性格ブス
しかしトイレには先客がいた。ここならあまり人が来ないだろうと、同じ考えらしく、賑やかに話している声が聞こえてきた。
立ち去ろうと思ったが、「生徒会長」というワードが聞こえたので思わず足を止めた。
「無駄死にだったよね〜」
「生徒会長たち、無駄に足掻かずに大人しくしてれば助かったのにね。自分たちがかっこいいと思ってたのかなあ」
「古賀くんだけじゃんね。古賀くんもさ、あんな風に無駄死にしないで、せめて一人としてカウントされたほうが良かったよね。その分、誰か一人助かるわけじゃん」
「進藤奈々はまあ無理だろうけど」
「美人でお気の毒〜」
「けどさ、今まで散々チヤホヤされてきた人生だろうし、見た目だけで勝ち誇ってた奴らが転落して怯えてるのって、ちょっといい気味だよね。大きな声じゃ言えないけどさ。別に消えてくれていいわ」
「それな。あ〜、ブスで良かった」
十分声がでかい。私も同じブスだが、こいつらは許せないと怒りがこみ上げてきた。
同級生全員を助けるために命を賭けて、非業の死を遂げた根津たちを馬鹿にして、笑うなんて。
ふざけんなブスと怒鳴りこみたい気持ちと、走って逃げ出したい気持ちで足踏みしていると、後ろから私を追い越して、トイレへ入って行く女生徒がいた。
さらっとした茶色い髪と、血のついたスカートが視界の端で揺れた。進藤奈々だ。
「ブスって心までブスなのね、お気の毒。死んでも治らないんじゃないの」
怒鳴りつけるような進藤奈々の声が響いた。出てきた女子二人とぶつかりそうになって、慌てて避けた。
「なにあれ、ひどい」
「彼氏が死んで、八つ当たりじゃん」
口々に捨て台詞を吐いて逃げ去る二人の後ろ姿を、続けて出てきた進藤奈々が鬼のような顔で睨んでいる。
「これだからブスって嫌い」
ボソッと吐き捨てた。それから私に向き直り、
「美人だから得してるって思われて、損してることだってあるのにね」
と同意を求めるように言った。多分そうなんだろう。私はフルメイクしたって進藤奈々ほど綺麗ではないし、元々ブスなので分からない。
どちらかというとさっきの二人組と同じように、天然の美人を羨んでいる。
ブスのほうが卑屈で心が歪んでいるのだ。険しい表情で怒っていても、ひどい暴言を吐いても、やっぱり進藤奈々は美しい。つい見とれてしまう。
「……進藤さん、美人が生き残る方法教えてあげようか?」
化粧ポーチを握る手にぎゅっと力を込めて、垂れ目の下がり眉でふにゃりと笑ってみせた。
「ブスから殺していけばいいんだよ」




