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僕の決意

朝一番の電車に揺られ、おばあちゃんの家に着いたのはお昼前だった。

「翔、よく来たわね。今年はお正月の帰省もなかったから、おばあちゃん寂しかったのよ。お母さんはどうしてる?翔も4月からお仕事なのよね。あんなに可愛かった翔が社会人になるなんて・・・」

おばあちゃんの、気持ちは十分伝わった。


母については、とても辛そうな状態であること、僕については好きな仕事が出来るから心配しないでと、まだ働いてもないのに、安心して欲しくてそんな説明をした。


「翔、子供に先立たれるっていうのは本当に辛いのよ。おばあちゃんの命の代わりに、あなたのお父さんを生かせて欲しかったわ。

 翔も辛いと思うけれど、お母さんにそんな思いをさせてはだめよ。社会人になるっていうのは、あなたが思っているより、ずっと大変なことなの。新しい人間関係、覚えなければならないことも沢山あるわ。それに責任も生じてくるのよ。翔、あなたは好きな仕事が出来ると言ったけれど、本当に辛くなったら辞めてもいいんだからね。命を削るほど仕事にのめりこまなくてもいいから。おばあちゃんは、あなたの味方だからお母さんにもとりなしてあげるからね」


思ってもみないことを、先制パンチのごとく言われた。

父については、おばあちゃんも辛い気持ちは分かっているつもりだったけれど、命に代えてでもなんて思っているとは思わなかった。お葬式の日に母を支えるようにしていたおばあちゃんだったが、二人とも辛かったんだ。

僕はまだまだ子供だ。いや成長しなければならないのに、僕の心が成長しなかったんだ。

お母さん、親父、おばあちゃん、ごめんなさい。

僕が支えるべき時に、何も出来ていなかったんだね。


「おばあちゃん、おじいちゃんの部屋に入ってみてもいい?」

「いいわよ。おじいちゃんもきっと喜ぶわ。翔が会いに来てくれたって。翔が大人になったから言うけれど、おじいちゃんがまたふらっと帰ってくるんじゃないかって、しばらく片づけられなかったのよ。

少しずつ片づけて、今はおじいちゃんが好きだった本が数冊のこっているくらいよ。」


2階にある、おじいちゃんの部屋に入ってみた。

海が綺麗に見える。今年は帰省しなかったが、昨年の正月には帰省したのにずいぶん久しぶりという感覚だ。おじいちゃんの好きだった本か。

狐に関しての本はなかった。中身をぱらぱらとみてみたが、青島さんに繋がるものもなかった。


おばあちゃんに聞くしかないのか。

居間に降りて、「おばあちゃん、青島さんって知ってる?」

「知らないね。おじいちゃんの知り合いなら、毎年私が年賀状を出していたけれど、青島さんという方はいなかったねえ。」

「じゃあ、岡山に知り合いいる?」

「岡山にも親戚もいないよ。青島さんとやらは誰だい?」

「いや、いいんだ。変な事聞いてごめんね。」


おばあちゃんも知らない。手がかりが一つ消えた。

「あ、お仏壇に手も合わせていなかった。」

「お線香あげてやってね」


おじいちゃん、青島さんについて聞きに来たんだけど、僕はどうしたらいいんだろうね。

遺影を見ながら、僕は親父と同じ質問をしてみた。

答えるはずないんだよな。

ここまで何しに来たんだろう。あと3週間しかないのにと視線を上にあげた。

あ、僕はとんでもない勘違いをしているのではないか?

おじいちゃんと、親父をまだ若いと言われる年齢で亡くしてしまったせいで、短命一族だと思い込んでいた。おばあちゃんは、嫁だから長生きなのかな?なんてぼんやり思っていた。


いや、違ったんだ。

ひいおじいちゃんの写真が飾られている。

頭は、見事に禿げ上がっている。若くはないはず。


「おばあちゃん、ひいおじいちゃんって、いくつまで生きたの?」

「ひいおじいちゃんは、75歳まで生きたね。今のおばあちゃんと同じ年だね。知らなかったのかい?」


これって、短命じゃないよね。

100歳まで生きるのが長寿なのか?

いや、寿命って人それぞれだよな。おじいちゃんのように病気で亡くなる人もいる。

親父のように突然の事故だってある。

ひいおじいちゃんの時代、平均寿命は男性75歳だ。

十分生きたのではないのか。


青島さんが、元気な85歳ということで僕は、悲劇的な結末しか思いつかなかっただけなんだ。

おじいちゃん、ありがとう。僕は答えを出した。狐に嫁など出さないと。


「翔、お昼ご飯食べましょう。今日は泊まっていくわよね。

おばあちゃん、久しぶりに誰かとお夕飯食べられるの嬉しいのよ。」


気持ちが決まったせいか、僕は久しぶりにおばあちゃんの作ってくれたカレーを3杯も食べてしまった。


そして、スマホにはメールが届いていた。

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