提案
美しい者から殺すのではなく、醜い者から解放していく。深谷の提案に驚いた。
「なるほど。それは良い考え方ですね」
化け物美人講師が言った。
「より醜い者から、真っ先にご褒美を得られる。美しい者は日に日に取り残されていく。より絶望感を味わえるというわけですね。早々とあっさり殺されるよりは」
「はい」
と迷いなく答える深谷を凝視した。もっさりとした黒髪に、昨日までかけていなかった黒縁のメガネ。単にワンデーコンタクトが切れたか、『より醜くなる努力』をしてのメガネ姿だろうか。
しかしそれでも深谷は醜くはない。目は細いが小さくもなく、鼻筋は通り、唇は薄い。野暮ったい髪型と物静かな雰囲気のせいでイケメンとは認識されないが、「あれ?よく見ると顔良いよね」と言われるような。
もし深谷が一見して不細工なら、皆を差し置いて自分が早く助かりたいがために、この提案を申し出たと思うだろう。しかし深谷は不細工ではない。
「では、多数決を取りましょうか。公平に」
と化け物講師が爽やかな口調で、みんなを見渡した。
「彼の提案を採用して『美しくない者から解放する』というのが良い人は手を挙げてください。ああその前に、何か質問は?」
「あ、あの」
同じクラスの三浦遥香が手を挙げた。この子は殺されない側だなと、私が勝手に判定したソフトボール部女子だ。
「その場合、毎日何人ずつ解放してくれるんでしょうか。それと解放されるっていうのは、家に返してくれるってことですか?」
「そうですねえ。一日に二十人、五日で百人にしましょうか。明日から始めるとして、終わるのも一日短くなりますし、良いんじゃないでしょうか」
化け物講師が答えた。
「それと『解放する』についてですが、解放者は校門から出られるようにしますので、普通に帰宅してください。高校敷地外は、あなたがたの普通の日常に繋がっていますので。普通に家へ帰って、美味しいご飯を食べて、温かいお風呂に浸かって、ゆっくりベッドで寝てください」
その日常がどんなに恋しいか、戻りたいか。もし帰宅できたらと想像し、一秒でも早くここから逃げたくなる。
私なら選ばれる、大丈夫だ。素っぴんはひどいブスだから。今日はまだアイプチ二重と眉毛だけは描いているが、これも落とせば間違いなく、早期に解放されるはずだ。
「では皆さん、多数決を取ります」
化け物講師が言った。
「毎日二十名ずつ五日間、美しくない者を選んでここから解放する、が良い人は手を挙げてください」
ばらばらと手が挙がる。
殺される三十五名より、助かる百名のほうが多いのだ。多数決の結果は当然、百名の勝ちだった。




