ルール説明
「それではルールの説明に入ります。一日五名ずつ、一週間で三十五人。毎日五限目にこの体育館で、審査を行います。高校敷地外へ出ることはできません。助けも呼べません。集合時間に来ない人は探し出して殺しますので、必ず来てくださいね〜」
「質問、宜しいですか?」
また手が挙がった。うちのクラスの深谷だ。大人しい系の男子だが、落ち着きがあって何事もそつなくこなすタイプなので、一目置かれている。
さすがにいつもよりも強張った表情はしているが、声には落ち着きがある。
「毎日少しずつ行うことに、何か意味はあるんでしょうか? 猶予をやるから、どうにかしてみろという意味合いが?」
「あら、良い質問ですね。そうです、猶予を与えることに意味はあります。時間があれば、現段階より醜くなる努力ができるでしょう? 化粧を落としたり、カラーコンタクトを外したり、胸パッドを外したり。ああ、それでは女性ばかり有利になってしまいますかね。男性陣もできることはしてくださいね」
ドキリとした。校則ではメイク禁止だが、多くの女子はメイクをしている。アイプチで一重を二重にしている子も多い。私もナチュラルに見せかけたメイクをがっつりしている。素顔なんて見せられない。
「そうそう、言い忘れましたが、AIくんの審査時に変顔をするのは禁止です。身分証明の写真撮影並みに真顔でお願いしますね〜。顔に落書きをしたり、傷やたんこぶを作って顔の造形を変えるのも反則とします。反則した人は殺しますよ〜。では、質問が以上でしたら、今日のところはこれでお終いです。また明日、よろしくお願いしますね〜」
真顔のAIくんを従えて、化け物講師が歩き出すと、怯えきった生徒たちが道を開けた。さっきまでびくともしなかった扉が勝手に開き、そこを通って体育館を出て行った。
「なっ、何なのアイツらほんと」
「早く、早く逃げよう」
「殺される」
「今出て行ったらまだアイツらいるかも」
口々に言いながら、雪崩れるように体育館から外へ出た。半狂乱になって取り乱してもおかしくない状況だが、同じ状況を味わっている同級生が大勢いる、ということが救いだ。いつもと変わらないみんなに囲まれていると、何もかも嘘のように思えてくる。
目にする現実を認めたくない気持ちが働くのか、不自然なほど悠長になる。遠足みたいにぞろぞろ歩いて、校門へ向かった。私たちはみんな、急いで知るのが怖かったのだ。
「くっそ、開かねー!」
「いてっ、なんか壁がある!」
校門は開かず、上から乗り越えようとすると透明な壁のようなものにぶつかって、阻まれる。正門以外の場所も回ってみたが、同じだった。どうやら目に見えないドーム状の壁で、ぐるりと囲まれているようだ。
高校の敷地外へは出られません、とあの化け物講師は言った。やはりそうかと愕然とする。
助けを呼べません、とも言っていた。案の定、校内の公衆電話も、職員室の電話も回線が通じなかった。職員室にあるパソコンもテレビも電源が入らない。そして校内には、私たち二年生しかいない。
ガランとした校内。パラレルワールドに迷い込んだ気分だ。
「ね、ねえ、本当に学校から出られないし、助けも呼べないのかな」
ずっと横でくっついている星来が、泣きそうな顔で言った。
「私たち、どうなっちゃうの……」
私たち、で思い出した。
「そういえば結麻は?」
こういうとき一番騒ぎ立てて、私と星来を引っ掻き回す結麻が見当たらない。
「たぶん彼ピと一緒」
なるほどと納得した。女友達より彼氏だ。悪くは思わないが、差を付けられていることを実感する瞬間だ。




