1 独りだけの部屋
えっと……とりあえず、書き溜めが無くなり次第、更新は止まります。
内容に区切りがつくまでは、さっさと投稿します。以上です。
少年は二十歳となった日、ある世界に終わりを告げる決意をした。その世界の名は『アース』。子どもの頃から今日に至るまでずっと創り続けてきたゲームであり、何度も星々の衝突に失敗し、試行を重ね、苦難の末に行き着いた少年だけの箱庭。学校の友人よりも大切な自分の子どものような存在であり、半身のような存在でもあるゲーム。
これは少年によって、データを消去されるゲームの世界の物語。
多様な生物が生息し、人という二足歩行の動物が文明を築く箱庭は……。
「今までありがとう。最後まで見届けるからね」
泣きべそをかく少年の手によって、消去される。
***
二〇一九年十一月三日。夜。東京タワー。
今、俺の目の前に日本中の、いや世界中の人が求めるものがある。
直径百メートル、太陽のように眩しく目を閉じてしまいそうになるほど輝く奇跡の光玉。これを俺が手にすれば望んでも叶えられなかった、願うことすら馬鹿馬鹿しく、他人が聞けば現実から逃げていると責められてしまうかもしれない願い。その願いが叶うのだ。
『コア』。どんな願いでも叶えてくれる唯一無二の光玉。ある人は日本を救うためにこの光玉を求めた。ある人は自分だけの理想郷を欲して光玉を求めた。
でも。
俺は今、そんな光玉を私利私欲ために使ってしまおうとしている。
許してもらえるなんて思わないけど、俺は世界平和なんかより、地位や名誉や権力なんかよりも叶えたい願いがある。だから、それを叶えるためにこの光玉に願おう。
「俺の願いは――――」
***
二〇一九年十月二十五日。
その日、地球に生きる全人類が地獄の門をくぐった。もちろん実際に地獄の門が現れて全員がそこを通ったという話ではない。これは比喩の話で、それほどに人類にとって認めがたいものであった。
その日を境に地球は発展の歴史を紡ぐことをやめ、ただただ一日でも長く生き残るため、全力を尽くす時代へと変わってしまった。
とある部屋。灯りも点けることなく、カーテンを閉め切った暗い部屋。テレビの光だけがあった。
『ニュースです。東京の上空から直径十五センチほどの光の玉が降り注いでおり、気象庁は原因を探っていますが手がかりは掴めていないようです』
『緊急のニュースが入りました! ただいま衛星から映像が送られてきました! 信じがたいことですがオーストラリア大陸から巨大な足が生え、自立歩行を始めました! ……というかこれもう走ってないっ!』
『また緊急のニュースです! ユーラシア大陸に生きる人間が一斉に無気力症になりました……なによこれ~』
『……また緊急のニュースです。アフリカ大陸では人が空へと落ちていき……どういうこと?』
『また……です。南アメリカ大陸では眼球や腕が増えた、家具が全部増えていたといった様々なものが増える事態が起きています』
『もう一つ……です。北アメリカ大陸ではグリフォンやドラゴン、鬼や吸血鬼などが現れて人に危害を及ぼしているようで……もう意味わかんない。以上でニュースを終わります』
ニュースが終わってからも政府からの緊急会見などが行われていたけれど、その部屋の主はぼんやりと天井を見つめるだけだった。
ジャージ姿で部屋の壁に寄りかかるその人物は少年だった。目の下には隈ができ、生気のない目をしていた。その目が部屋の隅に見る。
「沖人は運動得意でしょ? なら私も頑張らないとね! 毎日ランニングやったるどー!」
少年が愛する人の声がしたような気がした。でも、そこに彼女がいるはずはなかった。そのことが少年が一番知っていた。
「いるわけないだろう。死んだんだから」
少年が愛した少女は死んだ。死因は交通事故。少年はこの世で最も嫌いな死因。
少女は貧血で横断歩道で動けなくなり、そこへ居眠り運転をしていたトラックの運転手が衝突した。
即死だった。
それ以降、少年はずっと部屋に引きこもっていた。少女の葬式すら耐えきれず、行かなかった。
今の少年にはニュースに驚いていられるほど、世間に関心がなかった。そんなことはもうどうでもいいことだった。
「私はね、好きで読書ばかりのインドア派やってるわけじゃないのよ。運動できる人とか憧れるし、私もそうなれたらって思うんだけど……私の体は弱いから」
彼女がいない世界なんてどうでもいい。彼女の笑顔があったから俺の世界は彩り豊かで、毎日が新鮮で、明日が来るのが楽しみだった。
「でもね、旅番組は大好きなんだ! 私の体力じゃあ旅なんて夢のまた夢だけど、だからこそ行ってみたい! 沖人と一緒にっ!」
運動音痴で、身体を動かしたらすぐに寝込むのような病弱なくせして、誰よりも明るい性格だった。休み時間には騒ぎすぎて次の授業には出席せずに保健室に休みに行ったりするような女の子だった。
でも、俺にはそんな彼女を見るのが好きだった。
どこにいても、何をしても彼女の幻影を見る。
少年にとってはそれが何よりも辛く、悪夢のようだった。
「もういないってわかってるからさっ、頼むから消えてくれよっ!」
少年は頭を抱える。少年にとって、今の世界は地獄のようだった。明日など来てほしくなかった。
その部屋に未だ救いなし。
次話は1時です。




