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追放された大魔法導士は辺境の地でスローライフを満喫する ~特Aランクの最強魔法使い~  作者: シオヤマ琴
第一章

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第32話 動いた石像

石像が剣を振りかぶりながらこっちに向かってジャンプしてきた。


ドスーン!


棺を飛び越えて俺たちの前に剣を振り下ろしながら着地する。

「うあっぶねっ」

ギリギリのところで剣には当たらなかったがもう少しで死んでいた。


「な、なんなんだこいつはっ!?」

プルセラ王女が声を震わしながら言う。


「わかりませんよ。プルセラ王女は知らないんですかっ?」

「知らないから訊いてるんだろうがっ」


石像はまた剣を振りかぶった。


「とにかく逃げますよっ」

「なんでだっ。倒せよ、お前強いんだろっ」

「だってこいつモンスターじゃないですよっ」

むしろ棺を守っていたようにすら思える。


俺はプルセラ王女の手を取るともと来た道を走った。


後ろを確認すると石像は走れないようでドスーン、ドスーンとジャンプしながら追ってきている。


「おい、あいつ追ってくるぞっ」

「わかってますよ」


狭い通路をジャンプしながら追いかけてくる石像だったが、通路は入り口に行くほど狭くなっていたためズズンッと壁に挟まり動けなくなった。


俺たちはその間に外に避難した。


「はぁっ、はぁっ、王女を走らせやがって、お前という奴は……」

「はぁっ……逃げ切れたんだからいいじゃないですか」

膝に手を置き息を整える。


「ふぅっ……あっついな、まったく」

額の汗をドレスの袖で拭うとプルセラ王女はスカートをばさばさっとめくる。

白い脚が太ももまであらわになる。


「ちょっと、王女なんだからはしたないことしないでくださいよ」

「暑いんだからしょうがないだろ。もとはといえばお前があの石像を倒さないから悪いんだぞっ」

「だからさっきも言いましたけど――」


ドゴン!


王家の墓の中から音がした。


「おい、今のなんの音だ?」

「さあ?」

「さあ? だと。役立たずめ……嫌な予感がするのは私だけか?」


すると、


ドガーン!


狭い通路を無理矢理破壊して石像が飛び出してきた。


「うわっやっぱり、また来たぞっ」

プルセラ王女は声を上げる。


「今度こそあいつを倒せスタンス、これは命令だ。やらないなら報酬は払わないからなっ」

「なっ……わかりましたよ」


そう言うと俺は手をクロスさせ、


「ウインドカッター!」


風の刃を放った。

十字型の風の刃が石像めがけて飛んでいく。


これで石像は四分割になるはずだ。

そう確信した。が、石像に当たる寸前で風の刃はばしゅんとかき消えた。


「何してるんだ、お前っ。手加減してる場合かっ」

「いや、手加減とかではなくて……あいつ魔法を無効化できるっぽいです」

「なんだとっ!?」


魔法無効化の特性を持つモンスターというものはまれにいる。

そういうモンスターは魔法が一切効かないので物理攻撃で倒すしかないのだがあいにく俺は非力な魔法使いだからそういう相手はまさに天敵なのだ。


「お前の攻撃は効かないってことかっ? じゃあどうするつもりだスタンスっ」

「そうですね……」

とりあえず……。


「アースクエイク!」

俺が唱えると石像の足元が崩壊し石像が地中に埋まる。


「おお! やったのか?」

「いえ、ただの時間稼ぎです」

「時間稼ぎっ? じゃあやっぱりお前には倒せないのかっ?」

「もう少し時間をもらえれば多分何とかなると思います、けど……」

「けどなんだ?」

不安そうに言うプルセラ王女を残して俺は「スカイハイ!」と唱え空に飛び上がった。


「あっ、おいこらっ。私を置いて逃げるのかっ!」

「そうではなくて少し時間が必要なんです」

「えっ、何? よく聞こえないぞっ!」


プルセラ王女が何か叫んでいるが俺は気にせず胸の前で手を合わせ、


「ダブルアクセル!」


と呪文を唱える。


この魔法は魔力を体の表面に集中させて纏い身体能力を高めるものなのだが集中するのに時間がかかってしまうのが難点なのだ。


「おいこら、下りてこいバカ者っ! お前は私の護衛役だろうがっ!」


しかもこの魔法、発動までの溜めの間は目をつぶってないといけない。

だからいったん空中に避難したのだ。決してプルセラ王女を見捨てたわけではない。

むしろ助けるためにこうやっているというのに、


「スタンス、お前はクビだっ! 報酬なんか絶対払ってやらないからなっ!」


などとプルセラ王女は大声を上げながら石像から逃げ回っているようだった。


「死んだら化けて出てやるぞっ!」

「もうすぐですから頑張ってください!」

「何がだーっ!」



☆ ☆ ☆



俺はカッと目を見開く。

「よしっ」

魔力を体に纏った俺は石像に追われているプルセラ王女の後ろに瞬時に移動すると振り下ろされた剣を片手で受け止めた。


「お待たせしました。プルセラ王女」

振り返って言う。


「お、お前……今まで何してたんだこらっ!」

俺の背中をどすどす殴ってくるプルセラ王女。

身体強化しているから全然痛くない。


俺は掴んだ剣を上に持ち上げる。すると剣ごと石像も持ち上がった。

俺はそのまま思い切り剣をびゅんと振り下ろした。

石像が剣から手を放し王家の墓に吹っ飛んでいき激突する。

がらがらと音を立てて崩れる王家の墓。


石像は再び立ち上がろうとしたが地面に前のめりに倒れると一切動かなくなった。


俺は石像が持っていた剣を地面に投げ捨てる。

「大丈夫でしたか? プルセラ王女」

「あ、ああ、ありがと……って死ぬとこだったぞ、もっと早く助けろっ!」

胸をばすばすどつく。もちろん痛くはない。


「いや、だからそのために――」

「報酬はやらん!」

「えっちょっと、それは話が違うでしょう」

「知るかっ!」

プルセラ王女は俺を置いてずんずんと歩いていく。


この後一応報酬はもらえたのだが、壊した王家の墓の修繕費用に金貨百枚を請求された俺は結局収支プラマイゼロで終わった。

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