生徒会長
ガラッと教室の扉が開いた。私たちが入ったときに鍵を閉め忘れていたようだ。
「鍋島、相変わらずかっこいいな。廊下まで響いてたぞ」
顔を見せたのは、生徒会長の根津智人だ。副会長の加藤崇も一緒だ。
「根津っち!」
学級委員長の村西凛がホッとした声を上げた。
生徒会長の根津はとにかく人望が厚い。クラスは違うが、浮いている転校生の鍋島のことも何かと気にかけているが、鍋島のほうが根津が苦手らしく、そう親しくはない。
まあ、根津の周りはいつも生徒会役員や同中からの親友や幼馴染みが固めているので、新参者が近寄れない雰囲気はある。
「死ぬ覚悟があるなら、救う手伝いをしてくれ。みんな、今日の寝床は体育館だ。教室じゃさすがに寝れないだろ。災害時用の、段ボールベッドが何台かある。何人かで組み立てを手伝ってほしい。ゴミ捨て場に置いてある段ボールも綺麗だから、それも持ってきて利用しよう。ブルーシートは体育館倉庫にあるから、まずはそれを引いて」
「ねえ体育館って……あの体育館だよね。その、レスリング部のみんなが……」
凛が根津の言葉を遮って尋ねたものの、言い淀んだ。寝るのに体育館が適しているのは理解できるが、あの体育館には惨殺死体があるのだ。
壇上に置かれていた三年の先輩二人の生首は、AIくんがスーツケースにしまって、持ち去ったのを見た。
「レスリング部のみんなの遺体は、俺と崇で担架で運び出して、とりあえず校庭に埋めた。あのままにしとくわけにはいかないから。俺たちのために化け物に立ち向かってくれて、それであんな目に……なのに、ちゃんと弔えなくて心苦しい。寝る前に全員で黙とうしたいと思う」
根津の言葉に心底驚いた。あのドチャクチャな切断死体を担架で運んで、埋葬した? いろんなものが飛び散って、グチャっとして血溜まりができていた。直視したら吐きそうで、私なんてすぐに目を背けたのに。
前世は外科の医者か救助隊か、犯罪捜査班なのか、人生何周目かと思える根津を、マジマジと見た。体操服に着替えているのは、それでか。
根津はきっと四人に一人には選ばれない。美容院ではなく床屋でカットしていそうな髪形に、整えたことがなさそうな野暮ったい眉毛。目はすっきりとした清涼感のある奥二重だが、鼻と口が大きめで顎もいかつい。
でも、なんてかっこいいんだろう。今まで気づかなかった。急にくっきりと、男らしく格好よく見えてくる。これまでは、正義漢ぶってリーダーぶっているところが少し鼻につくとさえ思っていたのに。
「え、あ……そうだね、黙とう。いいね、みんなで寝る前に、そうしよ、全員でしよう」
感銘を受けた私とは違い、凛は若干引いたようだ。動揺をあらわにそう答えた。




