審査一日目
寝不足で目の下にクマができている。コンシーラーで念入りに消したいところだが我慢した。
「わっお前、毛量、爆発しすぎだろ」
「セットしようがねえもん。お前、うっすらヒゲ生えてね?」
「俺濃いもん、一晩寝るともうこれ」
「田中はなんか脂ギッシュだな……」
近くの男子が友達同士で貶し合っている。お風呂に入れず、プール用の冷水シャワーしか使えず、まともな洗浄剤も整髪剤もないのだから、仕方ない。
ヒゲは個人差が大きいようだが、産毛を濃くしたようなものが生えてきている男子もいる。女子も毛の濃さや脱毛方法によっては、数日で危機的状況を迎えるだろう。私は猫毛で薄い眉なことはコンプレックスだが、その分体毛の悩みはない。
みんなそれぞれ、なるべく清潔で好ましい状態でありたいと、日々何かしらのお手入れをしているのだ。よくドラマや漫画の中で、無人島に漂着したり、何もない異世界に飛ばされた美男美女が、何日経っても少し薄汚れるだけで済むのはやっぱりフィクションなのだなと思う。現実の私たちは、もっと汚らしくなる。
「てか女子、変わりすぎじゃねえ?」
田中が言った。
「化粧してなかったら、誰か分かんねえやついるし」
「言うな言うな」
「マジで女はいいよな〜、化粧で化けれるから。ずるいわあ〜」
うっさい死ね、と心の中で思った。鍋島は男だけど化粧をしていて綺麗だし、化粧をしていなくても綺麗だろう。
朝からコソコソと生理用品の貸し借りに奔走する女子を見ても、ずるいと思うんだろうか。この一週間が生理予定日に当たっていなくて良かったと、心底ほっとする。ほとんどの女子が生理用品の予備を持ち歩いているといえど、一週間分や夜用ナプキンを持っている人はなかなかいないだろう。生理痛がひどいと薬も必要だ。
「保健室は?」
鎮静剤を求め歩いていた隣のクラスの女子に言った。
「あー、四組の橘さんたちが占拠しちゃってて」
「薬を貰うだけ頼んでみたら?」
「そうだね〜、そうしてみる」
「あゆは休んでなよ。私、行ってくる」
お友達が行ってくれるようだ。こんなときに助け合える私たちもいれば、自分たちだけ良ければいいと思う私たちもいる。どちらも私たちだ。




