天然不美人
「誰かがやらなきゃ、三十五人が犠牲になるんだ」
根津が言った。
「三十五人っていったら、ちょうど一クラスだ。四クラス中、一クラスが消滅する。四人に一人、知ってるやつが亡くなる。そんなん黙って見とけないだろ。生徒会長だからとか関係なく。誰かがやらなきゃ、だったら俺がやる」
「根津……嫌だよ、死んじゃ嫌だよ。かっこつけて死なないでよ。かっこ悪く生きようよ」
根津には生きていてほしい。
「ありがとう。でも俺も、木元さんに生きててほしいからさ。そのために戦う。美女を守るヒーローに、俺はなる」
最後におどけて笑いを取ろうとする根津に、素顔を見せたらどういう反応をするだろう。私のことを、殺される三十五人の中に入る美人だと思ってくれている根津に。素顔は見せられない。
結局、星来と一緒にメイクを完全に落とすことはできなかった。もし完全に落としていたら、まず根津に私だと認識されなかっただろう。
マスカラやアイメイクだけ落として、作った二重のラインと描いた眉は残した。そうしないと完全に誰か分からない、別人になってしまう。アイメイクを落としただけでも、かなり印象は違うはずだ。すぐによく私だと分かったなと感心した。
「私、美人じゃないし。根津に守ってもらわなくても大丈夫だから。人のことより、自分のこと優先しなよね」
可愛げのない悪態をついて、根津のもとを立ち去った。私が本当に天然の美人なら、もっと上手く立ち回って、根津を誘惑してでも思い留まらせるのに。偽物で、化けの皮が剥がれる一歩手前の状態の私は、何をどうして良いのか分からなかった。
そして夜は明ける。




