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作戦

 ひもじいお昼ご飯を食べ終えて、体育館の緊張は高まっていた。根津の作戦は上手く行くのか。失敗すれば根津たちは殺され、さらに美しい者五人が殺される。

 その五人は誰になるだろう。学年で一、二を争う美人だと評判の、あの子とあの子は入るだろう。古賀が守りたいと皆の前で宣言した彼女も入るかも。だから古賀は必死なんだし。男子も入るだろうか。鍋島は確実だろう。ただでさえ綺麗なのに、今日もきっちりメイクをしている。

 メイクを自身の生き様として、死ぬ覚悟を決めているようだ。潔いにもほどがある。


 五限目の予鈴が鳴る前に、これまで体育館で見なかった顔がやって来た。図書室にいた橋本たちと、保健室にいた四組のグループだ。

 来なければ殺すというあの化け物の脅しは効いている。保健室グループは、見たところ殺される側の人間はいなさそうだ。


 私たちのうち、四分の一の者が殺される。裏を返せば、四分の三の者は助かる。自己評価して、明らかに自分は大丈夫だと安心している者と、戦々恐々としている者とでは当然、身構え方に差が出る。


 五限目開始のチャイムと共に、化け物講師はやって来た。後ろにスーツケースを引くAIくんを従えて。


「皆さん、全員揃ってますね〜? ではでは早速授業を始めますよ〜」


 壁際に張り付くようにして待機している私たちを眺めながら、化け物講師が真ん中を通っていく。二十台の段ボールベッドは前方のステージ下に寄せて、場所は広く空けてある。

 根津と副会長の加藤は前方にいる。段ボールベッドのすき間に、ガソリンを入れた携行缶を隠しているからだ。ガソリンは駐車場に停めてあった先生の車から拝借したらしい。


 化け物が反撃してきたときに、他の生徒に攻撃の手が向かないようにと、根津と加藤はあえて逃場のないステージ前で背水の陣を取っている。そこまで他者のことが考えられる根津たちって、本当にどうなっているんだろう。

 もし根津が化け物を倒せたら、押し倒す勢いで抱きついてしまいそうだ。妄想の中でだけど。


「あの〜」


 最初に加藤が化け物に質問をして、気を引くという作戦だったが、それよりも早く声をかけたのは西川奏だった。西川は橋本たちとずっと図書室にいたので、今朝根津が話した作戦の詳細を知らない。


「何でしょう?」


 化け物講師が肉付きの良い顔を西川のほうへ向けた。


「昨日の最初の姿に戻ってほしいです。美男美女を殺す悪役が醜いオバサンの姿だと、なんかヒガミっぽいじゃないですかぁ。不細工が妬んでるっぽく見えて、良くないと思うんですよね。美しいほうがいいです」


 何を言い出すのかと思ったら。思わず呆気に取られたが、そういえば昨日図書室で「同じ化け物なら美人がいい」と言っていたなと思い出す。まさか本当に提案するとは思わなかったが。


「なるほど、なるほど」


 化け物はにたりといやらしい笑い方をした。


「やっぱり皆さん、美人が好きなんですね〜。良いでしょう。リクエストにお応えして……」


 化け物が言葉を切った。みるみる間に顔の造形が変化していく。体型もすらりとしていく。


「今だっ」


 さすまたを持って身を潜ませていた田村と住野がばっと出てきた。加藤が話しかけて気を引くという段取りは狂ってしまったが、西川の思わぬリクエストにより、恰好の隙が生まれた。ここを突くしかないと判断したのだ。

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