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彼岸花  作者: 桜川 蛍
1/1

旅立ちの前夜

 今から何万年、何千万年も未来のこと・・・

世界は幾つにもわかれ、密接に絡みあっていた。この時代には魔法や魔獣といったさまざまな摩訶不思議な力が全宇宙にはびこっていた。

 これから描かれるのは占領地戦ゲームといった大きな闘いがはじまる百年ほど前の話である。

 悲しくも優しい、少年と紅髪の男が繰り広げる旅物語。

 コツコツコツ―――――

 女将がひとりの若い男をつれて一番角の子どもがいくらかいる格子に近ずいてきた。その男は紅く長い髪をなびかせ、身体をすっぽり隠せるくらいの黒いコートと黒い帽子を深く被っていた。

 少し伸びた前髪の隙間からは、空のように透き通った蒼い瞳を鋭く光らせている。まるで、狙いを定めた鷹や狐のように・・・・

 「お目当てのものはこの格子に入っていますわ。一番奥に座っている銀髪のおかっぱ頭の子です。」

 と、女将は訛った言葉遣いで目を合わせずに男にそう静かに言った。

 そして、格子の扉を少し開き少年を手招きした。渋い顔をしながらゆっくり立ち上がり近ずいてきた。その様子を心配そうに見守っている子どもたちの間を通っていった。扉の前についた。

 「お客はん、この子はサジ。ここでは遊女の世話係と下働きをやらせてます。ほんまにこの子でいいんどすか?」

 あとで返品されないか不安なのか、疑いの眼差しを男に向けて遠慮がちに言った。

 男は、

 「ええ。私は彼をずっと探していたんですよ。」

 と、整った顔に小さく笑みをうかべ、蒼い眼光が一瞬 ほんの一瞬だけ光ったが女将はそれには気付かず、格子の扉にかかっている鍵を開けた。サジはゆっくりと出てきて、後ろで彼を見守っている子どもたちの方を裾を引っ張られているような気持ちで見返していた。

 そんなサジに女将は、

 「挨拶をなさい。こちらの方はお前はんをわざわざ遊幻郷ゆうげんきょうに来られたんやて。」

 サジはいぶかしげな様子で 

 「どうせただの変態な趣味をした金持ちだろう?俺みたい小汚い餓鬼に何十万、何百万と金をつぎ込んでぼったくられてる馬鹿な奴らだろ・・・。」

 と小声で悪態をついた。小声といっても、もちろん空に音が発せられているのでその愚痴はサジふくめすぐ近くにいるものには聞こえていた。そう・・今まさにこの少年を買おうとしているその男にも、だ。三人の間に数秒の沈黙がながれたが、それを最初に破ったの女将だった。|(まぁ、そうなるだろう・・・)

 「お前はんは何を言い出すんや!!!お客はんに失礼やろうが!大金払うてお前を買うんやさかい。ちゃんと謝りぃ。」

 と、すごい剣幕で叱った。

 サジは少しの間口を尖らせてそっぽを向いていたが、女将に怒られたので男のほうを向き謝罪の言葉を言おうと息を吸い込んだ時

 「これは手厳しいな。確かにこんなところで子どもを買う連中は下心を持っている奴らばかりだろうな・・・私もまったくそうではないとは言い切れないから反論のしようもない。女将、この子は随分活きがいいな?」

 「ええ、そ そうどすか?まぁ赤ん坊の頃からこの世界におるさかいな。お客はん、ほんま堪忍な。」

 場が悪そうに言葉をつまらせながら女がそう言った。

 「いや、私は別に責めてるわけじゃない。むしろあなたに感謝しているぐらいだ。とても元気な子に育てたのだと!」

 と、男は感心したとばかりに言う。そのやりとりを黙って見ていたサジは自分は間違ったことを言っていない、だから謝らないと言った。その言動に呆れた女将がまた何かを言おうとしたとき、それもそうだと男があっさり肯定してしまったので女将は口を閉じた。

 男はすべての手続きを終わらせて|(とはいっても、返品はできないとかその商品が逃げ出しても賠償金は支払わないだとかそんなことが延々と書かれた一枚の紙切れにサインをし、金を渡して終わりだ。)サジのほうを向き、目をまっすぐと見つめて

 空のように澄んだ蒼い瞳で見つめてこう言った。

 「ここをでる準備をしておいで。世話になった人達にも挨拶があるだろうし君の大切な人達にお別れを言ってくるといい・・・明日の朝まで待とう。」

 「そんなこと言っていいのかよ?俺がさっさと準備してこっそり逃げちまうかもしれねーぜ?それでもいいのかよ、せっかく大金はたいて買ったってのに。」

 と、ニヤッと笑いながら、でも男の目はじっと見つめながらそう言った。

 「その心配は無いさ。君を育てたのはこの女将さんだからね・・・。」

 と、やわらかく微笑んでみせた。

 これにはサジも“うっ”と唸ってすごんだ。

|(女将さんを出してくるなんて反則だろ!)と心の中で訴えたがそれをまるで聞こえてかのように男は

 「君は君を育ててくれた女将さんが大好きなんだね。だからこそ、私はそんな君を信頼して朝まで待つことにしたんだ。きっとこの店の人達や友人、とくに女将さんにはたくさん言いたいことがあるだろうからね。」

 「行っておいで・・・。」

 男はやさしい笑みを浮かべながら言うと、その言葉にあっけにとられて呆けていたサジの背中をそっと右手で店の方に押した。

 そのままサジは走り出し、店に駆け込んでいった。準備を早く終わらせてみんなと話すため、礼を言うため、笑いあうため、意志を確認しあうため、絆を確かめあうため、そして―――別れをいうために・・・・

 夜が本業の店の人達とは忙しそうにはしていたが全員とは話を終え、最後に一階の奥にある周りよりすこし頑丈に造られた、女将のいる部屋の前に来た。あと数十分もすれば夜が明けるころに扉の前にいた。

 唾を飲み込んで開けるか開けまいか迷って立っていた。 

 そして、息を大きく吸い込んで―――――

 

 コンコンコン―――――


 と、質素な木の音が短い廊下に響いた。店の入り口付近の玄関広間は客や遊女、板前たちがせわしなく騒がしくしているのとは真逆にサジの周りは沈黙に包まれていた。

 そして 

 ギィィ―――― 

 と、古びた音が鳴り、周りのより頑丈に造られた扉はゆっくりち開いた。

 読んでくださってありがとうございます!

読みずらくてすいません。

話はこれからもっと広げていくので最後までお付き合いください!!

 あと、紅髪の男の見た目は20数歳くらいのつもりです。書き忘れてました!

 

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