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自己評価

「いやいや、翔真は不細工じゃないって。俺なんてただの髪型イケメンじゃんって言われるしさ、蓮は怖い言われて全然モテんし。一歩は身長残念だし。彼女いるの翔真だけじゃん」


 西川が場をとりなす。論点はズレているが、ここで全員が無言になるよりずっとマシだ。


「誰が身長残念だ」


 と野崎が突っ込んで、その場は何となく収まったが、それからも空気は微妙だった。図書室が広々としていて、気まずさが分散されるのが救いだ。カップラーメンにお湯を注いで、それぞれの組に分かれて食べた。


 星来と交代でラーメンをすすった。


「やっぱ一回、教室戻りたいな」


 星来が言った。


「だって歯磨きセット、教室に置いてあるし。荷物、取ってきたい」


「確かに。私リュックにペットボトルのお茶入れてるし。化粧ポーチも財布も置きっぱ」


「だよねー」


 荷物を取ってくると結麻に告げた。


「結麻は?」


「私は持ってきてるよ」 


 さすが初動が早かっただけある。


「でもトイレ行きたいし、ついでに歯磨きしたいし、私も一緒に行くわ。翔真、ちょっと行ってくるね」


 荷物を持って結麻もついてきた。

 少し歩いて図書室から離れたところで、結麻がたまりかねたように言った。


「ねえ、やばくない? 翔真。俺は不細工だから安全だとか言うの。彼女と友達の前で言うとか、マジでありえなくない? 蓮くんたちと比べたら、そりゃかっこよくないかもだけど、卑屈すぎん? てか、蓮くんやうちらは死んでもいいってこと?」

 

 あの場では黙っていたが、かなりご立腹だ。

 だから言い出せないが、私は結麻の彼氏の気持ちも分かる。口に出すのはどうかと思うが、私も自分は大丈夫だろうと心の奥底では安心している。四人に一人の美人に選ばれない自信がある。メイクを落とせば。


 本来の私の目は一重で細くて、若干離れていて垂れている。まつ毛も眉毛も薄くて貧相だ。人より黒目が小さくて白目の部分が多い。実はおでこが広くて丸いのもコンプレックスだ。前髪で隠しているけど。ペタンとした猫毛もボリュームが出ず、セットしないとオバサンくさくなる。


 一番のウィークポイントである目は、アイプチとアイメイクと、黒目を大きくするカラコンで盛れる。元々鼻と口元は悪くないので、目さえ化ければ、別人級に変身できる。

 親の転勤で、小中時代の私の顔を知る人がいない高校に進学し、一念発起して顔を変えた。


「結麻も理緒も、綺麗だもんね……」


 困ったように相槌を打つ星来だが、化粧っ気が一番ないのに、私たち三人の中で顔が一番整っているのは星来だ。

 といっても、もっと綺麗で容姿がいい子は他にいる。百三十五人中の、明日選ばれる五人にはまだ入らないだろう。毎日五人ずつ選ばれて、何日目かには……と考えると、ボーダーラインが近づいてくる、恐怖だ。

 より醜くなる努力をしろとあの化け物は言った。より可愛く、少しでも良く見られたいと努力してきたことを、全部放棄すればいいのだ。


 だけど……高校に入学してから、ずっとこの顔で通してきたのだ。美人の部類として扱われることに最初は慣れなかったが、すぐに自信がついた。

 小中学時代は意地悪でガサツでしかなかった男という生き物が、高校では優しく親切に接してくれる。私が美人になったからだ。ブスと美人ではこんなにも接し方が違うのかと、愕然とした。

 一度味わったら、もう二度とブスには戻りたくない。


 化け物に殺されるのはもちろん怖いが、今さら素顔を皆に晒して、驚愕されるのも怖い。別人だ整形メイクだ、詐欺だのとディスられるだろう。

 別人級の整形メイクを動画にして、人気を得ているインフルエンサーもいる。そういう風に開き直って素顔を晒すしか、生き残る術はないのだろうか。

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