志願者
根津の真剣な言葉にみんな息を呑んだあと、ヒソヒソ声で話し始めた。
「あれやっつけるって無理くない?」
「無理ゲー」
「会長たち大丈夫なの?」
「根津ならやれるかも」
「がんばって」
協力を申し出る者はいない。と思ったとき、一人の男子生徒が立ち上がった。イケメンで人気のサッカー部男子、古賀だ。お似合いカップルだね〜とみんなに認められている、美人の彼女がいる。
「その作戦、俺も協力する」
古賀の名乗りに、おお〜っと一部から歓声が上がった。
「やだっ、やめてっ」
そう叫び、隣で古賀の腕を引いて座らせようとしているのが、その彼女だ。
「そんなの隼人がする必要ないよ!」
「奈々を守りたいんだって。このまま大人しく待ってたら、殺されるんだぞ。何もしないより、打って出たいじゃん。奈々は俺が守る。命を賭けても」
「隼人……」
私たちは一体何を見せられているのか。美男美女が互いを想い合う、感動的なドラマだ。古賀は顔だけじゃなくて本当に格好いい。愛する彼女のために命を賭ける覚悟なんて。本当にすごいと思う。
だけどまあ、古賀自身の命も危ないもんなと納得するところがある。爽やかな茶髪にクッキリした顔立ち。幅広二重の大きな目に、すっと通った高い鼻筋、ほどよい厚みの唇。サッカーで鍛えられた体は引き締まっていて、細マッチョだ。
打って出ずに大人しく待っていても、彼女共々、明日か明後日には、四分の一に選ばれる側の人間だから。
だから顔はかっこよくなくても、根津のほうが百倍かっこいいと思う。大人しくしていれば自分は助かるのに、みんなのために打って出ようだなんて。馬鹿じゃん。格好つけすぎて腹が立つ。
古賀みたいに、そっち側の人間が何とかすべきなのに。古賀隼人の他に、名乗りを上げる者はいなかった。




