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殺人鬼

 きゃあっと星来が悲鳴を上げて、蓮に抱きついた。

 蓮は星来を後ろへ押しやり、和室の畳に転がっている割れてフレームの曲がったメガネを拾った。


「ちょっとやりすぎじゃね? 死ぬじゃん、それ」


「あぁ?」


 肩をいからせた柔道部男子が出てきた。身長は蓮のほうが高いが、肉厚でガッチリとしている。全身がゴツゴツとしていて、顔も凶暴だ。


「こっちも殺されかけたんだよ。柔道部女子は五人殺されてんだぞ」

 

 もう一人仲間が出てきた。手には、野球バットが握られている。血で赤黒く染まっている。


「正当防衛だろうが」


 息を呑んでいた野次馬たちが、ボソボソと声を上げた。


「だよね、何人も殺してる奴だし」

「野放しにしてたら怖すぎ」

「安心して寝られないよね」


 和室から出てきた柔道部員たちが言った。


「いいか。コイツはここに拘束しておく。鍵を掛けておく。俺たちは殺してない。危ない奴を捕まえて、閉じ込めておくだけだ。みんなも安心だよな?」


「ああ、いいんじゃねーの」

「仕方ないよ」

「自業自得」


 みんな口々に同調した。


「行こう、蓮」


 星来が蓮の手を引いた。蓮は留まって、柔道部員に尋ねた。

 

「あいつが人殺した動機って、聞き出せた?」


「あ? 狂った殺人鬼に襲いかかられて、呑気に会話してる暇なんかねーよ。もう喋んねーし」


 と一人が言い、もう一人が


「動機も何も、頭おかしくなったんだろ。おかしい奴は排除だ」


 と言った。


「いーか、これは見せしめだ。変なことしようって奴はこうなるぞ。特に顔の綺麗なヤツ。不細工を殺せば助かるって噂が出回ってるようだが、妙な真似すんなよ。逆にぶっ殺してやるからな。お綺麗な顔をボコボコに潰してやるよ」


 蓮と睨み合った柔道部員は、まるで凶暴な熊のようだった。


「怖いよ、蓮。行こう」


 星来が泣きそうな声で蓮を引っ張った。



「なあ、あれ誰だったわけ?」


 帰り道、西川が聞いてきた。


「二組って、理緒たちと同じクラスだろ。誰?」


「深谷っていう、男子。おとなしめで目立たないけど、しっかりした感じの」


「えっ、そうなの!? 分かんなかった」


 星来が驚いた。


「深谷って、あれ、もしかして、化け物に提案したヤツ? 綺麗なヤツから殺すんじゃなくて、残していく方式にしてくれって」


 西川が珍しく冴えている。


「てことは、本当にあれじゃん。不細工から消していけば、自分は助かるって思ったってこと? やべぇ、サイコじゃん。ははっ」


「なにそれ、本気で実行するなんて、ウソでしょ。じゃあ今ので、逆に綺麗な人たちが排除される側になったってことだよ。頭のおかしいサイコが自分よりブスを殺してさ、反撃されて。今度はブスが、綺麗な人間を排除に向かうんじゃない?」

 

 星来がガタガタ震えだした。


「いや、ふつーはそんなんで簡単に人殺せないから。アイツがたまたま、めっちゃサイコってだけで。死ねばいーのにって思う人間は世の中にたくさんいても、実際には殺れないじゃん普通」


 西川が正論を言った。普通はそうだ。でもこの状況は普通じゃない。殺るか殺られるかの戦時中なら、普通の人間も人を殺す。深谷だって、十分普通だった。


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