対面の時
約束の3月3日だ。
総社市なんて行ったことがないから、朝から電車に乗った。
お母さんには、友達の家に行ってくると言って出かけた。
心配かけたくないんだ。近頃は少しずつ掃除も出来るようになったようだけれど、やつれた様子は隠せない。
おばあちゃんの言いつけを守るように、なるべく一緒にご飯を食べた。
お昼に総社市に着いた。
早く着いたため、電車で大きな神社に行ってみた。平日だったせいか、人も少なくのんびり廻れた。
青島さんとは、16時に青島さんが指定したコンビニで待ち合わせをした。
青島さんに教えてもらった、神社の名前はいくら探してもネットでも出てこない。
地図にも載っていない。
コンビニに、青いコートを着た老人を見た。待ち合わせ通りだ。
メールで、「僕は青島だから、青いコートを着ていきますね」
分かりやすい提案で、さすが年長者だなと頷いた。
「青島さんですか?」
「はい。高田さんですね」
メールでやり取りしていた雰囲気通りの人だった。
背筋が伸び、僕のような若造を馬鹿にしたような雰囲気もない。
申合せ施行人同士であることが、そのような雰囲気を出させているのかもしれない。
「高田さん、私は年ばかり重ねてしまっていますが、今回の申合せ施行はあなた同様初めてです。宜しくお願いします」
「こちらこそ、若造で申し訳ありません。宜しくお願いします」
「それでは行きましょうか」
青島さんに、連れられて施工場所と言われた神社へ向かった。
「ここですよ」
「え?何もありませんよ?」
「いえ、その石塔が目印なんです。昔は立派な神社だったようですが、今はこれしか残っていません。
とりあえず、日の入りの時間を待ちましょう」
日没は17時35分。あと一時間か。
そこで背後から、いきなり狐の集団が現れた。
50頭はいるだろうか。
「嫁は連れてきていないのか?」
先頭にいる狐が聞いてくる。狐って人間の言葉が喋れるのか?
設定おかしくないか?いや、最初から狐に嫁入りさせること自体が設定に無理があるもんな。
ゲーム感覚な僕とは対照的に、青島さんが毅然として答えた。
「嫁は連れていない。私たちはもう狐に嫁入りする風習をやめることにしました」




