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第5話 ギルド“妖精の園”

あの後、レミアに何か余計なこと言ったら殺すと脅されたイノリは、

ミレアと共に静かに冒険者ギルドを目指す。


「イノリ姉さん、ギルド内で余計なことしないでね」


ミレアはイノリを睨み、心配そうにため息を漏らす。


なんだろう。

私はそんなに信用がないだろうか。

ミレアをここまで守り抜いたのだから、

もっと信用してくれてもいいだろうに。


イノリはすっかり忘れているが、

助けた分をセクハラで相殺されているのだ。

それどころか、マイナスになっている。


「そんなことを言われなくてもわかっているよ」


だがイノリのその言葉に、眉を寄せるミレア。


ミレアの中でのイノリの評価は、

戦闘に関しては自分では足元にも及ばないと思い、

日常生活ではただの変態であり、

定期的に何かしらやらかすと思っているのだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――

冒険者ギルドに入ると、

二人は周りの冒険者たちから、

いやらしい目で舐め回すように見つめられる。


イノリは視線を不快に感じ、

周りに殺気を浴びせる。


イノリは長年の修行の末に殺気を自由自在に操ることができるようになったのだ。


「あの……イノリ姉さん……落ち着いて」


ミレアも殺気に当てられ、

小鹿のように足を震わせながら、

イノリに止めるよう懇願する。


「ごめんね。大丈夫?」


他の冒険者が地面に座り込む中、

イノリはミレアの身体を支えてあげる。

もちろん、尻を触ることも忘れずに……


「この変態!」


ミレアはイノリの頬にビンタをするが、

イノリは全くのノーダメージである。


イノリの最強の防御力をミレアでは突破できないのだ。

イノリの攻撃力、防御力共に、

この世界において最強クラスなので、

イノリに攻撃してダメージを与えることも、

イノリの攻撃を防ぐことも、

一握りの存在だけが可能なのである。


「ミレア、あの受付ぽいところで登録すればいいの」


「うん、あそこで登録できるよ」


イノリとミレアは仲良く一つの受付へと向かう。


「あの冒険者は危険な商売なので女性の方は遠慮させていただきます」


えっ、冒険者ギルドって拒否するの?

なんで、おかしいよ。

女性差別反対!


「なにそれ、差別する気?」


イノリは受付嬢を睨む。


「あの差別ではなく。

 女性の方が傷つくと方々から苦情の嵐が来るので、

 女性の方の登録は受け付けていないのです」


イノリは愕然とした。


私の修行したことがここでは生かせない。

ならば、私は何をして生きていけばいいのだろう。

お先、真っ暗である。


「あの絶望した顔をしないでください。

 女性の方には女性向けギルドがあるのです。

 そちらに行けば、あなたたちでも登録できます。」


なるほど女性向けのギルドがあるのか。

よかった。

これで路頭に迷わなくて済む。


「それで、ギルド名はなんですか?」


「ギルド名は妖精の園、冒険者ギルドの隣にあります」


イノリはしかたなく、

冒険者ギルドから妖精の園の移動する。


「いらっしゃいませ。妖精の園にようこそ。

 どのようなご用件でしょうか」


「登録するために来ました」


あのミレアさん。

冒険者ギルドが女性禁止だったのはしょうがないから、

いい加減しゃべらないのかな?

あぁ、まだダメのようだ。


「そうですか。それではこちらの紙に必要事項を書いてください」


イノリは何となく適当に書き、

ミレアは無言で丁寧に書く。


受付嬢さんは紙を後ろに持っていき、

何やら偉そうな人と話し合っている。


「イノリ様、ミレア様、おめでとうございます。

 見事、審査の結果、合格になります」


おぉ、合格かぁ。

よかったこれで異世界無双できる。

夢が叶ったようで何よりだ。


だがイノリは、知らなかった。

神様が力でどうにかなるような世界に、

罰として最強のスペックを与え、

送り出して罰を与えるわけがないことに。


「それではお二人に紹介できる仕事がこちらになります」


受付嬢さんから渡された紙を確認するとイノリは固まった。

書いてあるのは、パン屋、花屋、菓子屋、料理屋、受付など非戦闘職ばかりである。

というか戦闘職は一つもない。


「あの、これ戦闘職がないんですけど」


「女性が戦うはずないですよ。

 それで、どうするんですか?

 どの職業に決めますか?

 短期でも働けますので様々な職業を経験するのもよし、

 一つの仕事を限界まで極めるのもよしです」


そう神様は生きるとは何かを考えさせるために、

魔物の命を奪う必要がない世界を選んで、

イノリを転生させたのだ。


この世界では男性が魔物討伐を始めとした危険な仕事をし、

女性が安全な仕事をして家庭を守るのが常識なのだ。


女性を魔物と戦わせた場合、

それを命じたものは全方面から社会的に抹殺されるのだ。


選ばなければ生きていけない。

ならば、どうするべきか。


「それなら、公爵家のメイドでお願いします」


こうして、イノリとミレアは公爵家のメイドの面接に行くことになるのだ。


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