーっと首をひねり考え込む。
「ちょっとこの子大丈夫なの? すごく心配なんだけど……」
「いいから黙って見てろ」
すると、
「…………いいこと考えた」
アイリーンが口を開いた。
「お姉ちゃんの荷物から知らない人のお財布がみつかったのはいつ?」
「え? えっと確かわたしが牢屋に入れられた日だから、八日前だったかしら。それが何?」
「アークレコード!」
突然アイリーンが呪文のようなものを唱えた。
「アイリーン、今のなんだ? 魔法か?」
「……」
無言で俺を見上げると廊下の壁を指差すアイリーン。
俺とミネーナは壁に目をやった。
とそこにはある映像が映し出されていた。
草原の中で昼寝をしているリックとミネーナの姿だった。
「何この魔法? こんなの――あ、あれわたしの荷物だわっ」
映像を見てミネーナが声を上げる。
壁に映し出された映像にはミネーナ愛用のバッグも映っていた。
「アイリーン、これ過去の映像か? こんなことも出来るのかよお前。そっかあの時もこの魔法で助けて――」
「クロードうっさい。ちょっと静かにしててっ」
「あ、悪い」
映像を真剣な眼差しでみつめているミネーナに注意されてしまう。
その後も二人が仲良く昼寝をする映像が流れていたがしばらくして画面に二人の女性が映り込んできた。
「あっこいつらよ、新しくパーティーに入ってきた奴ら。赤いビキニアーマーを着てるのが戦士のジャネットで白いふわふわしたローブを着てる方が賢者のアナスタシア。どっちもいやらしい顔してるでしょ」
とミネーナが言う。
いやらしい顔かはともかくとして二人ともかなりの美人だ。
リックが心惑わされてしまうのもわかる。
ジャネットとアナスタシアは映像の中でミネーナのバッグにそっと近付いていく。
そして次の瞬間、
「あっ入れた! 見た今のっ? わたしのバッグの中に財布を入れたわよこいつらっ」
ジャネットが二人が寝ているのを確認している間にアナスタシアが財布をミネーナのバッグに入れる瞬間がはっきりと映し出されていた。
「やっぱりジャネットとアナスタシアだったのね、ムカつく~……アイリーンって言ったっけあんた。この映像わたしを牢屋に入れた奴らにも見せたいわ、もうちょっと付き合ってくれる」
「うん」
この後、牢屋番にこの映像を見せさらにミネーナを捕まえた人たちにも集まってもらい映像を確認してもらったところミネーナは無事無罪放免となったのであった。
逆にジャネットとアナスタシアは勇者のパーティーを追われ大陸全土に指名手配された。
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