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包み込まれる

「おばあちゃん。美味しそうだね。」

手慣れた手つきで魚をさばいている祖母を見て、気持ちが明るくなった。


「あら、嬉しいわ。

ねえ、翔。お母さんちゃんと食べている?きっと食べられないわよね。

あんなに料理好きだったけれど、今は料理なんて出来る状態じゃないでしょうね。

おばあちゃんも、同じだったから良くわかるのよ。ずっと一緒に生きていこうと思った人が突然目の前からいなくなったら、同じ心境になるのよ。おばあちゃんなんて、おじいちゃんが亡くなったあと3年くらいは、味覚がおかしくなったように、何を食べても美味しくなかったのよ。

 でも、お母さんが少しでも食べられるように、時間があるときは一緒に食べてあげてね。

誰かと食べるっていうのは、本当に救われるのよ。

おばあちゃん特製の、肉じゃがと、魚の煮つけ持って帰ってね。お母さんが食べたいって言ってたから。」


「おばあちゃんも、辛かったんだね。僕はまだ子供すぎるんだ。お母さんになんて声をかけたらいいのか分からないんだ。ごめんね。僕がもっと大人の対応が出来たら、お母さんの苦悩を一緒に持ってあげられたのに。」


「翔、あなたも苦しんでいるのは、おばあちゃんも、お母さんも分かっているのよ。ここに来たのも何か思うことがあったからよね。もうじき今日も綺麗な夕日が見られる時間よ。ゆっくり見てきなさいね。

あとね、おばあちゃん、お母さんとLINEしてるのよ。翔もおばあちゃんとする?」


こういうところが、祖母らしい。なんでも包んでしまうような存在なんだ。

お母さんとLINEしていたんだ。驚きというより、嫁姑問題なんてないんだな~と暢気に考えていた。

スマホに変えたなら、教えて欲しかったよ~という僕に、スマホに変えてまだ一か月なのよ~といつもの笑顔を見せてくれた。

祖母と、LINEのID交換をして、僕は砂浜へ出かけた。

和歌山といっても、さすがに2月は寒い。

でも、雲もほとんどなく、綺麗な夕日が見られた。

父が亡くなってから、空を見る余裕もなかった。

4月から就職、それだけでもプレッシャーだったのに、「仕事」について相談できる父を失った。

だけど、僕も前に進まないといけないんだな。

おばあちゃんが、スマホに変えたように。

おばあちゃんなりに、母を支えたかったんだろう。そのためにスマホに変えたんだろうな。

あれこれ、詮索するのはおばあちゃんは嫌がるから、聞かずに明日の朝帰ろう。


夕日が沈み、一番星が綺麗に見えてきたころ、おばあちゃんの家に入った。

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