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魔法の異状  作者: 山猫
まほうのせかい
1/3

水の入り口

初投稿です。よろしくおねがいします。

 魔法の世界へ行ってみよう。

 

 そこが楽しいかどうかはわからないけれど。

 

 そこに居て幸せになれるかは疑問だけれど。



                  *  *  *  *  *



 電車を降りて、駅の改札を抜けると、雨が降っているのが見えた。

水溜りがあちこちで出来て、落ちた雫が水面に波紋を残す。

仕方なく持ってきていた折り畳み傘を開いて、駅を出た。

どこぞの小説でよく雨が好きだ、なんていうけれど、あたしは好きではない。心のそこから。

整えた髪はぼさぼさになるし、傘を持ち歩くのが面倒くさい。友達と歩くときには傘が邪魔になるし、外は暗いし。

とは言え、面倒な用事を済ませた帰り道は足が軽い。

履いていた靴がたまたま水をはじく素材のものだったせいもあるのかもしれない。

あたしは浮き足立って、帰り道をのんびり帰っていた。


今日はちょうど、13歳の、あたしの誕生日。

たまたま今日が休日であるせいで、友人からもらう祝いの言葉はメールだけだけど、やっぱりうれしい。


家に帰ったら、もしかしたらケーキでもあるかも。


そんな風に考えると、胸がくすぐったくなって、思わずスキップしていた。

水溜りがあったって、スキップ。水が跳ねるのもかまわないで、むしろわざとそこに飛び込んだ。

その、瞬間だった。


「・・・え?」


来ると思っていた地面の衝撃がない。

変わりに、ずぷりと何かにはまりこむ。

流れに逆らわず、まるで水中にもぐりこむかのように、とぷん、と靴が、足が、腰が、胴が、胸が、首が、顔が、埋まる。

抵抗は少ないのに、泥に触れたような感覚した。

顔まで来て、止まっていた思考が混乱に陥る。


こわい。


このまま顔が埋まってしまえば、おぼれる。

もしかしたら泥が鼻や口から入って、目にも入ってきたら。

恐怖に体をばたつかせた。

泥で掬われる足を動かし、息の出来る場所へ浮上しようと手を動かす。

息が出来なくなっていく。体が浮かない。おちていく。

いやだ。だれか、だれかたすけて。

こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい。



しにたくない。



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