カリア
「……ねぇ、ルーナ。」
「どうした?」
「……何で、この子を連れてきたの?」
エラは俺を見ながら無表情で呆れていた。
俺は少女を抱えたまま、[夜風・闇夜纏]を使い、空を飛んで寮まで帰ってきたのだ。
「俺は基本的に人を殺すことはしたくない。それに……ガキを見捨てるほど外道に堕ちたつもりはない。」
「……わかった。」
取りあえず寝かせてあるが……どうしたものか……。
まず、体の衰弱が酷い。呼吸をしているのも精一杯の有り様だ。
更に大雑把に癒したものの、体の至るところに切りつけられたような傷痕が残っている。
「……取りあえず、栄養価の高そうなもので食べやすく、消化にいいものを作ってくる。」
「……頼む。」
エラは部屋の扉を開け、外に出た。
兎に角、まずはエラが食事を作って食べさせ、安静にさせておくことが必要だな。
「……ルーナ様。」
「お、アースリアか。」
扉を開け、入ってきたのはアースリアだった。
「ルーナ様が王都に行かれたとは聞いていましたが……その少女は?」
「糞聖職者の教会の地下室で見つけた。こいつ以外は全員死んでた。」
「そう……ですか……。」
アースリアはうつむき、少し悲しそうな声音をだす。
いくら復讐者でも人にとって大切な感情の一つである『同情』の心は削ぎ落とされた感情でもきちんと残っているものだ。俺のようにな。
「正直に言っても構いませんか?」
「別に構わないだろ?」
「……胸糞悪い。」
淡々とした言葉。けど、怒りを通り越して感情がなくなるほどの激情。
アースリアの奴、俺以上に怒っていやがる。この士気の高さなら復讐の時によい仕事をしてくれそうだ。
「俺も同じだ。あの糞聖職者はちゃんと絶望させないとな。」
「……作ってきたよ。」
「エラ様……私が持っていくと言ってますのに……。」
「……別にいい。」
俺とアースリアが復讐の話をしてるとき、エラと『ゴースト』の少女が入ってきた。
『ゴースト』の少女はコウモリのような黒い翼に先の尖った長い尻尾をメイド服に巻き付け、赤と黒の混じった目をしている。
身長はアースリアと同じくらいか。てか、何で魔族の奴らはメイド服を着てるんだ?デフォなの?流行りなの?
「……食べさせないと。」
「エラ様、今度こそ私がやらせてもらいます!そういう仕事は主であるエラ様でなく、私がやらないと!」
「えー……。」
「ルーナ様も言ってください!このダメ兎、本当に何でもかんでも私の仕事を自分でやってしまうのです!私だって働きたいのに!!」
まさかのワーカーホリック!?
「(ルーナ様、ゴーストは基本的に仕事が好きな方が多いです。)」
「(……なんだそりゃ。)」
種族として仕事大好きなのかよ……。てか、心を読むな。
「ま、どっちでもいいんじゃね?」
「……(放心)」
あ、『ゴースト』が気絶した。俺のベッドは『エンジェル』が使ってるからエラのベッドを使お。
「……テレサはいつもは大人しいけど……仕事を奪われるといつもこう。」
「へ、へぇ……。」
取りあえず、食べさせるか。
「作ってきたものを渡してくれ。」
「……わかった。」
エラから作ってきたものをとり、中身を確認する。
作ってきたものは野菜のスープか。野菜を細かく刻み、肉もとろとろになるまで煮込んでいる。案外、エラは料理が好きなのかな?
「食えるか?」
「……う……ん。」
匂いで起きたかのか『エンジェル』の少女は少し瞼を開け、肯定する。
スプーンによそって、っと。
「ほい、あーん。」
口を開けた少女の口に俺はスプーンを入れ、スープを流し入れる。そのまま少女は飲み込んだ。
「……もっ……と。」
「……あぁ。」
そのまま俺がスープを少女の口に入れ、少女が飲むという工程を何度もしていくうちにスープが全てなくなり、少女は再び眠りについた。
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「ん……?」
お、起きたな。
今は深夜、エラは隣のベッドで眠ってるし、アースリアやテレサは元の部屋に戻った。
「ここは……?」
「あー、大丈夫か?」
「えっ……?あなたは誰?」
ま、どこよりも誰のほうが気になるよな。
「俺はルーナ。」
「私はカリア。トリスタン様の奴隷……あれ?首輪は?」
「ん?あぁ、位置識別残して外した。ま、簡単に言えばお前はもう奴隷じゃないってことだ。」
「……えっ?」
カリアは事実が頭が理解できず、しばらくフリーズした後、声を出さず号泣し始めた。
「おい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫。とても……とても嬉しくて……。」
「……お前の姉の方はどうした?」
情報屋の話が確かなら、カリアにはクリアという姉がいたはずだ。
「お姉ちゃんは……私の身代わりに……あの男に付き従っている。」
「付き従っている?」
「私を守る為に……反抗しない代わりに……私に手を出さない。そんなことを……。」
カリアは涙を流しながら呟いた。
手を出さない……。糞聖職者トリスタンはそれを都合良く解釈して何もしなかった。食事すらとらせなかったのか……。
「あの……助けてもらってありがたいのですが……。頼みが……。」
ん?……あぁ、予想できるけどな。
「お姉ちゃんを……助けて……!」
「構わないよ。」
「……えっ?」
「だって、俺の目的である糞聖職者トリスタンを始末するためには、なるべく不確定要素を入れておきたくないからな。」
余りにも予想外だったらしく、カリアは驚いた顔をした。
元々、アースリアに助け出させる予定だったからな。まぁ、確実に生かすってことだからアースリアに伝えておかないとな。
「トリスタンを始末……それだと、勇者様がたに目をつけられるのでは……?」
「俺らの目的は勇者どもへの復讐。だから、俺らにとっては問題ない。」
「……お願い、いたします……。」
伝え終わった後、カリア少し笑顔を浮かべ、力が抜けたようにベッドに倒れこんだ。
極度の安心と癒えきってない体の疲れから眠ってしまったようだな。
俺も、床にでも寝転がって眠るか。




