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第3話 続・夜の訪問者

十分後。


お互いに正座をして向き合うと、

「取り乱してすみませんでした」

「いや、俺の方こそ風呂覗いたり自分の家だとか言って……まあとにかくいろいろ悪かった」

お互い冷静になって話をした結果、この家は目の前の女性フローラの自宅だということがわかった。

見た感じ俺と同い年くらいか。長い黒髪と露出の少なめな服装から清楚な印象を受ける。


「デボラさんがこの家の人間はもう帰ってこないから住んでいいよって言うから勝手に住まわせてもらってたんだ」

「あ~……デボラさんですか。確かに私この村を出ていく時デボラさんにそんなようなことを言いました」

宙を見上げながら思い出すように喋るフローラ。


「あの時は本当にもうこの村には帰ってこないつもりだったんです。でも向こうでちょっと問題が起きてしまって……」

「問題?」

「あ、気にしないでください。ここまでくればもう大丈夫なはずですから」

フローラは可愛らしく手をぱたぱたと振った。


「そっか……じゃあ俺そろそろ出ていくよ」

立ち上がると、

「スタンスさんでしたっけ? 行くところはあるんですか?」

俺を見上げ心配そうに訊いてくる。


「いや、ないけど」

「う~ん、そうですか。それなら……」

フローラが口を動かす。


あれ?

もしかしてこの感じ、今夜だけなら泊まっていってもいいですよってパターンか?


「それなら村の真ん中辺りに小さいですけど宿屋があるのでそこに行ったらいいですよ」

とフローラ。


「……あ、そう。泊めてくれるとかじゃないんだ」

変に期待していたのでついぽろっと口に出す。


「え? だ、駄目に決まってるじゃないですかっ。若い男女が一緒の家に泊まるなんて! だ、大体私スタンスさんのことまだ何も知らないんですからねっ」

フローラはぶんぶんと首を大きく横に振って長い髪を揺らした。

いい匂いが俺の鼻孔をくすぐる。


「わかったよ。ちょっと言ってみただけだって、俺もそこまで厚かましくはないよ」

「そ、それならいいですけど」


うーん、確かお金なら魔王退治の旅の途中に稼いだ分がまだ少し残っていたはず。

とりあえず今晩は宿屋に泊まって住むところは明日考えるとするか。



「邪魔したな」

「いいえ。おやすみなさい」

フローラに玄関まで見送ってもらいドアに手をかけようとしたその時だった。


「たのもーう!」


男の声がした途端いきなり外からドアが開かれた。


「おわっ、びっくりしたっ」

「迎えに来たよ、愛しのフローラ!」


俺の目の前には金色の長い髪をなびかせた爽やかイケメンがポーズを決めて立っていた。

手には花束を持っている。


「な、なんであなたがここに……!」

フローラはその男を見て固まった。


「え、誰?」

「失礼、でくのぼうくん。ちょっとどいてくれたまえ」

「誰がでくのぼうだ」

路傍の石ころ程度にしか見えていない俺を手でどかすと男はフローラの前にひざまずく。


「おお、愛しのフローラ。僕と結婚してくれたまえ」

「い、嫌ですって断ったじゃないですかっ。なんでこんなところまで追ってくるんですかっ」

「それはきみを愛しているからに決まっているじゃないか」

「私は愛していませんっ」

美男美女がまるでメロドラマのように言い合っている。


「なあフローラ、こいつ誰なんだ? 彼氏か?」

「か、彼氏なわけないじゃないですかっ」

「フローラだってっ!? 僕のフローラを呼び捨てにするきみこそ一体誰なんだ!」

男は立ち上がるとぐっと顔を寄せてきた。

近くで見るとますますイケメンだなこいつ……ちょっといけ好かない。


「俺の名前はスタンスだ。もう帰るところだから後は二人でやってくれ」

「待ちたまえスタンスくん!」

「スタンスさん待ってください!」

同時に二人から腕を掴まれる。


「なんだよ」


するとフローラは意を決したように小さくこくんとうなずくと俺に抱きついた。


「!?」

「なっ!? フローラ!? 何をしているんだい、フローラ! 早くその男から離れるんだ! そんな男とくっついたらきみがけがれてしまうじゃないか!」

「おい、こら」

「いいえ、離れません! レアルさん、あなたと結婚もしません!」

「なぜなんだい、フローラ! 僕はこんなにもきみを愛しているというのに!」

レアルと呼ばれた男は手を差し出し芝居じみたセリフを吐く。


「な、なぜなら……私は、このスタンスさんとお付き合いしているからですっ!」

「な、なんだって!?」

雷に打たれたようなリアクションをとるレアル。


ふらふらとよろめきながら、

「そ、それは本当なのかい、スタンスくん?」

立っているのがやっとという感じで訊ねてくる。


「いや……」

そんなことはないと言おうと思ったのだが俺に抱きついているフローラの腕があまりにも震えていたので、

「……ああ、本当だ」

自然と嘘をついていた。


「そうかい……よくわかったよ。では決闘だ!」

言いながらレアルは身に着けていたシルクの手袋を外すと俺の顔に投げつけてきた。


「いてっ」

「フローラをかけて勝負をしようじゃないか。勝った方はフローラと結婚する。負けた方は潔く身を引く」

「はい? なんでそうなるんだ」

「男に二言はないからね。早速表に出て勝負だ」

「いやいや、俺はやるなんて一言も言ってないぞ。っておいっ」


俺の言葉を無視してレアルは外に出ていってしまった。

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