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体育館

 荷物を持って、ぞろぞろと体育館に移動した。根津は一組から順々に声かけしているらしく、隣の三組に向かい、同じようなやり取りをしている。


「私は図書室に戻るけど〜、理緒と星来はどうする?」


 結麻が言った。支給された非常食はちゃっかりリュックに収納済みだ。


「翔真たちに言ってこないと。教室に非常食配られてるよって。そんでみんな、体育館で寝るみたいだって、教えてくる」


「そっか。じゃあ私たちは体育館で待ってよっか?」


 そうする〜と星来が答えた。ピリついた空気の橋本蓮たちといるより、根津たちのもとにいるほうが健全そうだと、星来も思ったようだ。


「じゃあまた後で〜。うちらは体育館に行かないかもしんないけど」


 結麻が言った。それならそれでいい気もするが、星来が部室から取ってきたお菓子の大袋を置いてきたことが悔やまれる。結局パンは一個も分けてもらっていないし。

 ケチくさいことを思うようだが、今はパン一個でも、あるのとないのでは心持ちが違う。


 結麻と別れ、体育館でブルーシートを敷く作業を手伝った。全ての扉を開け放って、換気しているにも関わらず、体育館全体に血の臭いが漂っている気がしてならない。

 死体と血溜まりがあったはずの辺りがやはり気になってしまう。死体を運び出したあと、綺麗にモップがけでもしたのか、痕跡は見当たらない。


 いち男子高校生が死体の後片付けを進んでやれるということが、いまだに信じがたい。根津の頭の中はどうなっているのだろう。


「やっぱ無理〜、だってここであんなことがあったんだよ。こんなとこで寝たら、絶対に幽霊出るじゃん。てか心理的に無理。トラウマ」


 近くにいた違うクラスの女子が、友達に泣きついている。


「だよねえ。てかさ、段ボールベッドあるって言っても、全員分はないんでしょ。ベッドっていったらさあ、保健室は? ベッドあって布団あるし、最高じゃん」


「それな。でももう遅いよ。そう思って、竹下たちが行ったら、四組の何人かで占拠してるんだって。保健室の鍵持って中にいるから、外からどうにもできんらしい。ずるいと思わん?」


「校内マスターキー、生徒会長が持ってるらしいよ。それで開けて、引きずり出してもらうとか」


「でもそれでうちらが使えるわけでもないよね。二台しかない保健室のベッドを、誰が使えるかって話だよね」


「結局早いもん勝ちか」


 橋本蓮が言っていた、「初動が大事」か。橋本たちはそれで図書室を占拠して、四組の数名は保健室を占拠したということだ。

 保健室か。真っ先に思いつけば良かったと、ここで愚痴っている彼女たちと同様、悔しさを覚えた。

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