第3話 レミアの両親は普通に生きていました(引っ越しです)
私はレミアを救いたい。
でも、どうすればいいのだろうか。
あの、門番さんから聞いた真実を言わなければいけないのはわかっている。
しかし、今の悲しみを抱えたレミアもなかなかに良い。
もしかするとこれはチャンスではないだろうか。
昔レミアの水浴び中に髪の毛の匂いを嗅いだ時には、
イノリ姉さん気持ち悪いと言われてから、
なかなか手を出せなかった。
しかし、今この瞬間は心の隙間がある、
この瞬間ならイケるのはないだろうか。
あの時、門番からイノリは手書きのメモを貰っていた。
「冗談だったけど言い出せないから、
謝っといて、あっ両親もグルね(笑)」と書いてあったのだ。
ふざけたメモと両親の引っ越し先の地図を貰ったイノリは、
メモの存在を隠しながらレミアの両親のもとを目指す。
「ねぇ、イノリ姉さん。
今からどこに行くの。
それに門番から貰ったメモは何?」
イノリは冷や汗が止まらず、
レミアから視線を逸らす。
「ねぇ、イノリ姉さん、
メモを見せてくれるかな?」
レミアさん、瞳孔開いたまま脅すの止めません?
あ、いえ、逆らいませんとも。
どうぞ、こちらがメモです。
イノリは大人しく、メモをレミアに手渡す。
メモを見て固まるレミア。
「あんのぉおおおおクソ両親がぁああああああ!!!
あの門番も後でぶっころしてやるぅううううううう!!!」
レミアの怒りはすさまじくイノリも黙って自分に被害が来ないように、
影を薄くして逃げ切ろうとする。
「ねぇ、イノリ姉さん?」
レミアさん、その地の底から響き渡るような声止めません?
「はい、なんでしょうか?」
イノリは空気を察し往来で正座をする。
「これ知っていたんだよね?」
はい、ごめんなさい。
でも、私にはいろいろと事情があったんです。
「それには、事情が……」
「どうせエッチなことでしょ!」
「あれレミア、なんで知っているの?」
なんで、だろうか?
今まで私は完璧にまじめなお姉さんを演じてきたはず。
おかしい、この答えはおかしい。
「私にしてきたセクハラの数々は忘れないよ?」
あれ、すべてバレていた。
なんで?
あれ、私のまじめキャラの意味は?
いや、これは鎌をかけているのかもしれない。
「なんのことレミア?」
ここはシラを切るのだ。
そう、なんとか逃げ切らなければ。
「はぁあああ!
何言っているの、
私の髪の毛の匂いを嗅いだり、
私の脱いだ服を嗅いだり、
私のトイレを覗いたり、
私の水浴びを覗いたり、
いろいろとセクハラをしてきたでしょ!」
はい、言い返せません。
もう、まじめなお姉さんキャラは止めます。
これは、決定事項です。
「それじゃ、レミアの家に向かおう」
「あっ、変態が誤魔化した」
イノリは責めるレミアから目を逸らし、
レミアの両親の家へ向かうのだった。