僕と君だけを取り残した、とてつもなく残酷な世界
「おはよう」
「やはり生きているのね」
「今日は、どうするの?」
「何も、考えてない」
「それじゃあ、花を見に行かない?」
「何故あなたなんかと行かなきゃいけない?」
「だって、ここには僕と君以外誰もいないじゃないか」
「私はあなたが嫌い」
「僕は……もうわからない」
「わからないなら、何故私に付きまとうの?」
「だって、君しかいないから」
「迷惑」
「ごめんね。でも、君だって1人は嫌でしょ?」
「あなたといるよりはマシ」
「あはは、ひどいなー」
「ついてこないで」
「嫌なら抵抗すればいいのに」
「体力を無駄に消費したくない」
「じゃあついて行ってもいいよね?」
「だめ」
「でも、そしたらどこに行ったらいいのかわからないよ」
「なんで私がそこまで面倒を見なくてはいけない?」
「だってもう僕と君しかいないじゃないか」
「不愉快」
「僕はだいぶ慣れてきたよ」
「ここから見える景色は綺麗だね」
「あなたがいなければもっと綺麗」
「なかなか酷いことを言うね」
「あなたが壊したこの風景が、ここまで戻るのにどれほどかかったと思うの?」
「それもそうだね」
「謝罪の言葉はないの?」
「謝ったところで過去は変わらないし、もう元に戻ってるじゃん」
「あなたは反省をしていないのね」
「この長い時間のどこかに置いてきたのかもしれない」
「戯言を」
「あはは、ごめんね」
「雨が、ふりそうだよ」
「それがなんだというの?」
「ただ、言ってみただけ」
「話しかけないで、不愉快」
「でもそうでもしないと、おかしくなりそうなんだ」
「私はあなたがおかしくなって自滅してくれたらとてもら嬉しい」
「うーん、それだと君1人になるよ?」
「あなたといるよりかは何倍もマシ」
「あはは。やっぱり変わらないね」
「あなたは随分変わった」
「うん。もうとっくにおかしくなったんだね」
「早く自滅すればいいのに」
「あはは」
「ほら、日が暮れる」
「今日もとても不愉快な1日だった」
「釣れないことを言わないでよ」
「本心」
「僕はとても楽しかったけどね」
「不愉快」
「君は、僕が息をするだけで本当に嫌そうな顔をするよね」
「嫌そうなんじゃない、嫌なの」
「もうそろそろ、僕のこと好きになってくるんじゃない?」
「殺す」
「あはは」
「あはは」
「ねえ、本当に殺してみせてよ」
「殺す。次こそは、絶対に」
「何度も何度も、もう疲れたんだよ」
「生まれたことを後悔させてあげる」
「何もかもがわからなくなって」
「何度命乞いをしても、許しをこいても」
「君が、見えなくなりそうで」
「あなたを終わらせてあげる」
「でも、終わらないんだよね」
「あなたは、しぶとい。本当に、腹が立つほど」
「でもね、ちゃんと痛みとかはあるんだよ?」
「それがなんだというの?」
「もうちょっと優しくして欲しいなって」
「初めの頃よりは随分優しくなった」
「そうだね」
「それ以上何を望むの?」
「僕は、何もないのが1番なんだけどね」
「何もないことが1番恐ろしいのではなくて?」
「うん。このまま全部壊れたら、もっとずっと楽なのに」
「あなたは楽になってはいけない」
「君もね」
「もし僕が君を殺したらどうなんだろう」
「私があなたなんかに殺されるとでも?」
「もしもの話だよ」
「不愉快」
「例えってことで話をしてもらっていいかな?」
「知らない。私は死んだことがない」
「世界はちゃんと終わるのかな?」
「もうこの世界は終わったもの」
「うん」
「あなたが、終わらせた」
「あなたが、壊した」
「終わった世界は、思ったよりも退屈で、綺麗で、残酷だね」
「これはあなたと私の背負う罪、そして与えられた罰」
「君が僕をちゃんと殺せれば良かったのに」
「ほとんどの罪はあなたのもの。私になすりつけないで」
「君は僕を止められるはずだったのに、止めなかった」
「あなたは、とても強かった」
「そうだけど」
「不愉快」
「自分で言っておいて」
「今更になって、弱くなって」
「罪の意識で云々」
「言い訳は聞きたくない」
「言い訳のつもりじゃないんだけどな」
「僕を、どうして殺せなかったの?」
「なんて言わせたいの?」
「愛とか、そういう言葉を聞きたいな。なんて」
「不愉快極まりない」
「でも、僕だって君を殺さなかった」
「まさか愛だなんて言うつもりなの?」
「愛だったのかなあ。どうなんだろう」
「不愉快極まりない」
「あはは。でも、そうだね。もしかしたら」
「僕は誰よりも愛が欲しかったのかも」
「その口で、愛だなんて、言わないで」
「あなたは、違う」
「あなたは愛されてはいけない」
「とても、不愉快……」
「生まれ変われるのかな、僕たちは」
「生まれ変わったとして、あなたはまた世界を壊したいの?」
「いや、今度は世界をもっとよく見てみたいな」
「何故、そんなことを言うの?」
「なんでだろう。なんとなく」
「なんとなくで、全て許されるとあなたは思っているの?」
「もうそろそろ許してもらいたいなー。って思ってるんだよね」
「私はあなたを一生許さない」
「その一生は、もう終わっているわけで」
「永遠に許さない。たとえ世界が終わっても」
「世界ももう終わってるわけで」
「どんなことがあろうとも、決して」
「あはは。手強いな」
「もし生まれ変わったら」
「あなたに次の人生なんて与えられない」
「とても優しくて、強くて、でも少し可愛いところのある青年になりたい」
「そんな人物に、あなたの業を背負わせるなんてかわいそう」
「うーんじゃあ全部なかったことにして生き返る」
「そんなことは私が許さない」
「それじゃあ記憶を持って生き返る」
「それではあなたが生き返るようなものではないの?」
「ほら、優しさがある」
「あなたの言う優しさは信用ならない」
「一般的な優しさだよ。女の子に優しいとか」
「それは下心?」
「ちょっと違うかなー?」
「もうそろそろ、次の人生歩んでもいい頃がなって思うんだけど」
「それは私が許さない」
「神様が許してくれないかな」
「あなたは大罪人。許されるはずがない」
「じゃあせめて、終わらせてくれないかな」
「終わらない。これはあなたと私の罰」
「あはは。そうだよね。終わることなんて、絶対にないよ、ね」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「あははは」
「ほら、僕はちゃんと壊れたよ。これが狙いなんでしょ?」
「今日もまたやってきた」
「景色はとても綺麗だった」
「雨は今日は降らなかった」
「あなたの声だけ聞こえない」
「私だけ1人残して」
「いかないで」
「ごめんねって言葉なんかに、気持ちなんで込められないよ」
「ありがとうなんて文字の羅列に、想いなんで乗せられないよ」
「嫌いなんて叫んだ音に、真実なんで隠せないよ」
「好きだなんて、こんな壊れた心じゃ、届かないよ」
「僕を見ないで」
「平凡で、退屈で、なんともない世界に生まれました」
おめでとうございます
「僕の、存在価値は?」
おめでとうございます
「僕の、罪の行方は?」
おめでとうございます
「全部あの子が背負うの?」
おめでとうございます
「……嗚呼、不愉快だね」
おめでとうございます。あなたは生まれ変わりました。
罪と罰と業に縛られながら、楽しく過ごしてください。