プロローグ
イノリは屋上から地面を俯瞰する。
夕焼けが彼女を照らし、
その美しい顔を照らす。
あぁ、私の人生は無価値だったのだ。
だから飛ぶのだ。
ここから飛び降りたら私の人生に意味はできるのか。
いや出来ないだろう。
(誰か……助けて……苦しい)
誰かに助けを求めるが誰も助けにはこない。
それもそのはずだ。
ここは学校の屋上ではない。
廃工場の屋上なのだ。
あぁ、できればもう少し幸せに生きたかったな。
この人生には価値が見いだせなかった。
なぜならば私は無価値だから。
だれからも愛されることなく、
だれも愛してこなかった。
父や母とも上手くいかず、
誰からも必要とされてこなかった。
ならば、この人生は間違いなく無価値だろう。
あぁ、死ぬとはこんなにも寂しいものなのか。
むなしいものだ。
イノリは柵のない屋上から飛び降りるために一歩踏み出す。
すると、心に不安がよぎる。
死んだらどうなるのだろうか。
死んだら無なのだろうか。
転生などはしないだろうか
もし新たな人生があるとしたら幸せになりたいな。
(あぁ、人生の最後に一人ですか。
私らしい最後ですね。)
そして、彼女は飛んだ。
―――――――――――――――――――――――――――――
現在、私はバラの咲き誇る庭園で正座をさせられています。
不思議ですね。
あの時、たしかに死んだはずなのに。
あの落下する感覚は確かにほんもののはずだった。
「聞いていますか、私はあなたのように命を無駄遣いする人が嫌いです」
「わたしにも……事情が……」
神様は言い訳を許すはずもなく。
私に現実を突きつける。
「たしかにあなたの家族は上手くいっていなかった。
しかし、ご両親は確かにあなたを愛していた。
それなのにあなたは命を無駄にした。
だから、あなたには罰を与えます」
なぜ、苦しい思いをした私が罰を受けねばならないのだろうか。
理不尽すぎる、死したら救われると思った私がバカだった。
もっと両親とも話し合って、
溝を埋めていけばよかった。
あぁ、私はバカだ。
イノリは涙を静かに流す。
「あぁ、やっと理解したようですね。
ですので、あなたに罪を償うチャンスを与えます。
最後の審判の時に生きるとは何か、あなたの答えをください。」
神様はそういうと、私の意識はそこで途絶えた。




