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思考加速だけの無能者  作者: 米っ子
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鑑定の儀

 貴族とのお披露目が終わった僕らは疲れていた。制服のまま受けたのだが、料理を食べる時間よりも貴族に話しかけられ、それに受け答えしている時間の方が多かった。

 お風呂に入りますかと聞かれたので、喜んで入ると言った。ま、お湯張りじゃなくてサウナだったけど。

 で、その後は歯ブラシをどうするかと聞かれ、動物の毛で出来た物と、柔らかい木を噛んで磨くという二つのどちらかを聞かれたりした。取り敢えず分からないから、高級そうな動物の毛にして磨いた。

 そんな事をし終わってベットに転がり込む。


「では、お休みなさい」


 メイドはそう言ってお辞儀をして部屋から出て行く。

 その時にしっかりと部屋の明かりも消していった。


 暫くして、目が暗闇に慣れてきた頃に改めて部屋を確認する。

 部屋の中には暖炉が付いている。今の時期は冬ではないのか寒くは無いため付いていない。

 窓はガラスで出来ているが、全てが透明で出来ている訳ではなく、気泡が少し交じっているけれども、それはそれで味のような物を感じる。

 机と椅子は職人の手で作られ磨かれているため琥珀のような美しさを何故だか感じる。

 ベットは質が悪いがそれでも、綿でシーツも出来ているし、スプリングではないが身体の体重を補ってくれる。材料は何だか分からないが、新しい感触に今更だけど少し驚いてしまう。

 部屋はここまでもかと思うほど大理石で出来ている。床には動物の毛皮が敷いてあり、足が冷えないようにだろう。


 そんな観察をしていると眠気がどんどん這い出てくる。思考も覚束なくなり意識を手放した。



 朝日が窓から差し込んで来て、その光で目が覚める。

 久しぶりに健康的な寝起きをして頭がいつもよりも冴えているような気がする。


「シュンヤ様起きていらっしゃいますか?」


 昨日のメイドが扉を3回ノックして聞いてくる。

 僕は間延びした声で返事をすると「入りますね」と言って入ってきた。


「お食事の時間となりました、着替えの準備などは必要でしょうか?」


 寝る前にローブに着替えていたため、これは着替えなくてはいけないだろう。


「着替えの用意をお願いします」


 おずおずといった感じで僕はそうお願いする。

 はいと返事をして貴族のような服を用意してくれた。


「えっと、これがこの世界で普通の服なの?」


 貴族のような服、それは派手目に出来ていたので、自分に合わないと思いそんなことを言って変えて貰おうとする。


「はい、()()()()貴族の間では普通です」


 どこか棘のあるような、いや、これは貴族は何でこんな物を着るのかといった表情だ。

 落ち着き目の服を持ってきて貰う事にする。だって、食事をするだけだからそこまで派手なのは要らないからだ。


「ごめんね、変えて貰ったりして」


「いえ、大丈夫です」


 用意してくれた服を着ていると手伝いに来てくれる。それを断ったが「叱られますので」と言われ、僕は渋々手伝って貰う。


「こちらになります」


 メイドさんに先導され歩いて行くと、これまた何人かが席に座っていた。話したことはあるけどそこまで仲が良いというわけではない人なので、友達が来るまでメイドと話をする。することはこの世界の常識についてや魔法やスキル、職業はあるのかなど、異世界の事についてだ。

 話を聞くと魔法やスキル職業まであるらしい。

 魔法は適正など関係なく、魔力量で扱える魔法が違ってくる。初級を魔法、中級を魔術、上級を魔導というらしい。

 職業は初級の職に誰でも就くことが出来、スキルなどですっ飛ばして就くことが出来ることもあるらしい。それは最上位の勇者が良い例らしい。

 スキルについては、職業に就くことや鍛錬することで手に入るスキルをコモンスキル。それが進化したのをハイスキル。それがまた進化したのをユニークスキル。更に進化したのをアルティメットスキル。それが更に進化したのをゴッズスキルと言うらしい。

 職業でスキルの伸びが違うらしいので、大抵は誰もが似たような構成になるという。


 そんな感じで話をしているとみんなが集まってきた。長いテーブルに椅子が備え付けられているため、お見合いのテーブルを長くしたように思えてきてしまう。当たり前だと思う、対面しながら食べるようなもんだから。


 王様が家臣を連れて入ってくる。王は上座の席に座り、神への感謝をして食べていた。

 僕たちはこれが異世界での頂きますなのだろうと思って神へ感謝して食べることにする。まあ、神という神などゲームで出てくるゼウスくらいしか思いつかないので、人によって感謝をする神は違うと思う。



 朝食を食べ終わったあとは鑑定の儀をするため、移動をさせられていた。だが、みんなの顔は昨日の疲れが取れているのと、自分が勇者になるのでは?と言いたげな顔をしていた。僕も少しワクワクしながら自分の番が来るのを待つ。

 一人、また一人と落ち込む様子を見せて部屋へと戻っていく。その光景を見てか、後方にいる僕らの熱気は熱くなっていく。


 委員長の番になった。みんなを取り仕切ってくれる優し彼女は何を手に入れるのだろうと、みんな興味の視線で確認する。その中には、勇者になれなくて少しふて腐れている者も見ていた。

 委員長のスキルを確認して、鑑定していた人の手が止まる。その顔にみんなは定番か?と、聞いていた話の通りになるのか期待している。


「賢者です!」


 その声は勇者ではないと安堵する者と、最上位の職業に就いたということを知り、喜ぶ者に分かれた。

 肝心の委員長は喜びの余り、固まっていた。

 我に返った委員長は喜んで部屋に戻っていった。その姿に再び心を奪われた人も少なからず居た。


 その後も鑑定は続いていく。喜ぶ者や落ち込む者、喜ばれる者、安堵する者など様々だった。

 最上位の職業ででたのは聖女、精霊王、覇王、炎の魔女、氷の魔女、パラディンといった感じで進んでいる。


 ついに僕の番になる。何が来るか楽しみにして終わるのを待つ。そして出たのが、思考加速だった。


「思考加速だけか」


 落ち込みながら歩いて行く。その直ぐ後ろで勇者と聞き振り返ると、副委員長が勇者に選ばれていた

 勇者が出てみんなは落ち込む者と、喜ぶ者に分かれた。男子と女子がその二つに分かれたと言っても良かった


 その後は速やかに終わっていった。

 最上位に就いても喜べない者もいたが、最上位に付けない者もいるためどんな顔をすればいいのか、最上位に選ばれなかった友達にどんな顔をすればいいか悩んでいた。

 このことが原因で差別と言えるような関係になるとは浮かれていた僕らは想像などしていなかった。いや、最上位のスキルを得たのが人格者だからそんな事はしないと、何処か頭の片隅で思っていたからなのかもしれない。

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