保険室
図書室に戻り一時間くらいして、今度はトイレから戻ってきた野崎が血相を変えていた。
「次は保健室だ。四組の奴らが殺されたって、みんな大騒ぎしてる」
「また!?」
「もう嫌っ、何が起こってるの!?」
懲りずに見に行った。
殺されたメンバーが鍵を持ち込んでいたという保健室は、鍵が掛かって開かなかったのだろう。ドアにはめ殺しされたガラス窓がめちゃくちゃに割られていた。
保健室の中もガラス片や物が散乱していた。倒れている三人の顔を確認した。さっきの柔道場で惨殺されていた女子と同等の醜さだ。
無惨に絶命している様子はおぞましくて、いたたまれなかったが、安心した。私より綺麗な人間には死んでほしくなかった。
「……こっちは刺された感じじゃないよな。撲殺か?」
連が眉をしかめた。柔道場での殺人と違い、現場に凶器は見当たらない。確かに流れている血が少ない。刺されたらもっと血溜まりができていて、死体は血まみれになるはずだ。
やり方が違う。殺人鬼は二人いるのだろうか。それともその時々によって、気分で変えているのだろうか。
どちらにしろ醜い八人が殺されて、私の助かる順位が八番繰り上がったということだ。
嬉しく思う気持ちを堪えて、沈痛な表情で立ちすくんでいると、
「自業自得かもね」
心ない言葉が耳に飛び込んできた。近くの人だまりからヒソヒソと聞こえてくる。
「柔道場も、保健室も、自分たちだけいい場所を占領してさ。その上、みんなより先に助かって帰るなんて許せないって、ムカついた人が殺ったのかも」
「確かに。恨み買ってたもんね」
近くで聞いていた西川の顔が強張った。図書室を占拠している自分たちも、他人事ではないと思ったのだろう。
「だからって、ふつー殺す? 化け物に殺される心配よりも、同級生に殺されるかもって。マジ恐怖」
女子の会話に男子が割り入った。
「俺、聞いたんだけどさ。自分より醜いと思う奴を消していけば助かるって話。コレさ、恨みっていうより、ソレだったりして……」
「えっ何それ。その話、誰から?」
「俺が聞いたのは小西からだけど、誰が言い出したのかは不明」
噂の回りが早い。授業もない学校で不安な共同生活を送っていると、話くらいしかすることがないのだ。不安や恐れは伝染し、増殖していく。それを塞ぎ止め、明るい方向へ導いてくれた根津はもういない。




