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美人講師


「――というように、ルッキズムは多くの問題を孕んでいます」


 動画を見終えて、とばるり似の美人講師が熱弁を振るっている。


「美しくなりたいと美容整形を繰り返す、美容整形中毒。何千万円と費やしても満足することはなく、心を蝕み、整形のしすぎで顔面崩壊。摂食障害も同様です。痩せていなければ美しくない、という強迫観念により、どれだけ痩せても満足を得られません。骨と皮だけの姿になっても、死ぬよりも太ることが怖くてたまらない。これらは全てルッキズムの弊害です」


 容姿の問題は、私たちもそれぞれ胸に抱えている。最も気になる年頃だ。だからか、いつもより真剣に耳を傾けている人が多い気がする。


「だからルッキズムをやめましょう。と言ったところで、社会は変わるでしょうか?」


 とばるり似の講師が、優しい顔に似合わずドギツイ言葉で皆に迫る。

 

「人を見た目で判断してはいけない、外見で優劣をつけてはいけない、容姿で差別してはいけない。いくらそう言ったところで、しょせん綺麗ごとの建前だとは思いませんか? 結局、有利で得をするのは、美男美女。採用試験の面接受けが良い、黙っていても人に好かれる、美人だから優しくされる。イケメンは許される。美しく生まれれば人生イージーモードで、彼らを非難すれば嫉妬だと叩かれる。実際の社会は現実は、そうではありませんか?」


 ここまで言って大丈夫なのかと、逆に心配になってくる論調だ。


「いくら綺麗ごとを述べたところで、人々の意識を思想を根本から変えることはできません。美しいものが評価され、得をする。醜いものは評価されず、損をする。実感として、それを知っているからです。あなた方自身も、容姿で他者を評価している。恋人や推しを外見で選んでいますね?」


 そりゃそうでしょ、と後ろで星来せいらが言うのが聞こえた。


「いくら口先で『ルッキズムは良くない』『ルッキズムをやめよう』なんて言っても、無駄です。そんなことで変えられるはずがない。あなた方の意識に深く根づいて、刷りこまれているのだから。テレビをつければ、見映えのいい芸能人が恋愛ドラマの主役を張り、冴えない女生徒の役でさえ美人。クラスには美男美女しか存在しない。SNSを開けば、加工画像の美人ばかり。キラキラ自慢のオンパレード。強迫観念を煽る自己承認欲の塊たち。量産される、画一的な美男美女。整形でみんな同じ顔。それらは全て、ルッキズムの弊害と言えます。ですから、私が、今この場から、本当の意味で『ルッキズムをぶっ潰す!』と宣言します」


 右手を開いて前に差し出し、「ぶっ潰す」という言葉に合わせて拳を握った美人講師に、みんな騒然とした。


「え。なにあれ、ヤバ」

「ヤバ思想」

「過激派?」


 


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