第55話 カルツェッリの裏の顔
マイクを持った男にあおられつい目立つ行動をとってしまった。
俺は反省しつつアイリーンと二人、ジョパン城の中庭にあったトイレの陰に移動した。
すると、
「お前、どうやって落としたんだよ?」
「これで将来安泰だな」
男たちの話し声が聞こえてきた。
どうやらトイレの裏側に何人かの男たちがいるようだ。
俺は盗み聞きする趣味はないのでその場を離れようとした。とその時、
「王女なんて世間知らずだから簡単だぜ」
と王女という単語に足が止まる。
しかもその声の主はちょっと前に聞いたばかりの声だった。
確か名前は……カルツェッリ。
「プルセラは初めて会った時からオレにメロメロだからな、もう王家を乗っ取るのも時間の問題だ。ひゃははっ」
さっき会った時とは口調も一人称も変わっている。
「でもよ、プルセラ王女はともかくジュエル王女はどうすんだよ」
「なーに、ジュエルは天然の箱入り娘だからどうにでもなるさ」
カルツェッリは俺が聞いているなんてことも知らずになおも話し続ける。
「今日の式典でサプライズプロポーズが成功すればオレは晴れて王族の仲間入りだ。そうなったらお前ら出世させてやるぜ」
「おおー、サンキューカルツェッリ!」
「期待してるぜ、カルツェッリ!」
「おい、あんまり大きな声出すなっ。誰かに聞かれたらどうすんだバカがっ」
カルツェッリの声がすぐ近くで聞こえた。
やばい、すぐそこまで来てる。
顔を覗かれたらみつかってしまう。
バッとカルツェッリがこっちを覗き見た。
だがすぐ目の前にいるはずの俺達には気付かず、
「誰もいねぇ」
と言って男たちのもとへ戻っていった。
なぜカルツェッリが俺たちに気付かなかったのか。
それは……俺とアイリーンの体が透明になっていたからだった。
カルツェッリたちがいなくなったのを確認して俺は、
「アイリーン、お前がやったのか?」
隣にいるであろうアイリーンに話しかけた。
「うん」
声と同時にアイリーンの姿が浮かび上がった。
すると俺の姿も元に戻る。
「お前透明になる魔法なんか使えたのか? 俺もそんな魔法使えないのに。すごいな」
「うん」
ちょっと誇らしげな顔をするアイリーン。
何はともあれ盗み聞きしていたことはバレずに済んだわけだが……。
さてどうするか。
プルセラ王女の想い人カルツェッリには裏の顔があったようだ。
「どうしたらいいと思う?」
「?」
アイリーンは首をひねる。
うーん、子どもに訊いても仕方がないか。
ドーン! ドーン! ドーン!
その時花火が上がった。
ジョパン国王即位三十周年の記念式典が始まったようだ。
当然今頃はジュエル王女もプルセラ王女も式に参列しているはずだ。
「プルセラ王女か……」
……いやいや、他人の恋愛に口出すのはどうなんだろう。
うん、俺が踏み込んでいい問題じゃないな。俺には関係ないことだ。そうだそうだ。
プルセラ王女が誰とどうなろうが、カルツェッリがプルセラ王女を利用して王族になろうが俺には関係のないこと――
「ほんとに?」
アイリーンが突然口を開いた。
「え……」
「ほんとにそう思ってる?」
アイリーンが俺のズボンのすそを掴み、つぶらな瞳で見上げてくる。
「……お前もしかして俺の心を読んだのか?」
「……」
何も答えない。
ドーン! ドーン! ドーン!
また花火が上がった。
今の花火はなんの花火だ?
まさかカルツェッリの言ってたサプライズプロポーズとやらの花火じゃ……?
「……まったくっ」
俺は次の瞬間、式典会場であるジョパン城前へと駆け出していた。
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