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Area《4-9》

 押し寄せる複製騎士や、一般兵士を蹴散らしつつ、リリーシアたちは神殿を脱出した。

 途中にあった研究資料や機械類は出来る限り破壊してきたので、もしここ以外の施設が存在したとしてもしばらくは複製騎士の製作は進まないだろうと思われる。


「まさか、バレンス国がこんなことになっているなんて……。派遣した調査員程度では、本当のことは見えてこないということですわね……」

 荷馬車に戻り、カズエラス神殿跡での出来事を報告すると、コルウェは沈鬱な表情で考え込んでしまった。

 時刻はすでに日付をまたぐところだが、アマレも起きて話を聞いている。

「……聞けば、これらはバレンス国王十代に渡って隠蔽され受け継がれてきた計画だそうですから……。直接乗り込まなければ、私たちだって真相にたどり着けたかどうか」

「……そうですわね、リリィ。しかし、《終末》の呪い――《大疫病堕としパンデミックフォール》の本拠地がバレンス国王城とは。《終末》がそこまで入り込んでしまっているというのはもちろん問題ですけれど、そこに乗り込むというのは私たちにとってなかなかに問題ですわね」

 コルウェの言うとおりである。ワイレムの証言によってバレンス国は中枢がもはや黒と言っても過言ではない状態なのは確かだが、それでもなお《蒼の旅団》の一行の構成は派手にすぎる。

 かたやバツェンブール第二王女セレネ・バツェンブール。かたや大陸中央の最大規模国家王女にして現人神コルウェ・グランデ・ラインサード。変装しているとはいえ、このビッグネーム二人が乗り込んだことがバレれば大きな問題が起きることは必至である。

 しかし――

「しかし、です。もうここまで《終末》が浸透している以上……上手な解決策というのは、ありえないのでは。……穏便に済むとは、思えない」

 人命をなんとも思わない《終末》の所業を思い出し、リリーシアは言う。

「……そう、ですわね。これ以上、被害を出さないためにも」

 コルウェが視線を向けた先には、座り込むアマレの姿。

 痛みや呪いのたぐいは解除されたままのようだが、少女の半身は未だ紋様に覆われている。

「リリーシア、何か策はあるの?」

 セレネに問われて、リリーシアは考える。

「……私が行きます」

「リリーシア、まさか」

「――はい。私が王城に乗り込み、直接話をして、全てを明らかにします。もう……回り道はしていられません」

 しっかりと言葉にすることで、自分の意志をはっきりとさせるリリーシア。

「師匠。ミコトは一緒に行く、です」

「無論、わらわものう」

「ゼラ、ミコト……。でも、施設を襲撃したことは遠からず奴らに伝わるはず。この馬車にいるアマレたちに何かあっては、元も子もありません。お二人は、馬車の守りを――」

 強い意思を見せるミコトとゼラを、なんとか留めようと説得を試みるリリーシア。自分のことを心配してくれているのがわかるからこそ、この場ではなんとしてでも二人を馬車の守りにつかせる必要がある。そう考えていたところに――


「ならば、ここはわたくしの出番のようですわね」


 満面の笑み、および所謂ドヤ顔成分が混ぜられた笑顔でコルウェが名乗りを上げる。

「えっ、でもコルウェさん、自分で言ってたじゃないですか! 貴女は立場というものが――」

「ふふふ、リリィ、貴女幻術系技能も変装系技能も取得していなかったでしょう? 自身を対象に取る限り、私の幻術変装は概念レベルで情報を改竄できます。私が私であるとわからなければ、何も問題は起きませんわよ?」

 どこからか取り出した変装用魔道具サングラスをくるくると回しながら語るコルウェ。


 コルウェの取得している、高位の幻術と変装を組み合わせた技能についてはリリーシアも知識にある。

 《マボロシ》というその技能は、使用するためにそれなり以上の前提技能・MP量・詠唱時間が必要な代わりに、『情報』を偽装することができる。

 ゲーム時代であれば常に表示されていたHPやMPゲージを偽装したり(隠すすることもできる)、実際の判定は変わらないものの武器や自身の大きさを何倍にも大きくしたり小さくしたり、完全に見えなくすることも出来た。

 ただし姿を消す等の大きな効果を《マボロシ》で得ると、目に見えて消費MPが増大する。さらには同レベル帯の相手に見破られやすくなったり等、万能というわけでは決してなかったはずだ。


「……不安が顔に出ていますわよ、リリィ。私のカンスト技能が、百や二百レベル程度の連中に万が一にも見破られる理由がありませんわ。この状況ならば、純粋な戦闘能力よりも、私の技能が役に立つのではなくて?」

「…………そこまで言うのなら、わかりました。ミコト、ゼラ、申し訳ありませんが、コルウェさんの分も……馬車を任せます」

 リリーシアが二人に頭を下げる。

「……確かに、同行するのであればコルウェさんのほうがミコトたちより適切かもしれない、です」

「まあ、仕方がないか、のう。――アマレやセレネのことは任せておけ」

 不承不承という雰囲気ではあるが、頷いて納得を示す二人。

「――ありがとうございます。……行きましょう!」

あけましておめでとうございます!(どげざ)

色々と忙しくしておりますが、ちまちま更新していければと思います。

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