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Area《2-7》

 ピルグリム工房を稼働させてから、半月が経っていた。

 四週間に渡る新年祭がはじまるまで、さらにあと半月といったところである。


 リリーシアはミコトとゼラの指導をしつつ、その期間で工房の改築を行っていた。

 まず、主に気になっていたのが内装の老朽化である。お世辞にも美しいとはいえない状態だったために、床板から壁、天井に至るまで全てを張り替えた。

 その甲斐あって、今の工房内は新居のような輝きを放っている。建築技能スキル完全習得マスターしていたリリーシアにかかれば造作もない作業ではあったが、弟子二人を唖然とさせたのは言うまでもない。


 その他の細かいところでは、キッチンが整備されたり、リビングの隣に和室とこたつが新設されたり(すでにミコトとゼラはこたつに敗北済みだ)、裏庭に園芸スペースが開拓されたりと多岐に渡る。居住空間としてはこれ以上にない落ち着きを得られる空間に仕上がった。


 そしてミコトとゼラはというと、リリーシアから見ても非常に順調に技能を習得しつつあった。錬金術のほうは初級ポーション類は各種安定生産可能になり、今は中級ポーション錬成の練習中である。冒険者組合ギルドに販売を委託していた初級ポーションも順調に売れている。

 鍛冶のほうは、二人の得意分野に合わせた技能を伸ばしているところだ。二人には自身が使うジャンルの武器を主に作らせている。

 実際に自分が使うものでないと、自身の上達を確認することが難しいものである。


 リリーシアが見ている中、今日も二人は真剣に作業に臨んでいる。実際のところ、才能や環境よりも、二人のまっすぐに努力する性格が上達の早い理由なのだろうとリリーシアは考えていた。リリーシアにできるのは、多少の手助けと、迷った時にヒントを提示する程度のことである。

「……師匠、どうしたのじゃ? 考え事かえ」

 日課の(納品物でもある)中品質初級治癒ポーションを作り終えたゼラが、赤い狐耳をぴょこんと立てながら聞く。

「いえ、そういうわけでもないのですが……私、そんなにわかりやすくぼーっとしてました?」

「くくく、人間種ヒュームの娘がわらわの目を誤魔化すのは無理な話よ」

 からからと笑うゼラにリリーシアは苦笑を返す。ミコトもゼラも決して年齢は教えてくれないのだが、確実にリリーシアより長生きしているのだろうという風格を時折覗かせるのがとても興味深い。

「して、この工房の改築はおおよそ終わったと聞いておるが、師匠は今日は何をするのかや?」

「今日は作業場が空き次第、お二人の防具と制服を作ろうかと思いまして」

 ゼラの狐尻尾がぴょんと跳ねる。非常に可愛らしい。

「ほう。我らの防具と、制服とな?」

「師匠、作業終わりました――って、制服?何の話なのです?」

 炉での作業を終えたミコトが汗を拭きながらこちらに駆けてくる。

「ええ。少し前にミコトさんとゼラさんの装備を一度見せていただきましたが、長期間の使用で随分消耗していました。それで私から何か贈らせてもらおうかと考えたのですが、どうせならピルグリム工房の制服と防具を一緒に作ろうかと思いまして。……どうですか?」

 その話を聞いて、ゼラが大きく頷く。

「是非もない。よろしく頼むぞ」

「ミコトからも、お願いします、です」

「わかりました。それでは午後は私はここに籠もりますので、お二人はフリーということにしてください」

 三人で好みの防具の重さや装備箇所について打ち合わせをして、解散になった。ピルグリム工房の昼食は、全員揃っていたりバラバラに外食をしたりと様々である。



 軽めの昼食を終えたリリーシアは、気付けば最終的に六時間以上作業場に籠もり続けていた。

 夕飯の前に制服が完成したので、二人を呼んでお披露目をすることにした。

「ではミコト、ゼラ、着てみてください」

「は、はい!」

「うむ」

 そう言って制服と防具の一式を渡すと、二人を着替えスペース代わりの和室に誘導する。


 しばらくして、二人が扉を開けて出てくる。

「し、師匠……どうです? 似合ってます?」

「くく、ミコトは変なところで心配性じゃな。師匠、ミコトもわらわも似合っておろう?」

「はい、ミコトもゼラも、とてもよく似合っていますよ」

 ミコトは恥ずかしそうに、ゼラは堂々と。対照的な様子の二人に、リリーシアは思わず笑みを漏らす。

「私の故郷での制服をアレンジしてみました。素材からきっちりと特殊能力を付与してありますので、単純な物理防御力は鉄の全身鎧よりも上になっています」

 ミコトの制服は青、ゼラの制服は赤を基調にした同じデザインのものだ。ワンピースのセーラー服と、作業用手袋にもなる黒手袋、そして防具としての機能も兼ねる黒のロングブーツである。リリーシアの見込み通り、その服装は二人の少女によく似合っていた。

「この制服だけでも、かえ……その上に付けた防具も、見た目通りのものではないのじゃろう?」

「ええ、まあ。まず制服には防御力上昇の他に自動サイズ調整・自然治癒力上昇・自動修復等の細かい付与があります。そして防具には、防御力上昇・魔法抵抗力上昇・静音化・重量軽減・敏捷性上昇・自動修復あたりが付与されてますね。あとその防具は魔聖金オリハルコンと魔晶石の錬金合成物でできていて、一定量の魔力を流すと防御力が更に向上するという効果もあり――」

 得意げにぺらぺらと話すリリーシアを、ぽかんとした顔で見つめる二人。

「……しまった、いいものができるとつい語りたくなってしまいますね。あと、水色の同じものを私が着ますので、これで統一感が出ていいかなと」

「――ありがとうございます! 大事にします!」

そう締めると、ミコトが大きく頭を下げた。

「よいものをありがとうな、師匠。着心地もよいし、作業の邪魔にもならん。とても良いものじゃよ」

「気に入っていただけたようで安心しました。では防具は外して、夕食にしましょうか」

「はい!」

「うむ」


 その日の夕食は、季節の野菜を大量に入れた鍋であった。鍋をつつく三人の顔は、明日からの活力に満ちていた。

制服のデザインについてはキャラ紹介を参照してください。

防具については、画像の制服の上に金属鎧を着用した状態になります。

http://ncode.syosetu.com/n1515dd/3/

(URL間違えてましたね)

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