我等!諜報部隊!!
ここの世界の獣人は、人が獣の姿になれることを指します。
なので通常は普通に人間の姿で、半獣化した時の姿は手足や耳が媒体の獣になるという認識です。
今回はプロローグのみですので、シリーズ化してのろけ(笑)を物語にする予定です。
1.おれの仲間はスゴイんス!
おれの名前はドニ!かーちゃんもとーちゃんもアデリーペンギンなんだけど、じーちゃんがキングペンギンなんだって!
だからおれは所謂くぉーたー、ってやつで!
そんなことより聞いて欲しいことがあるんス!
おれは獣人王国の諜報部隊に入っていて、(諜報部隊ってだけで皆から尊敬されるんスよ!)その中の空上第一部隊に所属してるんス。
その空上第一部隊…長いッスね。略して空隊に同じく所属している先輩方が、とんでもなくかっこいいんスよー!
まず、隊長のユーゼンさん。
ユーゼンさんは鳥類のカラスって種類で、東の出身らしくて文字とかすっげー複雑なんス…
1度お名前を書いてもらって、何度も練習したからユーゼンさんの字だけはかけるんスよおれ!
あ、違う!脱線したッスね!
ユーゼンさんは、おれが最初部隊に入ったときは見向きもしてくれなくて、ろくに仕事もくれなかったんス。
でも、テキパキ仕事をこなす姿とか、指示を出してる姿とかがすっげークールで!
あと、ユーゼンさんは飛ぶときが一番キレッキレなんス!
真っ黒の綺麗な羽を伸ばして、射抜くように狙いを定めて、逃がさない!みたいな!
ふぉー!思い出しただけで興奮するッス!
ユーゼンさんみたいな大人になりたくて、ずっとついて回ってたら次第におれを見てくれるようになって、
仕事をしながら説明したり、ユーゼンさんについて教えてくれたりして!
だんだんおれとスキンシップが多くなって、この前なんか半獣姿のあの綺麗な羽を触らせてもらったんス!
あっナイショっスよ!ユーゼンさんとおれだけの秘密って言われてたんス!
ユーゼンさんの魅了は語り尽くせないけど、空隊のメンバーはまだいるんス!
二人目はらじえ、ラズ…らしゅ、えっと、ラジェーラさんって人で!
おれ、未だにラズさんの名前は発音できないんス…まだまだラズさんと特訓中で。
ちゃんと言えるまで、らじ、ラズエ、ら、さんの名前は本人の了承を得てラズさんて呼ばせてもらってるんス!
今でこそラズさんと仲良しなおれッスけど、最初は馬鹿にされまくって、ボコボコにされて追い返されるのが常だったんス。
おれ、キングペンギンの血が入ってるから、半獣の時首もとがオレンジ色になるんス。
だから、純血のハクトウワシであるラズさんから軽蔑されちゃってて。
それで、空も飛べないのに空隊に来て、頭が悪いおれをよく思ってなかったみたいなんス。
仕方がないんスけど、その時おれは空隊の先輩方に認めてもらいたくて、せめて沢山仕事を見て覚えようとおもって、ラズさんの後を三メートルくらい離れながらついていってたんス。(三メートル以内に入るとボコボコにされちゃう)
ラズさんは真面目な人で、ペンギンなのにくっつき虫だった俺を、舌打ちしながら仕事をして放っといてくれたんス。
でも、最初の1年くらいはすぐ飛んでいっちゃって、その時はどうしようもなかったッスけど…(1度渓谷?知らない場所に置いていかれた時は何日間か帰れなかったッス)
言葉を交わすどころか、おれを見るたびに軽蔑した表情を浮かべるのは堪えたんスけど、そんなの気にならないくらいラズさんはスゴイ人で!
まず、堂々とした半獣の姿!
伴侶とか、親しい人しかあんまり見せてくれない半獣の姿に、ラズさんはあまり気にせずなっていて、逆に大きくて男らしい立派な羽を皆に見せたいみたいで。
スパイ活動が多い他のメンバーとは違って、ラズさんは誰よりも大きな羽で青空を駆けて、囮やくなどを買って出る危険な仕事が多いんス!
でも、最後にしれっとおいしいとこを持っていったりしてユーゼンさんをよく怒らせてるッス。
そんなちゃっかりさんなラズさんスけど、ちゃんと優しいとこもあって、おれに始終冷たかったラズさんが、あるミッションをこなしているときにおれがヘマして殺されそうになっちゃって。
あ、死んじゃうって思ってたときにラズさんが助けに来てくれて!
おれもまさかラズさんが助けてくれるなんて思ってなくて!
だって、めちゃくちゃ嫌われてたし、仕事外のことは滅多にしないあのラズさんが。
その時のラズさんはいつものニヤッて笑う不遜な顔じゃなくて、黄金の瞳を細めてなにもかも面白くないって顔してたんス。
その後無言で捕まれて飛んで帰って。
(これが初めての飛行だった。)
他のメンバーに心配されながらなぜかベッドに投げられて。その時おれは大分怪我してたんスけど、それを気にせず骨が折れるんじゃないかってくらい抱き締めてきて。(もともと折れてたんスけど)
それを見かねたユーゼンさんに無理矢理剥がされたラズさんはベッドの外に放られて(ユーゼンさんは見た目によらず力持ちだったんス!)
俺の手を煩わせんな殺すぞって脅されて。
でも、それがラズさんなりの心配だったって後で気付いたッス。
その事件の後、隣にいることを許してくれて、名前を発音出来ないおれを見かねてラズなんて愛称を呼ばせてくれて!
おれとラズさん急接近?みたいな!たはー!
男の中の男、ラズさんに認めてもらうのは正直死んでもいいくらい嬉しかったッスけど、死んだらラズさんに殺されちゃうのでやめるッス!
そして最後のメンバー、
ボタンさんッス!
ボタンさんはワシミミズクで、家族構成とかいろんなことが謎に包まれてるんス!
そしてボタンさんは生まれは東で、育ちはここ、王都なんスよ。
ユーゼンさんに、ボタンさんのおよその文字表記を教えてもらったんスけど、本人もわからないらしいから、そのままボタンさんって文面に書いてるッス!
ボタンさんは、おれが来たとき無視も軽蔑もしなかったんスけど、ずっと見られてて、
おれがユーゼンさんやラズさんにひっついてたときも大体は視線を感じてたッス。
でも、周りをきょろきょろしても1度だってボタンさんを見つけられなかったんス!
ユーゼン曰く、ボタンさんは誰よりも隠密行動するのに長けていて、夜の活動では彼の右に出るものはいないんだとか!すげーッス!
ボタンさんは一言で言ってしまうと不思議な人で、自分から近づくことはしないけど、おれが近づいたら2割か3割程度の割合で普通に接してくれるんス。
猫獣人みたいな人かと思ったら、そんなこともなくて、ボタンさんは誰にもプライベートを見せてくれないんス。
常に何かに警戒心を持っているような様子で、おれなりに疲れないか心配だったんス。
でも、ユーゼンさんやラズさんと打ち解けていくとボタンさんもおれに信用をおいてくれてるような気がしたんス!
ボタンさんは見付けるのが難しかったからひっついて学ぶのはできなかったんだけど、今はわりと仲がいいと思ってるッス!
おれのとなりで寝てるときもあるし、寒いときにいつの間にか隣にいて、半獣化して暖めてくれるんス。
真っ暗で、姿は見えないんスけどね!
ボタンさんの羽は他のメンバーとは違って、ふわふわで、大きな体で包み込まれるとかーちゃんの足の間に挟まっていた頃を思い出してこころの中がすっげーぽかぽかになるんス!
気分屋さんで警戒心バッチリなボタンさんの、心の拠り所が見つかればいいのにって、おれは日々願ってるんスよ!
この前そんなことを言ったら、いつもの無表情を少しだけ歪めたんス。
心当たりが、あるんスね。
寂しいような嬉しいような気持ちで見つめていると、あのぽかぽかの暖かい羽を出して、拠り所はおれだけなんて言ってくれたんス。
いつのまにかそんな風に思われていたことが嬉しすぎて、ちょっぴり泣いちゃったッス!
ボタンさんはおれの後輩心をわかってるんスね!
これがタラシってやつなんス!
思えば、ユーゼンさんもラズさんもボタンさんも。
皆タラシッスね!
こんなに素敵な人達が天然タラシだと、おれ心配ッスよー!
最近は、皆で行動することが多いんスよ。
おれが来る前は仲がいいほどではなかったみたいなんスけど、おれが来て皆が仲良くなったんなら、それ以上に嬉しいことなんてないッス!
先輩方の素晴らしさを語るには、俺では力不足で悔しいッス!
「ドニ、おいで」
あっ!ユーゼンさんが、おれをよんでるッス!
敬語が外れてるから、きっと今はキゲンよくてアマアマなんス!
「ドニ。」
次は、ラズさんがおれを呼んでくれたッス!
いつもは、おいとかお前とかだから、久しぶりに名前呼んでもらったッス!
「ドニ、こっち」
皆、タラシのアマアマなんスね!
めちゃくちゃ幸せで、どーしてもニヤニヤしちゃうッス!
また、先輩のこと教えるッスね。
行かなきゃ!皆、あの綺麗な目で見てもらうために!
▽カラス
悠染
諜報部隊の中では小柄な方。
冷静で冷徹。誰に対しても一線を引いている。
▽ハクトウワシ
ラズェーラ
大柄。金目。
強いくせにずる賢いことしか考えてない。俺様。弱いやつが嫌い。
▽ワシミミズク
ボタン
大柄でべっこう飴色の目が特徴的。
警戒心がつよい。気が向いたら優しくする。不思議。
▽ぼく(ペンギン)アデリー+キング
ドニ
諜報部隊1小柄で、自分だけ飛べないため他のメンバーをいたく尊敬している。
常に誰かに付き添って学ぼうとする努力家。